鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

目利き能力と融資審査

最近、金融庁の森長官が、地方銀行に対し

て融資を伸ばすべきという発言をしている

ことが話題になっているようです。


(ご参考→ https://goo.gl/3aQr3x


これを単純に読むと、地方銀行はリスクを

避け、融資に積極的でないから、収益も少

なくなっている。


そのような銀行は、融資先に対する目利き

能力を高めれば、きちんと融資を伸ばすこ

とができ、そして収益も安定する、と述べ

ていると理解する方が多いでしょう。


ほぼその通りなのですが、だからといって

いままで融資に消極的であった銀行が、融

資に積極姿勢に転じ、自社も融資を受けや

すくなるというように、直ちに期待するこ

とはできないでしょう。


というのは、銀行の目利き能力が低いため

に、融資を受けることができないでいる会

社というのはほとんどないと私は考えてい

るからです。


確かに、目利き能力が低い銀行はあるもの

の、その銀行から融資を受けられなかった

会社は、ほかの目利き能力のある銀行から

融資を受けることができている可能性が高

いということです。


これを言い換えれば、森さんが銀行はもっ

融資を伸ばすべきと言っているとしても、

いま、融資を受けることができない会社が

融資を受けることができるようになる可能

性は低いということです。


私がこのように述べる別の根拠を示すと、

例えば、月次試算表を作っている会社や、

会社と経営者の財布がきちんと分けられて

いる中小企業は多くありません。


このような会社が必ずしも融資を受けるこ

とができないわけではないのですが、自社

の情報をきちんと示すことができないでい

たり、経営者が公私混同をしていたりする

会社に対しては、銀行が目利き能力を高め

たとしても、きちんとした審査はできませ

ん。


そのような会社が融資を受けられないでい

たとしても、それは、銀行の目利き能力が

原因ではないのです。


結論は、森さんは、融資を受けることがで

きないで困っている会社経営者を助けよう

ということを意図しているのではなく、銀

行が自助努力で収益を得られるようになる

ことを意図していると私は分析しており、

自社が融資を受けられないでいる会社が、

その原因を銀行の目利き能力に求めること

ができるケースは少ないということです。

 

 

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コンサルタントはクライアントを騙す?

