鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業計画の役割

前回の記事で、事業計画を作る理由につい

て説明しました。


(ご参考→ https://goo.gl/eCh516


今回は、別の観点から事業計画の大切さに

ついて述べたいと思います。


会社の活動の内容を示すものには、経営理

念(基本方針、ビジョン、ミッション、存

在意義なども含みます)や、経営戦略・戦

術などがあります。


経営理念は、会社の目指すところや目的地

を示しており、その目的地にどのような方

法や道を通って行くかを示すものが経営戦

略・戦術です。


経営理念や経営戦略は、中小企業では、比

較的容易に作ることができます。


むしろ、経営理念ありきで、それを実現す

るために会社を起こしたという方が多いで

しょう。


しかし、経営理念と比較して、事業計画の

作成は難しいようです。


なぜなら、事業計画は、経営理念や経営戦

略と比較して、盛り込む内容が具体的、か

つ、たくさんあるからです。


例えば、いつまでに、だれが、どれを、ど

れだけ行うのかということを数値で示さな

ければならないからです。


このように細かいことを決めるという負担

があるものの、だからこそ、精緻な活動が

可能になり、目標にも最短で到達できるよ

うになるといえるでしょう。


ここまでの内容について、まとめると、経

営理念はどこへ(Where)、経営戦略

はどうやって(How)、事業計画はいつ

までに(When)、だれが(Who)、

どれを(What)、どれだけ(How 

Many , How Much)を示す

ということです。


ただし、事業計画で気をつけなければなら

ないことがあります。


それは、細かすぎてもいけないということ

です。


事業計画を細かくしすぎてしまうと、作成

の負担ばかりでなく、実績を計測する負担

や、達成しなければならない目標が多くな

り、最終的な経営理念に向かうことよりも

目の前の数字を追いかけるという、本末転

倒の状態に陥ってしまいます。


もうひとつの注意点として、事業計画は、

作成することが目的ではないということで

す。


これは理解が容易であると思いますが、事

業計画は「計画」であり、ある面で仮設で

あるということです。


例えば、売れると思っていた商品が実際に

は売れなかったり、その逆もあります。


そこで、より利益を得るためにはどのよう

な活動が望ましいのかということを見極め

るためにも、仮説と検証をなるべく多く繰

り返すことが、より精緻な事業計画へと磨

き上げていくことになります。


また、事業計画は、そのような作業をする

ためのツールでもあるということです。


事業計画は、「融資申込をしたら、銀行か

ら依頼されたから作成した」などと、受け

身で作成する会社も多いようですが、よい

事業活動の改善のためのツールと考えると

能動的に作成できるようになるのではない

でしょうか?

 

 

f:id:rokkakuakio:20171201195011j:plain

事業計画を作る理由

今回は、あまりにも当たり前なテーマにつ

いて述べたいと思います。


会社はなぜ事業計画を作らなければならな

いのでしょうか?


とはいえ、その答えはひとつとは限らず、

かつ、そのいずれも正しいと考えていま

す。


そこで、私の考える事業計画を作る理由の

主なものを2つ挙げます。


ひとつは、経営者の方の考える事業方針を

具体的にすることです。


経営者の方は、自社の事業をこのように進

めていきたいという考えを持っている訳で

すが、それは、方向や、あり方、姿勢、意

義などの漠然としたものです。


それらを目指した結果、または、途中経過

を具体的に示すものが事業計画です。


ちなみに、事業方針(会社によっては、理

念、ビジョン、ミッションなどとも言われ

ることがあります)を、どのような道筋や

手段を使って進んでいくかを示すものが、

経営戦略や戦術です。


そして、事業計画は、方法や手段の結果を

数値などで示したものといえます。


では、なぜ、事業の目指す方向やその手段

を示すだけではなく、その結果としての事

業計画を示す必要があるのでしょうか?


