鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

残業がなくならない本当の理由

経営コンサルタント、清水久三子さんのご

著書「外資系コンサル流『残業だらけ

職場』の劇的改善術」を拝読しました。


内容は、なぜ、職場に無駄があるのかとい

うことを説得力ある根拠をもって説明した

上で、その解決策を示しています。


その具体的な内容は本を読んでいただきた

いのですが、私の目をひいた点を挙げると

「働き方改革」が叫ばれているなかで、そ

れを実現するためのプロジェクトには疑問

感じるということを清水さんは述べておら

れます。


すなわち、「ノー残業プロジェクト」、

「業務スピード改善プロジェクト」などの

プロジェクトばかりが立ち上がり、結果と

して、やることが増えてしまっている。


時短を迫られるあまり、本来はやるべきこ

とまで便乗してやらなくなってしまう。


ゴールが不明確なままなので、いったん、

結果を出しても、経営者が納得せず、また

仕切り直しをしなければならなくなる。


結局「残業ゼロの徹底」などのスローガン

を唱えるだけになったり、残業をなくすた

めの努力を従業員個人に任せ、「定時帰宅

宣言」をさせるだけに終わる、ということ

を指摘されておられます。


要は、表面的なことばかり行われるので、

いつまでも本当の時短ができないというこ

とです。


このことについて、清水さんは解決策を示

しておられませんが、私は、大きく2つの

原因があると思います。


ひとつは、働き方改革だから、働く人の課

題であり、働く人「だけ」で解決できる、

または、働く人だけで解決できる課題であ

るということにされてしまっているからだ

と思います。


仮に、働く人だけで解決すべき課題であっ

たとしても、それに失敗したとき、経営者

には責任はないと考えることはおかしいで

しょう。


経営者は、表向きは働き方改革は重要課題

ということにしつつ、内心は他人事にして

いるという状態をあらためること抜きに、

真に働き方改革は実現しないでしょう。


ただ、経営者の人たちが、働き方改革につ

いて、臭い物に蓋をするような態度をとる

ことには、次のような理由があると考えて

います。


すなわち、従業員の方々の働く時間が短縮

することによって、生産高や売上高が減少

してしまうことを恐れているという面もあ

ると考えられます。


恐らく、多くの経営者の方は、勤務時間を

短くすることは賛同しても、それが生産高

や売上高を犠牲にする前提では賛同できな

いのでしょう。


私は、これが働き方改革がなかなか進みに

くい要因ではないかと思っています。


では、どうすればよいかというと、これは

私もコンサルタントのような立場だから言

えるのであろうと批判されることを前提で

述べると、思い切ってビジネスモデルを変

える必要があるということです。


早晩、日本では残業は原則禁止になる時代

に向かいつつあると思います。


そういった中で、大手企業では、従業員の

勤務時間を短縮するための設備投資を増や

しています。


これはIoTや人工知能の活用によって実

現性が高くなっています。


むしろ、このような設備投資を成功させる

かどうかが競争力の向上につながるといえ

るでしょう。


そうであれば、一日でも早く、従業員の勤

務時間が短くても利益を得られるビジネス

モデルを確立することが肝要です。


むしろ、いままでは、従業員ひとりあたり

の付加価値、すなわち労働生産性(=付加

価値額÷従業員数)は、実態としてあまり

意識されてこなかったと思います。


というのは、とにかく利益がでればいいと

いう前提で事業が進められ、その利益とは

従業員のサービス残業でもたらされていた

とすれば、経営者の功績はないに等しいと

いうことになるでしょう。


このように述べると建前を述べているよう

に思われますが、これまでは、労働法規が

遵守されているかどうかが、あまり厳格に

問われてこなかっただけというように私は

考えています。


働き方改革が提唱されているということを

もって、これからは、労働生産性の高いビ

ジネスモデルでなければ事業は続けられな

い時代になったということを、私たちは認

識しなければならないのだと思います。

 

 

 