コンサルタントをしていると、「以前、コ

ンサルタントに会社を見てもらったけれど

騙された」という人に少なからず出会いま

す。


そこで、コンサルタントとして、名誉挽回

をしたいという意味も込めて、どうすれば

騙すコンサルタントと関わらないですむか

ということについて述べたいと思います。


まず、「コンサルタントが騙す」とはどう

いうことを指すのかということについて考

えてみました。


そのひとつは、明らかに騙す意図をもって

クライアントに接している人です。


例えば、「●●●●に口利きをするので、

必要経費を出してほしい」、「●●●●と

いう商品の独占販売権を取得するので、

●●●円を支払ってほしい」というたぐい

の依頼をしてきます。


要は、うまい話を持ってきて、金銭を騙し

取るものなので、これは、コンサルタント

に騙されたということではなく、コンサル

タントを名乗る詐欺師に騙されたというこ

とになるわけです。


したがって、このような詐欺の被害に遭っ

たからといって、コンサルタント=詐欺師

と判断されてしまうことは、コンサルタン

トとしては、たいへん迷惑な話です。


これは、私の専門外なので、きちんとした

対策は述べられないのですが、うまい話に

は裏があると用心するしかないでしょう。


もうひとつの「コンサルタントが騙す」と

言われてしまう原因としては、契約前に説

明を受けた内容と実際のコンサルティング

の内容が異なっていたり、説明より効果が

少なかったりするということで、こちらの

例の方が圧倒的に多いと思います。


このようなことが起きてしまう要因として

は、コンサルタント側が、契約を結びたい

との思惑から、支援の手厚さや効果の大き

さを過剰に説明してしまうことが考えられ

ます。


これは、コンサルタント側に大きな責任が

ありますが、それをきく側も、自社製品を

売ろうとするときは同じ立場に立つことが

あるわけですから、売る側の気持ちを理解

することは容易でしょう。


したがって、売り文句はある程度割り引い

て聞くという余裕をもって聞く必要がある

と考えます。


私がこれまでにお会いしてきた経営者の中

には、「あのもうけ話はうますぎる」とい

うように、コンサルティングに限らず、何

らかの誘いがあったとき、その真贋をかぎ

分けている方がいました。


これは、上から目線で恐縮ですが、うまい

話にのってしまう経営者には、少なからず

下心があるために、うまい話にのせられて

しまう隙があるのではないかと思います。


ちなみに、私がコンサルティング契約を結

ぶときは、最低限、経営者の方自身に実践

してもらうことを、書面を使ってお互いに

確認しています。


もちろん、私も、できる限りのことは行い

ますが、事業の改善には経営者という立場

でなければできない事柄もあるので、それ

については事前に了解をとっておきます。


そして、私がお手伝いを始めてからも、も

し、事前にお願いしたことを経営者の方に

実践してもらえないようなことがあれば、

再度私から改善をお願いし、それでも是正

されなければ、私の方から、今後お手伝い

を続けることはしないということを、お伝

えしています。


もし、改善が進まないことが分かっていな

がらお手伝いを続ければ、その会社にとっ

て、私へ支払うコンサルティングフィーが

無駄になる上に、私が「騙すコンサルタン

ト」と批判されかねないからです。


とはいえ、このような例は希で、そもそも

私はコンサルティング契約を結ぶ前に、そ

の会社の経営者の改善意欲を十分に見極め

た上で契約を行っており、さらに、契約後

も信頼関係を強め、かつ、改善活動が遅れ

ないように、私から継続的に働きかけ続け

ているので、多くの場合は当初の予定通り

に改善が進んでいます。


今回の記事の結論は、コンサルタントの支

援を受けるにあたっては、コンサルタント

に過度に依存しようとせず、基本的に自ら

主体的に改善活動に臨もうとすることで、

おもねるコンサルタントは不要と感じるよ

うになるということです。

  

 