それは、端的に述べれば、会社はお金の論

理で動いているからです。


商品の仕入、商品の販売、給与の支払など

の、ステークホルダーとのやり取りは現金

がともないます。


特に、銀行からの借入や、株主からの出資

を受けるには、利益がいくらかということ

が大きな要因になっています。


したがって、方針や道筋だけでは、お金を

ともなうやり取りの判断は難しく、たとえ

計画であったとしても、事業がどうなるの

かということは、数値で示さなければなり

ません。


ここまで書いたことは、多くの方に理解し

ていただけると思いますが、少数ながらも

事業計画(少なくとも明文化したもの)を

作らずに、銀行に融資の申込をしようとす

る方もいますので、改めて述べた次第で

す。


事業計画を作らなければならないもうひと

つの理由は、事業管理ができないからで

す。


事業計画に基づいた事業管理は、意外と実

践している会社は少ないようです。


もしくは、事業計画を作っても、作りっぱ

なしという会社もあります。


むしろ、そのような作りっぱなしの会社の

方が、「事業計画は銀行から要請されたの

で仕方なく作っている」という事情のよう

です。


事業管理も幅広いものなので、限定的に説

明すると、計画が達成していない場合の要

因を分析して改善をすることです。


これは、バランス・スコア・カード(BS

C)を活用すると管理が容易になるのです

が、必ずしもBSCを採り入れる必要はあ

りません。


別の言い方をすれば、自社の事業を改善し

ようとするとき、事業計画がある場合と、

事業計画がない場合では、どちらが改善し

やすいかということを考えれば、事業計画

がある方が改善しやすいということは明ら

かでしょう。


なぜなら、事業計画がある方が、改善すべ

きところが明確になるからです。


そして、その事業計画も、例えば、売上を

5,000万円を得る計画であった場合、

どの商品を、いくらの価格で、どの地域

で、どのような人に対して販売することに

よって得るのかということを決めてあった

場合、単に売上が計画に達しなかったとい

うだけでなく、どういう要因で達成しな

かったか、どう改善すればよいのかという

ことなどが、より明確になります。


以上が、事業計画が必要になると私が考え

る主な理由です。


そして、さらに大切なことは、このような

事業の改善をする活動こそが、経営者の重

要な役割です。


もし、単に、成行で事業に臨んでいる経営

者がいるとすれば、その経営者は、経営者

としての役割を担っていないことになりま

す。


さらに、事業計画がない会社があるとすれ

ば、実態は家族経営の会社であってあらた

めて事業計画のようなものは不要だという

会社を除き、その会社は組織だった事業運

営もできないということになります。

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171130190646j:plain

権限委譲の効果

先日、ちょっとしたことがあって、携帯電

話会社に問い合わせをしました。


その具体的な用件は、データ通信の使用量

をホームページで確認したところ、料金の

締め日が知らないうちに変更になっている

ことに気付いたからです。


問い合わせた結果、データ通信の容量を変

更した都合で、通話料の締め日も変更に

なったことがわかりました。


したがって、現在の通話基本料は、通常の

1か月分ではなく、1度だけ変速的に50

日分で計算されるそうです。


ここで、利用できるデータ通信量も1か月

分ではなく、50日分相当に増えるのかと

私が質問したところ、データ通信量は1か

月分で変わらないけれど、データ通信料金

は50日分になるとの説明を受けました。


ただ、ここで、その説明をしていた電話会

社の方自身も、容量は増えないのに、料金

だけは50日分になることはおかしいと感

じたようで、私から問い直される前に「こ

れはおかしいので、データ通信料金は50

日分ではなく、1か月分だけ請求するよう

に請求データを修正しておきます」との説

明がありました。


私は、問い合わせをしなければ50日分の

請求があったかもしれないという点に疑義

は残りましたが、電話会社自身でおかしさ

に気付き、すぐに料金の修正をした点は評

価できると思っています。


ここで、私が気付いたことは、電話のオペ

レーターは、料金の修正ができる権限が与

えられていたということです。


もし、権限が与えられていなければ、権限

のある人に問い合わせるなど、修正をして

もらうまでに時間がかかったり、または、

「このような決まりになっています」とい

機械的な対応で終わっていたかもしれま

せん。


この件では、会社の事業の手順は、必ずし

