私が銀行で働いていた20代のときの苦い
経験です。
私が担当していたあるレストランの店長の
Mさんから、カードローンを作りたいとの
申し出がありました。
私としてもカードローンのノルマがあった
ので、よろこんで応じました。
そして、審査が通ったので、無事、契約と
なったのですが、それをMさんにしらせた
ところ、カードローンのカードをMさんの
職場に持って来てほしいという依頼を受け
ました。
一般的に、カードローンのカードは、その
契約者が実在するということの確認や、受
け渡しを明確にする目的で、書留郵便で送
ることになっていました。
でも、Mさんは、私が定期的に訪問してい
たレストランで働いている人なので、問題
はないと思い、店長の依頼通り、カードを
店長の職場に直接届けました。
そこまでは問題はなかったのですが、後に
なってから、Mさんのご夫人から、銀行へ
苦情が来ました。
カードローンの利用者には、6か月ごとに
利用状況(お金の出し入れの明細書)が郵
送されます。
ご夫人は、Mさんあてに送られてきた封筒
を開けたところ、カードローンの明細書が
入っており、それを見て、Mさんがご夫人
に隠れて借入をしていたということが分
かったようです。
そして、「なぜ、夫にお金を貸したの!」
と、銀行に怒って来たわけです。
これは、後から分かったのですが、かつて
Mさんは、ギャンブルなどでお金を浪費し
て、借金をし、そのしりぬぐいをご夫人が
することになったようです。
そこで、ご夫人としては、また、Mさんが
借入をしたら、自分が返さなければならな
くなると感じたのでしょう。
とはいえ、Mさんとのカードローン契約は
銀行とMさんだけで完結するものであり、
ご夫人の同意は必要ありません。
ご夫人もそのことはわかっていて、「もう
二度と夫にはお金を貸さないでほしい」と
告げて帰って行きました。
私としても、手続きに問題はないものの、
後味が悪くなりました。
その後、Mさんに融資をしなくなったこと
はもちろん、ほかの方からも、家族に隠れ
て借入をしようとしている節がある場合
は、融資を断るようにしました。
ところで、話が変わりますが、京セラ創業
者の稲盛和夫さんは、京セラを起こしたこ
ろ、融資をすることがとても怖かったそう
です。
当時の稲盛さんは、知人に工場を借りて、
そこで事業を営んでいたそうです。
さらに、その知人の家を担保にしてもらっ
て京都銀行から1,000万円を借り、機
械を買ったそうです。
しかし、稲森さんは、もし、借入を返すこ
とができなかったら、知人の家を銀行にと
られてしまうことになるので、借入を早く
返そうとして、懸命になって働いていたと
いうことでした。
このような稲盛さんをさして、稲森さんご
自身が「自分はびびりだった」とお話して
おられますが、借入することが怖いと感じ
ている人は、かえって、確実に返済するで
しょう。
一方で、前述のMさんは自己中心的であ
り、ご夫人の気苦労をあまり感じないよう
な人は、借入を返そうという意思がまった
くないとまでは言わないものの、強くない
ということは確かでしょう。
Mさんのような方は、もし、カードローン
を契約するには、家族の同意が必要という
ことが条件であれば、カードローンの契約
を慎重に判断することになったでしょう。
融資をする側としても、Mさんの例は、規
則上は問題はなかったものの、カードロー
ンを利用してもらうことは、ご夫人を苦し
めることとなり、不本意なこととなった訳
です。
「誰にも知られず、簡単な手続きで融資を
受けられる」というのは、親切な銀行と評
価されがちですが、それは、かえって融資
を受けた側を苦しめてしまうことになりか
ねません。
きちんと「この融資を受けることは、自分
にとってよいことか、関係者にも納得して
もらえるか」をいうことを熟慮して、それ
でも融資を受けるべきと考えた上での融資
申込でなければ、融資を受ける側も融資を
する側も何のメリットもないでしょう。
ちなみに、最近、金融庁が銀行に対して、
カードローンの取扱いに否定的になってい
ますが、それは、銀行の一方的な都合で融
資をしているからであり、目先の利益のみ
を追求することは、最終的によい結果に結
びつかないという例だと思います。
(ご参考→ https://goo.gl/hUYTo9 )
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