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銀行職員はなぜはっきりしないのか

先日、知り合いの経営者の方から、銀行の

人ははっきりものをいわないので、融資の

申し込みをした後、どうもすっきりしない

と言われました。


このようなことを感じている経営者の方は

多いと思いますが、これにはいくつかの理

由があります。


その最大の理由は、融資を申し込んで来た

人に、揚げ足をとられることを避けようと

する思惑からです。


このように書くと、自分は銀行に対してそ

のようなことをするつもりはないとお考え

になると思うし、銀行職員側も、多くの人

はそんなことをするつもりはないと考えて

いるでしょう。


しかし、割合としては少ないのですが、正

攻法では融資をしてもらえないとわかって

いる人から、銀行職員の言葉尻をとらえて

なんとか有利に交渉を進めようとする人が

いるため、はっきりしたもの言いはなかな

しにくいという事情があります。


また、ある程度取引がある経営者であって

も、業況が悪化すると人格が変わる人もい

るので、よほど信頼がないと、銀行は本音

を口にしません。


もうひとつは、融資の可否についての認識

の違いがあると思います。


融資申し込みをする側の方たちは、なぜ、

銀行は融資の可否をはっきりできないのか

ということに疑問があると思います。


これは、上から目線のようで恐縮なのです

が、多くの融資先は、融資審査を教科書的

に行うと、断るべきという結果になってし

まうのが実情です。


すなわち、はっきりして欲しいという申し

込み側の要望をそのまま文字通り受け止め

れば、申し込まれた融資案件の70%~

80%は、融資はできないという回答にな

ると、銀行の融資担当をしていた経験があ

るものとして感じています。


よく、銀行はすぐに融資を断わるという印

象を持たれていますが、私は、実態は真逆

で、教科書的に判断したら断るべき融資

を、何とか取り上げられないか可能性を

探っているために、明確に回答できないと

思っています。


これは、銀行出身のある経営コンサルタン

トの方が、メールマガジンに書いていたこ

となのですが、「銀行がなかなか融資をし

てくれないという会社から相談を受けた

が、その会社の融資の状況を見たら、よ

く、銀行はここまで融資をしたという印象

を持った。


むしろ、その会社は、収益を上げるという

経営者の本来の使命を果たすことへの努力

を怠り、銀行から融資を受けることによっ

て事業を継続しようということだけに注力

してきたと考えられる。


しかし、融資によってその会社を支えるこ

とにも限界が来たので、銀行は新たな融資

に難色を示したものと思われる。


一方、その会社の経営者は、自分の本来の

使命をないがしろにして、事業の継続が危

ぶまれることになった原因を、銀行に転嫁

しようとしている」という例もあります。


これは極端な例とは思いますが、そうでな

くても、会社経営者の側から見れば、自社

はよい会社であるし、仮に、現在の業況が

悪いとしても、将来はよくなる可能性が高

いと信じているということは理解できま

す。


しかし、残念ながら、部外者から見れば、

融資は難しいという状況の会社も多いとい

うことも現実だと思います。


とはいえ、それをそのまま銀行職員が会社

経営者に伝えても、まず、受け入れてもら

えることはないと思います。


ですので、「融資は難しい」とは言わずに

「少し検討させてください」などと、言葉

を濁してしまいます。


ここでは、2つの理由をあげましたが、他

にもたくさん理由はあります。


また、融資を申し込む側に原因があるだけ

でなく、銀行の都合によって言葉を濁すこ

とがあります。


それらは、また、別の機会にご説明したい

と思います。


今回の結論は、自社の状況を客観的に見る

ことで、なぜ、銀行が言葉をはっきりさせ

ないのかが見えてくるということです。

 

 

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借りやすい融資は危ない

私が銀行で働いていた20代のときの苦い

経験です。


私が担当していたあるレストランの店長の

Mさんから、カードローンを作りたいとの

申し出がありました。


私としてもカードローンのノルマがあった

ので、よろこんで応じました。


そして、審査が通ったので、無事、契約と

なったのですが、それをMさんにしらせた

ところ、カードローンのカードをMさんの

職場に持って来てほしいという依頼を受け

ました。


一般的に、カードローンのカードは、その

契約者が実在するということの確認や、受

け渡しを明確にする目的で、書留郵便で送

ることになっていました。


でも、Mさんは、私が定期的に訪問してい

たレストランで働いている人なので、問題

はないと思い、店長の依頼通り、カードを

店長の職場に直接届けました。


そこまでは問題はなかったのですが、後に

なってから、Mさんのご夫人から、銀行へ

苦情が来ました。


カードローンの利用者には、6か月ごとに

利用状況(お金の出し入れの明細書)が郵

送されます。


ご夫人は、Mさんあてに送られてきた封筒

を開けたところ、カードローンの明細書が

入っており、それを見て、Mさんがご夫人

に隠れて借入をしていたということが分

かったようです。


そして、「なぜ、夫にお金を貸したの!」

と、銀行に怒って来たわけです。


これは、後から分かったのですが、かつて

Mさんは、ギャンブルなどでお金を浪費し

て、借金をし、そのしりぬぐいをご夫人が

することになったようです。


そこで、ご夫人としては、また、Mさんが

借入をしたら、自分が返さなければならな

くなると感じたのでしょう。


とはいえ、Mさんとのカードローン契約は

銀行とMさんだけで完結するものであり、

ご夫人の同意は必要ありません。


ご夫人もそのことはわかっていて、「もう

二度と夫にはお金を貸さないでほしい」と

告げて帰って行きました。


私としても、手続きに問題はないものの、

後味が悪くなりました。


その後、Mさんに融資をしなくなったこと

はもちろん、ほかの方からも、家族に隠れ

て借入をしようとしている節がある場合

は、融資を断るようにしました。


ところで、話が変わりますが、京セラ創業

者の稲盛和夫さんは、京セラを起こしたこ

ろ、融資をすることがとても怖かったそう

です。


当時の稲盛さんは、知人に工場を借りて、

そこで事業を営んでいたそうです。


さらに、その知人の家を担保にしてもらっ

京都銀行から1,000万円を借り、機

械を買ったそうです。


しかし、稲森さんは、もし、借入を返すこ

とができなかったら、知人の家を銀行にと

られてしまうことになるので、借入を早く

返そうとして、懸命になって働いていたと

いうことでした。


このような稲盛さんをさして、稲森さんご

自身が「自分はびびりだった」とお話して

おられますが、借入することが怖いと感じ

ている人は、かえって、確実に返済するで

しょう。


一方で、前述のMさんは自己中心的であ

り、ご夫人の気苦労をあまり感じないよう

な人は、借入を返そうという意思がまった

くないとまでは言わないものの、強くない

ということは確かでしょう。


Mさんのような方は、もし、カードローン

を契約するには、家族の同意が必要という

ことが条件であれば、カードローンの契約

を慎重に判断することになったでしょう。


融資をする側としても、Mさんの例は、規

則上は問題はなかったものの、カードロー

ンを利用してもらうことは、ご夫人を苦し

めることとなり、不本意なこととなった訳

です。


「誰にも知られず、簡単な手続きで融資を

受けられる」というのは、親切な銀行と評

価されがちですが、それは、かえって融資

を受けた側を苦しめてしまうことになりか

ねません。


きちんと「この融資を受けることは、自分

にとってよいことか、関係者にも納得して

もらえるか」をいうことを熟慮して、それ

でも融資を受けるべきと考えた上での融資

申込でなければ、融資を受ける側も融資を

する側も何のメリットもないでしょう。


ちなみに、最近、金融庁が銀行に対して、

カードローンの取扱いに否定的になってい

ますが、それは、銀行の一方的な都合で融

資をしているからであり、目先の利益のみ

を追求することは、最終的によい結果に結

びつかないという例だと思います。


(ご参考→ https://goo.gl/hUYTo9

 