も完全ではないことから、ほころびが見つ

かったときのために、現場の職員に権限を

与えておくことが大切であるということを

実感することができました。


ところで、権限委譲というと、リッツカー

ルトンホテルの$2,000までの支出の

権限委譲を思い出します。


このホテルの権限委譲については広く知ら

れていて、例えば、大阪市内にあった同ホ

テルの宿泊客がホテルに重要な書類を置き

忘れてしまい、問い合わせを受けた従業員

が、この$2,000の権限移譲を活用し

て、新幹線の電車に乗って書類を東京まで

届けたことがあると言われています。


ただ、このエピソードは実話かどうかい

かしいといわれていますが、あるホテル業

専門学校が、当時の同ホテルの日本支社長

であった高野登さんへのインタビューの中

で、高野さんが同様の事例をお話しされて

おられます。


(ご参考→ http://bit.ly/2AjTlLv


すなわち、ホテルのレストランに親子が訪

れたが、男の子が泣き出して、レストラン

の雰囲気が崩れた。


そこで、ウェーターがホテルの売店から2

万円のライオンの人形を買ってきて、その

男の子にプレゼントし、泣き止ますことが

できた、というものです。


ここで、高野さんは、ひとつ注意点を述べ

ています。


すなわち、権限委譲は口で叫ぶだけではだ

めだということです。


前述のウェーターは、次の日、総支配人か

ら部長会に呼び出され、ほかのリーダーや

スタッフの前で男の子にライオンの人形を

与えたという対応のすばらしさを褒められ

たそうです。


一般の会社なら「2万円の人形を顧客にた

だで与えるなんて」と叱られてしまいそう

なことであるからこそ、ウェーターが決断

して実践したことがきちんと評価されなけ

れば、権限委譲は浸透しないということで

す。


ところで、権限委譲は職務充実の手段のう

ちのひとつです。


職務充実は、職務拡大(担当の仕事を増や

すこと)の対語で、より高度な仕事をして

もらうことです。


職務充実も職務拡大も、人材開発の手法の

ひとつであり、それと同時に、従業員の方

の士気を高めることにもなります。


とはいえ、権限委譲は単に権限を与えれば

よいというだけではありません。


前提として、権限を与えられるだけのスキ

ルを従業員の方に身に付けさせていなけれ

ばならないし、また、前述のウェイターの

例のように、きちんと成果を評価すること

も必要です。


でも、それができれば、顧客も満足し、従

業員も能力がより高まる上に、士気も向上

するなど、いくつもの効果が得られます。


経営者としては、このような人材育成を行

うことは難しいことですが、それができる

ようになれば、ライバルとの競合も優位に

なります。


そして、このような人材育成こそ、経営者

らしい仕事といえると私は考えています。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171129203244j:plain

未来ノート

「継続は力なり」という格言はよく知られ

ています。


私が述べるまでもなく、継続して活動する

ことは大きな威力を発揮することを示して

いるものであり、成功者といわれる人は、

いろいろなことを習慣化して実践していま

す。


ですから、私がここで、活動は継続的に行

いましょうと述べる必要性はないと思って

います。


それでも継続的な活動を実行しようとして

も、なかなか実行できないでいる人は多い

ようです。


いわゆる3日坊主です。


そこで、今回は、私が継続的な活動をする

ための工夫をお伝えし、3日坊主に悩んで

いる人のご参考にしていただきたいと思い

ます。


活動を継続するための工夫は、これもあた

り前ですが、小さなことを継続するように

するということです。


何かをしようとする場合、どうしても効果

が大きいものをやりたいと考え、大きな目

標を立てがちですが、それが継続を難しく

する要因となり、結果として何もしていな

いという結果になります。


私の場合は、もともと高い能力がないと自

覚を持っているので、できることといえば

小さいことを毎日実践することだけだと考

えているので、小さいことを積み重ねるこ

とができているのだと思います。


それでも、「このようなことを続けても何

か効果があるのか」と、継続することその

ものに疑問を感じるときもあるので、その

ようなときは、継続する活動に効果がある

かどうかは問題にせず、継続することその

ものを目的と考えるようにして、継続をし

ています。


もうひとつは、アイエフエスネットの社長

の渡邉幸義さんのご著書「未来ノートで道

は開ける!」( http://amzn.to/2zuZuk0 )

