これは私が何度か述べていることなのです
が、私がときどき受ける質問で「経営コン
サルタント」はどういう仕事をするのかと
いうものがあります。
ちょっと話がそれますが、「経営コンサル
タント」となのりつつ、私からみると「顧
問先の業務の代行」をしているだけという
人を見かけることがあります。
そして、それを依頼している側も、依頼を
受けている側も、それが経営コンサルタン
トの仕事と考えている場合があります。
「経営コンサルタント」という言葉の定義
を定める権限は私にはありませんが、少な
くとも、コンサルティングと仕事の請負は
異なります。
ただ、なぜこのようなことに言及したかと
いうと、「経営」や「コンサルティング」
の言葉の意味が不明確なため、「経営コン
サルタント」はどういう仕事をするのかと
いうことも分かりにくくなっていると考え
ているからです。
話しを戻すと、「経営コンサルタント」の
仕事は、「経営」を「コンサルティング」
する仕事です。
これだけだと説明にはなりませんので、も
う少し詳しく書くと、「経営者の仕事」の
改善のお手伝いをするということです。
では「経営者の仕事」は何かというと、規
模の小さな会社では、経営者はすべての仕
事をこなさなければならないので、事業運
営に必要とされる仕事のすべてということ
になってしまいます。
これでは範囲が定まりませんので、「経営
者の仕事」とは、「経営者の立場でなけれ
ばできない仕事」です。
例えば、「顧客を訪問し、契約を取って来
る」とか、「製造現場に出て、機械を製造
する」という仕事は「経営者の立場」でな
くてもできる仕事です。
黎明期の会社では、十分なスキルを持って
いる人が少ないために、社長が現場に出な
ければならない場合もありますが、それは
必ずしも「経営者の立場」でなくてもでき
ることです。
一方、「経営者の立場」でなければできな
いこととは、重要な経営方針の策定や、そ
の管理や修正などです。
これをひとことで言えば、意思決定をする
ことが経営者の役割です。
そして、経営コンサルタントは、その意思
決定をするための判断材料を提供したり、
助言をしたりといったご支援をすることで
す。
実は、この作業はPDCAそのものです。
計画を立て、実行し、その検証を行い、修
正を加えるというルーチンです。
そこで、私は「どういうお仕事をされてい
るのですか」という質問を受けた時、「効
果的なPDCAを実践するお手伝いをする
ことです」と答えます。
しかし、「PDCA」はあまり意味がない
と考える方が多いようです。
なぜなら、そのように感じる方は、PDC
Aは、毎月反省会を開いて、改善点を見つ
けるという地味な活動だと受けとめている
からでしょう。
一方で、売上や利益を増やすには、「いま
売れそうな商品を販売する」とか、「イン
ターネットを使って、効果の高い広告を出
す」といった方法が有効であると考える方
が多いようです。
確かに、商品や販売方法などを改善するこ
とによって、早く売上や利益を得られるよ
うになります。
一方で、PDCAの効果は、1年以上経た
ないと現れにくいものです。
ここでお気づきになる方も多いと思います
が、すぐに効果が現れる施策は、現場レベ
ルで戦術的なものです。
これとは逆に、効果がなかなか現れない施
策は、組織的な課題であり、戦略的なもの
です。
今回は詳細な説明を割愛しますが、より高
度な戦術を実践できるようになるには、そ
れに従って組織としての高い能力が必要で
す。
そして、その能力は一朝一夕には得ること
はできません。
日頃から継続した小さな改善の積み重ねが
いざというときに大きな力となります。
そして、この、社内ではあまり見向きもさ
れそうにない地道な活動こそ、最も難しい
けれど、経営者の立場でなければ実践でき
ない活動だと私は考えます。
経営者の方の中には、「せっかく会社を起
こしたのだから、自分の思うとおりの事業
をしたい」と思う方は多いと思います。
そのことに問題はないのですが、組織の
トップである経営者は、事業にだけ目を向
ければよいというわけではなく、組織の能
力向上にも注力する必要があるということ
を認識しておかなければならないと思いま
す。