 

 

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f:id:rokkakuakio:20180203053641j:plain

コーヒーの差し入れ

先日の夕方、大学から帰宅する長女を最寄

り駅に迎えに行く途中、現金をATMから

引き出すために、コンビニエンスストア

立ち寄りました。


そうしたら、たまたま、近所の木工業を営

んでいる会社のN社長にお会いしました。


Nさんは、その日、従業員の方に残業をし

てもらうことになったので、差し入れとし

コンビニエンスストアのコーヒーを買う

ために来店したそうです。


コンビニエンスストアのコーヒーは、セル

フサービスなので、Nさんが自ら6人分の

カップにコーヒーを注ぎ、それをトレイに

乗せて、店を出ていきました。


Nさんのコーヒーを注いでいるときの表情

を見ると、部下に残業をさせるのは申し訳

ないという気持ちもあったのかもしれませ

んが、同時に、遅くまで働いてくれる部下

がいることを頼もしいと感じているように

も思えました。


いずれにしても、Nさんの会社は、決して

楽な経営をしているとは思いませんが、か

といって、Nさんがわざわざコーヒーを買

いに来るほど弱い立場にはないと思うの

で、やはり、Nさん自身が部下をねぎらい

たいという気持ちから、自らコーヒーを買

い来たのだと思います。


近所のNさんとは以前からお付き合いがあ

り、人柄もとてもよいことを知ってはいま

したが、自ら部下にコーヒーを差し入れし

ようとしている様子を見て、Nさんの会社

はこれから間違いなく業績がよくなってい

くと、あらためて感じました。


ここまでは、経営者の人柄がよいと、業績

もよくなるということを書いただけなので

すが、そうはいっても、現実には、経営者

の人柄だけで業績がよくなるとは限らない

ということも経験的に感じています。


私が銀行で働いていたときに、取引先を業

績と経営者の人柄で分類すると、おおよそ

次の通りだと感じました。


(1)業績〇・人柄×→約20%


(2)業績×・人柄×→約40%


(3)業績×・人柄〇→約30%


(4)業績〇・人柄〇→約10%


業績が良くて人柄もよいという会社は約

10%しかないと私は感じていたので、先

ほどの記述と矛盾します。


でも、これからは、経営者の人柄は、ます

ます業績に大きく影響してくると思ってい

ます。


むしろ、いままでは「とにかくもうけたも

のが勝ち」という考え方が通用する部分が

あったものの、それは通用しなくなって行

くと考えています。


その根拠は2つあります。


そのひとつは、事業運営の巧緻よりも組織

経営の巧緻の方が、業績に与える影響の比

重が高まってきているということです。


人柄の良さと組織運営の巧緻は、必ずしも

一致しませんが、少なくとも、人柄が悪い

けれど組織運営は上手ということにはなり

にくいでしょう。


ふたつめは、従業員の方の能力の業績に与

える影響の比重も高くなってきているとい

うことです。


これは、従業員満足度が業績に影響すると

いうことです。


単に、従業員の方は言われたとおりに働い

ていればいいという考え方は、20世紀の

考え方です。


21世紀で勝てる会社は、従業員の方が生

き生きと能動的に働いている会社です。


そういう観点から、経営者のリーダーシッ

プが従業員満足度を高める重要な要素であ

り、これも経営者の人柄の良さが大きく関

連するでしょう。


ここまで理屈っぽく書きましたが、かつて

のように、権威を振りかざすだけのような

経営者は、これからはじょうずに会社を経

営できなくなるということが、今回の結論

です。

 

 

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f:id:rokkakuakio:20180201013020j:plain

ブルウィップ効果

先日、エフエム福岡で配信しているポッド

キャスト番組で、ブルウィップ効果につい

て説明していました。


(ご参考→ https://goo.gl/ba2zRa )