に書かれていたお話しを思い出すようにし

ていることす。


未来ノートとは、渡邉さんが、毎日、その

日にやるべきことを書いているノートのこ

とです。


未来ノートは、一般に売られているB5版

のノートに書いているものですが、平成元

年から書き始め、この本が出版された平成

20年時点で、その数は220冊にもなっ

たそうです。


その間、内容もどんどん進化していったそ

うで、その内容は詳しく本に書かれていま

す。


これは、渡邉さんから私が直接聞いたこと

ですが、いま、渡邉さんは、毎日午前2時

30分に起床して、2時間程度かけて未来

ノートを書いているそうです。


これを聞いたとき、1日の行動を決めるた

めに、2時間かけるというのは、私はもっ

たいないと感じました。


でも、渡邉さんが社長を務めるアイエフエ

スネットという会社では、ハンディキャッ

プのある人や、LGBT、犯罪歴のある人

など、社会的弱者を積極的に雇用して、会

社としても利益を出しているというすばら

しい業績を上げています。


そのような実績を上げているのは、逆に、

時間をかけて1日の行動を決めているから

なのだと、納得できます。


そして、渡邉さんは「毎日、この未来ノー

トを書き上げなければ、アイエフエスネッ

トの従業員と、その家族、合わせて2,0

00人の生活が成り立たなくなる」と考え

ながら、未来ノートを書いているというこ

とでした。


このような、強い意思を持った人の本を読

み、そして、実際にその人からお話しを聴

いた経験が、私の意思はとても弱いと感じ

させることとなりました。


渡邉さんがあれほどの強い意思をもって会

社を経営しておられるのだから、自分がこ

れくらいのことを継続できなければとても

恥ずかしいと感じることが、私がこのブロ

グなどを継続して書き続けられる力となっ

ています。

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171129085247j:plain

 

PDCAはなぜ軽んじられるのか

これは私が何度か述べていることなのです

が、私がときどき受ける質問で「経営コン

サルタント」はどういう仕事をするのかと

いうものがあります。


ちょっと話がそれますが、「経営コンサル

タント」となのりつつ、私からみると「顧

問先の業務の代行」をしているだけという

人を見かけることがあります。


そして、それを依頼している側も、依頼を

受けている側も、それが経営コンサルタン

トの仕事と考えている場合があります。


経営コンサルタント」という言葉の定義

を定める権限は私にはありませんが、少な

くとも、コンサルティングと仕事の請負は

異なります。


ただ、なぜこのようなことに言及したかと

いうと、「経営」や「コンサルティング

の言葉の意味が不明確なため、「経営コン

サルタント」はどういう仕事をするのかと

いうことも分かりにくくなっていると考え

ているからです。


話しを戻すと、「経営コンサルタント」の

仕事は、「経営」を「コンサルティング

する仕事です。


これだけだと説明にはなりませんので、も

う少し詳しく書くと、「経営者の仕事」の

改善のお手伝いをするということです。


では「経営者の仕事」は何かというと、規

模の小さな会社では、経営者はすべての仕

事をこなさなければならないので、事業運

営に必要とされる仕事のすべてということ

になってしまいます。


これでは範囲が定まりませんので、「経営

者の仕事」とは、「経営者の立場でなけれ

ばできない仕事」です。


例えば、「顧客を訪問し、契約を取って来

る」とか、「製造現場に出て、機械を製造

する」という仕事は「経営者の立場」でな

くてもできる仕事です。


黎明期の会社では、十分なスキルを持って

いる人が少ないために、社長が現場に出な

ければならない場合もありますが、それは

必ずしも「経営者の立場」でなくてもでき

ることです。


一方、「経営者の立場」でなければできな

いこととは、重要な経営方針の策定や、そ

の管理や修正などです。


これをひとことで言えば、意思決定をする

ことが経営者の役割です。


そして、経営コンサルタントは、その意思

決定をするための判断材料を提供したり、

助言をしたりといったご支援をすることで

す。


実は、この作業はPDCAそのものです。


計画を立て、実行し、その検証を行い、修

正を加えるというルーチンです。


そこで、私は「どういうお仕事をされてい

るのですか」という質問を受けた時、「効

果的なPDCAを実践するお手伝いをする

ことです」と答えます。


しかし、「PDCA」はあまり意味がない

と考える方が多いようです。


なぜなら、そのように感じる方は、PDC

Aは、毎月反省会を開いて、改善点を見つ

けるという地味な活動だと受けとめている

からでしょう。


一方で、売上や利益を増やすには、「いま

売れそうな商品を販売する」とか、「イン

ターネットを使って、効果の高い広告を出

す」といった方法が有効であると考える方

が多いようです。


確かに、商品や販売方法などを改善するこ

とによって、早く売上や利益を得られるよ

うになります。


一方で、PDCAの効果は、1年以上経た

ないと現れにくいものです。


ここでお気づきになる方も多いと思います

が、すぐに効果が現れる施策は、現場レベ

ルで戦術的なものです。


これとは逆に、効果がなかなか現れない施

策は、組織的な課題であり、戦略的なもの

です。


今回は詳細な説明を割愛しますが、より高

度な戦術を実践できるようになるには、そ

れに従って組織としての高い能力が必要で

す。


そして、その能力は一朝一夕には得ること

はできません。


日頃から継続した小さな改善の積み重ねが

いざというときに大きな力となります。


そして、この、社内ではあまり見向きもさ

れそうにない地道な活動こそ、最も難しい

けれど、経営者の立場でなければ実践でき

ない活動だと私は考えます。


経営者の方の中には、「せっかく会社を起

こしたのだから、自分の思うとおりの事業

をしたい」と思う方は多いと思います。


そのことに問題はないのですが、組織の

トップである経営者は、事業にだけ目を向

ければよいというわけではなく、組織の能

力向上にも注力する必要があるということ

を認識しておかなければならないと思いま

す。

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171127170606j:plain

 

 

不祥事の本当の原因

最近、大手の鉄鋼業や自動車製造業で不祥

事が相次いでいます。


私は、この不祥事を伝えるニュースを聴い

ていて、実はイラっとする気持ちになって

います。


なぜかというと、なぜデータ改ざんや規則

違反が起きたのかということを伝えていな

いからです。


伝えたとしても「利益を優先する企業体質

があった」という程度です。


しかし、この「利益優先」による不祥事は

残念なことに常に起こっており、平成18

年に施行された会社法では大会社等への内

部統制の体制整備が義務付けられたり、日

本版SOX法(金融商品取引法の一部)が

施行されたりしていても、不祥事はなくな

らないのはなぜかという部分はまったく伝

わって来ません。


といいつつ、私も、明確な回答をもっては

いません。


ただ、そのひとつの原因として私が考えて

いるのは、日本の法律と日本の会社の実態

に乖離があるということです。


日本の会社法などは、米国の会社のように

株主主権となっています。


一方で、日本の会社では従業員出身者が社

長や役員のほとんどを占めたり、終身雇用

などによって従業員の会社への帰属意識

高くなるなど、実態としては従業員が株主

よりも大きな影響力を持っています。


これは、よい方向にも働くことがあります

が、逆に、日本の不祥事の多くは日本的な

慣行の悪い面が影響していると思っていま

す。


これは、少し状況が異なりますが、米国の

ハイテン戦略軍司令官は、11月18日に

カナダ東部ハリファクスで開かれたシンポ

ジウムで、「(もしトランプ大統領から核

攻撃の命令が出されたとき、その命令が)