ブルウィップ効果(Bullwhip Effect)の

'Bull'とは牛、'Whip'とは鞭のことです。


そして、ブルウィップとは、牛に向けて鞭

を打ったときに、手もとでは鞭のしなりが

小さいものの、先端に行くとそのしなりが

大きくなっていく様子を示しています。


これを、サプライチェーンにおいて、川下

の発注量が川上に向かっていくにつれて増

えていく現象に例えて説明されるものが、

ブルウィップ効果です。


ちなみに、「サプライチェーンは、直訳す

ると供給の連鎖ということで、原材料や部

品の生産や仕入れ、製品の生産、市場での

販売まで含めた物作りの上流から下流に至

る流れ全体を意味します。」(同前)


このサプライチェーンでブルウィップ効果

が起きてしまう理由は、小売店から卸売会

社、卸売会社から製造会社、製造会社から

原材料会社へ発注するときに、少しずつ多

めに発注してしまうからです。


そこで、それぞれの会社の垣根を越えて、

ものの流れを効率化しようとするしくみで

あるサプライチェーンマネジメント(SM

C)が、多くのサプライチェーンで採り入

れられるようになりました。


むしろ、ブルウィップ効果をなくすことが

SMCの目的とも言えるでしょう。


ところで、前述の番組では、ブルウィップ

効果の悪影響を減らす方法として、次のよ

うな対策を挙げています。


(1)POSシステムやVMI(供給者に

よる在庫管理)、かんばん方式などによる

迅速な情報の共有。


(2)納品のリードタイムの短縮と発注サ

イクルの縮小、発注ロットサイズの縮小。


(3)価格安定化による販売量の安定化。


ここまでの内容については、私もまったく

その通りだと思っているのですが、もっと

根本的なことは、「それぞれの会社の垣根

を越えて、ものの流れを効率化しようとす

るしくみ」であることです。


言い換えれば、製品の供給に携わっている

複数の会社を、ひとつの会社による活動の

ように束ねることで、前述のような施策が

できます。


そして、もうひとつのポイントは、単に、

複数の会社を束ねるだけではなく、どのよ

うに束ねるのかということもポイントにな

ります。


というのは、SCMによってサプライチェ

ーンは効率化されますが、どう効率化する

かということによって結果も異なります。


例えば、どの程度まで欠品を防ぐかという

こともSCMの管理の対象です。


欠品を0にすることを目指すこともできま

すが、それを目指すことによってコストは

高くり、SCMの狙いが果たせなくなりま

す。


かといって、コストを下げようとして、そ

の結果、欠品が多くなってしまうと、今度

は、顧客の不満が強くなり、これもSCM

の狙いが果たせなくなります。


したがって、どこでつりあいをとるかとい

うことも、SCMの成否のポイントになり

ます。


すなわち、SCMの管理の巧緻が、ライバ

ルに差をつけることになります。


今回の結論は、複数の会社もまとまってひ

とつの目的に向かうことで、よい成果につ

ながること、そして、そのまとまり方も勝

敗の要因になるということです。


すなわち、ライバルに勝つ要因は、マネジ

メントが鍵になっているということです。

 

 

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f:id:rokkakuakio:20180131164724j:plain