違法なら、『大統領、それは違法だ』と言

うことになる」と発言したそうです。


(ご参考→ https://goo.gl/nE4F1V


これに限らず、米国軍は上官からの命令が

違法であれば拒むということをしているそ

うです。


これをもって、日本の会社でも、上司から

違法な指示が出たら拒むべきというように

は直ちには言えませんが、とはいえ、日本

では、結果として上司からの指示で法律を

犯してしまうことはあります。


その端的な例は、サービス残業でしょう。


サービス残業で最も損をするのは、従業員

自身にもかかわらず、日本では上司の権限

が強く、自分を犠牲にして取り入ろうとし

ます。


このようなことは、経営者にもあてはまる

例があります。


かつて、経営破たんした旧日本長期信用銀

行(現在の新生銀行)の、破たんしたとき

の頭取であった大野木克信元頭取らは、粉

飾決算を行なっていたとして、証券取引法

違反と商法違反の罪に問われていました

が、最高裁は無罪の判決を出しています。


詳細は割愛しますが、大野木元頭取らは、

日本長期信用銀行が破たんした時の頭取で

あったというだけで、破たんの原因を作っ

た訳ではなく、本当の破たんの原因を作っ

たのは、バブル期に頭取であった杉浦敏介

氏らであり、大野木氏は杉浦氏から粉飾決

算を申し渡し事項として引き継いだだけに

過ぎないということが、大野木氏らが無罪

になった主な理由のようです。


この例が必ずしも適切とは言えませんが、

不祥事を起こしている日本の会社の例を見

ていると、1人の社長だけではなく、何人

かの歴代の社長が関わっているという点で

共通しています。


これは、日本の会社では、社長の権限でさ

え限定的ということであり、社長は自分を

社長に指名した前任者に従わざるを得ない

ということです。


このことは、表面的には社長を指名する権

限を持っている株主の権限が形骸化してい

る一例です。


(厳密には、定款で定められている場合を

除き、株主は社長を選任する権限はなく、

取締役を選任する権限のみしか持っていま

せんが、理解を容易にするために「株主は

社長を指名する権限を持っている」とあえ

て記載しています)


話しを本題に戻すと、経営者や上司は、部

下に対して法律を破れという命令をしてし

まうことがあるということです。


自動車会社の例では、納期を早くしたりコ

ストを削るために、無資格者に検査をさせ

ることに至ってしまったのでしょう。


経営者は、法律を破れとまでは言っていな

と主張したとしても、納期短縮やコスト削

減の指示が法律を破る原因となっているこ

とに変わりはありません。


このような時、部下は、「その指示は法律

を破ることになる」と明確に伝えられるよ

うになっているかどうかがポイントです。


多くの日本の会社では、たとえ法律を破ら

なければ実行できない指示が出されても、

部下はそれに従わざるを得ない状況にある

のでしょう。


ここで、「法律は守らなければならない」

という紋切り型のことを私は主張するつも

りはありません。


結果として、法律を破った場合と、守った

場合では、どちらが会社の利益は大きいか

ということを考えれば、明らかに、法律を

守った会社です。


もし「ばれなければ法律を破ってもいい」

という経営者がいるとすれば、私は、大き

な見当違いをしていると思います。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171126214353j:plain

CSRの効果

以前、野村克也さんが阪神タイガースの監

督を務めていたとき、テレビ番組のインタ

ビューで、次のような話をしていました。


すなわち、「シーズン前のキャンプでは、

年に1回使うかどうかというようなサイン

プレーの練習を行っている。


結果として、そのサインプレーをするチャ

ンスはないかもしれない。


でも、そのような練習をさせることによっ

て、選手たちは、『自分たちはレベルの高

い野球をしている』と実感し、士気が向上

する」というものです。


これも説明するまでもありませんが、サイ

ンプレーとは、サインを使って相手チーム

に分からないように味方の選手に指示を出

して行うプレーのことですが、特に、前述

の野村監督の言っているようなサインプ

レーとは、相手の意表をついてあざむくよ

うなプレーを指します。


確かに、プロ野球では年に何度かは、鮮や

かなサインプレーが行われており、胸が

すっとするときがあります。


特に野村監督は緻密な作戦をとる監督だっ

たので、サインプレーにはこだわりがあっ

たのでしょう。


ところで、話を本題にもどすと、これは私

個人の考え方ですが、会社がCSR(企業

の社会的責任)を果たすための活動も、前

述の野村監督の言っていた、滅多に使う機

会のないサインプレーと同じような効果が

あると考えています。


ところで、CSRは、漠然としており、ど

のような責任を指すのかということも広範

囲に及んでいることから、ここでは、CS

Rを、「企業も、社会においては市民の一

員であるという考え方のもと、地域社会、

従業員、自治体などと良好な関係を維持す

るための活動」という前提で述べて行きま

す。


このCSRで私が強い印象を持っている会

社は、島根県大田市にある、中村ブレイス

という会社です。


(ご参考→ https://goo.gl/ykv9QY


同社の規模としては、資本金2,000万

円、従業員数80名という中小企業です

が、義肢装具(義手や義足、人工乳房、装

具など)の製作を行い、売上高は10億円

にのぼる優秀な会社です。


本論からはそれますが、「卓越した技術力

による同社の義肢装具製品は世界30か国

から注文を受け、障がいを持つ人たちの暮

らしに貢献している」そうです。


(ご参考→ https://goo.gl/EwPu8B


同社は、このような書き方は失礼ですが、

中小企業ながらCSRを積極的に実践して

います。


同社はいくつかのCSR活動を行っていま

すが、そのうちのひとつを挙げると、「古

民家再生活動」です。


同社のWebPageによれば、同社のあ

大田市大森町は「大航海時代に銀を求め

て世界中の人々が訪れた場所だった。


この町を再び世界に誇れる町にしたい。


大森で起業した時、(社長の)中村はそう

決意し、その想いを胸に社業の成長ととも

に古民家の再生を始めました。


その後も行政・金融機関の補助は一切受け

ず、全て自力で古民家を買い取り再生して

いきました。


当社はこれまでに約50軒の建物を修復し

てきました。


再生した建物は『町に文化力を』との思い

から迎賓館兼資料館、ゲストハウス、オペ

ラハウスなどに改築しました。


また、地域の方にレストランや喫茶店、ド

イツパンのお店、銀製品のお店などとして

使って頂いています。


そのうち20軒には住居として社員とその

家族など約70人が住んでくれています。


社員を中心にU・Iターンの住民が増え、

人口減少に歯止めが掛かり始めました」と

いうことです。


この活動そのものもすばらしいものなので

すが、さらに私は、このようなすばらしい

活動をしている会社で働く人たちは、自分

が勤めて会社をほこりに思うことができ、

そして、それは働くときによい効果を与え

ると考えています。


それだけがすべてではありませんが、中に

は、顧客や社会から蔑まされていると感じ

ながら働いている人たちもいます。


私も、かつて、銀行で働いていたときは、

「国から支援を受けながら高い給料をも

らっている」などと揶揄され、士気が大き

く下がっていたときがありました。


結論は、従業員の方が勤務先に誇りを持っ

てもらうことは大切で、そのためのひとつ

の方法はCSRということです。


CSRの活動は、直接利益に結びつくこと

がないため、実践には躊躇する面もありま

すが、従業員の方にとって誇れる会社は規

模だけではないという時代になったと言え

ると思います。


むしろ、規模は大きいけれど、勤めている

会社に誇りをもてないという従業員の方も

多いのではないでしょうか?


すなわち、規模の大小ではなく、誇りを持

てるという会社にこそ、よりよい人材が集

まると私は考えています。

 

 

f:id:rokkakuakio:20171124175446j:plain