工夫は楽しい

今回は、私が銀行で働いていたときのこと

を書きます。


内容は、手間を減らす工夫をしたというこ

とだけで、それほど深い内容(といっても

いつも深いことは書いていませんが)では

ありませんので、気楽に読んでください。


銀行には、短期継続融資という融資があり

ます。


これは、融資先の短期的な資金需要に応じ

る融資の慣行です。


この融資の特徴は、3~6か月の期間で融

資を行いますが、融資の期限が来ても、元

金を返済してもらわずに、新たに同額の融

資を行います。


融資を受ける側から見れば、利息は支払う

ものの、元金はずっと借りたままでいられ

るという融資です。


このようなことから、短期継続融資は、俗

語っぽく、コロガシ融資と呼ばれることも

あります。


なお、短期継続融資やコロガシ融資は正式

な名称ではなく、銀行によっては別の呼び

方をしている場合もあります。


話はそれますが、このような融資方法は、

融資元金はずっと減らないため、外見的に

は、返済猶予(リスケジュール)をしても

らっている状態と変わらないことから、金

融庁から融資先を支援する融資と解釈され

てしまうことを避けたいとの銀行側の思惑

で、一時、このような融資方法が行われな

かったこともあったようです。


しかし、平成27年に、金融検査マニュア

ルの解釈変更(厳密には、同マニュアル別

冊中小企業融資編への事例追加)によって

融資を受ける相手の業況が良好な場合、短

期継続融資であっても、それは健全な融資

ということになりました。


話を戻して、私が融資係をしていたとき、

取引先の中には、このような短期継続融資

を受けている会社がたくさんありました。


そのような会社は、貸付契約が多く、その

管理も大変でした。


例えば、翌月に期限が到来する契約を、前

もって調べて、融資先にその借入を継続す

るかどうかを確認し、継続の希望を受けた

場合(といっても、ほとんどが継続の希望

を受けます)は、継続のための稟議書を書

いて申請します。


稟議書の承認が得られれば、現在の融資の

期限が到来するまでに、融資契約書(実際

は、融資専用手形)を融資先からもらって

きて、融資期日に新たな融資に切り替えま

す。


ある意味、仕事なので仕方ないのですが、

結果として、ずっと融資を続けるのであれ

ば、もっと合理的な手続きはできないもの

かと、私は考えていました。


結果として、後述の通り、私は融資の契約

数や、申請する稟議書の数を減らすのです

が、銀行はある面で、手間をかけるのは融

資先を吟味するために必要なことであり、

それが規範的な姿勢という考え方もあり、

手間がかかることこそ仕事をしているとい

う価値観がありました。


しかも、当時、入社1~2年目の平社員で

あった私が、いままでのやり方を変える提

案事態は憚れることでした。


ただ、当時は、銀行は店舗展開に積極的で

あったにもかかわらず、従業員の総数は変

えない状況であったことから、1つの支店

の従業員数は減る傾向にあり、従来の事務

を続けることは賢明でないという思いもあ

りました。


そこで、私は、思い切って融資課長に、短

期継続融資をしている会社で、融資件数の

多い会社に対して、当座貸越契約を結ぶこ

とを提案しました。


当座貸越契約とは、本来は、当座預金の契

約がある会社が、当座預金の残高を超えて

小切手や手形の決済があったとき、その不

足分を銀行が立て替えるという形式の融資

方法です。


例えば、ある銀行に、100万円の約束手

形の取立があったとき、その手形の振出人

当座預金の残高が50万円しかなかった

場合であっても、前もってその会社と銀行

の間で当座貸越契約があれば、残高の50

万円を超えて、銀行は不足する50万円を

立て替えて、手形を決済します。


現在では、この契約は、当座預金とは切り

離されて、借越だけの専用の取引も利用さ

れるようになっています。


その例としては、事業性融資専用のカード

ローンがあります。


私が融資課長に提案した当座貸越契約は、

事業性融資専用のカードローンよりも金額

の大きい、貸越専用契約で、1社あたり、

数千万円~数億円の契約でした。


このような融資契約は、極度取引(いわゆ

る枠の取引)なので、1年に1回の稟議申

請ですみます。


融資先も、当座貸越契約の金額までは、任

意に融資を受けられるので、これまで、個

別の融資契約をしていたよりも、借りられ

る金額が明確になるという点で利点があ

り、また、融資契約書(融資専用手形)に

貼り付ける印紙も節約することができま

す。


このようなことから、融資課長には私の提

案を受け入れてもらったのですが、だから

といって、直ちに短期継続融資を当座貸越

契約に切り替えることはできません。


短期継続融資の場合は、年に数回、稟議申

請をするので、そのたびに、融資先の業況

をチェックする機会があったわけですが、

当座貸越契約の場合、年1回しか稟議申請

が行われないので、審査をする側も、それ

なりに慎重になります。


また、短期継続融資は、1件が数百万円か

ら1千万円程度でしたが、当座貸越契約の

場合、極度(枠)での申請ということもあ

り、契約金額も5千万円から数億円となる

ので、やはり融資審査はより慎重になりま

した。


このような状況は前もって分かることなの

で、逆に言えば、私以外にも当座貸越契約

への切り替えを思いついた人がいたとして

も、実際に切り替えすることは躊躇してい

たのかもしれません。


とはいえ、いつまでも同じことを繰り返し

て苦労するのであれば、一時期にちょっと

苦労することの方が、トータルでは負担は

小さくなるとの思いから、いいだしっぺの

私は、重たい稟議申請をすることになりま

した。


もちろん、当座貸越契約の稟議書がすんな

りと承認になったわけではありませんが、

結果として、私の思惑は実現しました。


この、当時、入社して間もない私の経験

は、その後の銀行職員としての仕事におい

ても、改善を積極的に行う後押しとなりま

した。

 

 

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