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コンサルティングの上手な活用法

タイトルは「コンサルティングの上手な活

用法」なのですが、活用法というよりも、

コンサルタントとどのように関わっている

会社が業績をあげているのかということを

述べたいと思います。


ひとつめは、事前に相談がある会社です。


言い換えれば、何か困ったことが起きてか

コンサルタントなどに相談する会社は、

あまり賢明とは言えません。


これも、多くの方がご理解いただけると思

うのですが、何か困ったことが起きても、

自分で何とかなると考える経営者の方が多

く、もう自力では何ともならないという時

になってコンサルタントに相談してくると

いうことは少なくありません。


そして、課題の期限が差し迫っているほど

選択肢は少なく、打ち手もあまりないとい

う状態では、コンサルタントが相談を受け

てもどうにもならないか、仮に解決すると

しても、多額の費用がかかってしまうとい

うことになります。


このように、ぎりぎりになって相談する場

合、労力が大きくなるという面でお薦めで

きないということもありますが、そのこと

だけでなく、会社自体に課題を先送りする

という風土があることが、そもそも改善し

なければならないということも言えます。


一方、業績のよい会社は、業績がよいだけ

ではなく、さらに効率をあげる余地はない

かという観点で相談してきます。


ですから、業績が悪くコンサルタントにも

相談をしないという会社と比較すると、業

績に幾何級数的に差が広がってしまうとい

うことになってしまいます。


ふたつめは、自らは変わろうとしない会社

です。


表向きは改善したいと言っていても、行動

がともなっていない会社も、これに含まれ

ます。


会社を野球チームに例えれば、コンサルタ

ントは外部から招かれたコーチのような役

割を担います。


ですから、コーチが自らマウンドに上がっ

たり、バッターボックスに立つことはしま

せん。


このことは当りまえのように思えるのです

が、コンサルタントへの相談と言いつつ、

自社に代わってこのようなことをして欲し

い、自社の状況はただでさえ忙しいのだか

ら、これ以上仕事を増やすつもりはないと

考えている経営者の方は意外と多くいます。


これは発想が逆で、忙しいから自社が変わ

らなければならないはずです。


それに、コンサルタントに代わりに仕事を

させるのであれば、それは単に新たな従業

員を雇うことと変わりはありません。


ただ、最近は「コンサルタント」と名乗る

人の中にも「コンサルティング」をせずに

仕事の一部を引き受けるだけの方も多いの

で、コンサルタントとはそのようなものだ

と考えている経営者の方も多いのでしょう。


会社の定型業務や、高い専門性を必要とす

る業務については外注することは問題はな

いと思いますが、単に、面倒だから「コン

サルタント」に任せるという姿勢では、結

局、自社の能力は向上せず、業績もよくな

ることにはなりません。


そして、これについても、自社の能力を向

上させようという姿勢そのものが欠けてい

ることが問題なのだと思います。


一方、業績のよい会社は、早くコンサルタ

ントからの学びを吸収し、コンサルティン

グを受けなくてすむようにしようとします。


(ただ、このような会社は、ステップが上

がると、そこで次の課題を見つけ出し、再

コンサルタントに相談をするということ

を繰り返し、進歩の好循環に入ります)


以上、ふたつの例を述べましたが、ここで

「困っている会社こそ、コンサルタント

助けなければならないのでは?」と疑問を

持つ方もいると思います。


もちろん、コンサルタントは困っている会

社を助けることが役割なのですが、コンサ

ルタントの支援を活かすことができるかど

うかの最終的な要因は、その会社自身にあ

ります。


もし、コンサルタントが支援する会社の業

績向上に責任があるとすれば、コンサルタ

ントは、コンサルタントコンサルタント

ではなく、その会社の経営者になってしま

います。


これを言い換えれば、コンサルティング

受けても業績が向上しない会社の責任は、

コンサルタントではなくその会社の経営者

にあります。


もちろん、コンサルティングを受けて業績

が向上すれば、その手柄はコンサルタント

のものではなく、経営者のものです。


繰り返しになりますが、会社の業績を向上

させるには、最終的に経営者自らが能力を

高め、行動しなければなりません。


コンサルタントは、その経営者を支える役

割に過ぎません。

 

 

 

 

 

 

 

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記憶より記録

先日、佐々木正悟さんのご著書、「なぜ、

仕事が予定どおりに終わらないのか?」

( http://amzn.to/2kpxETl )を読みまし

た。


読もうと思ったきっかけは、自分の仕事を

効率的にしようと思ったからなのですが、

別の意味で気づかされることが書いてあり

ました。


佐々木さんは、完璧主義者は仕事を速くこ

なすことができないとご著書でご指摘され

ておられるのですが、完璧主義者が改める

べき点のひとつとして、自分の記憶の方が

正しいと思ってしまうということです。


その例として、30時間で1,000ペー

ジの原稿を書けると思っている人が、実際

には500ページしか書けなかったとき、

「いつもの半分のペースでしか仕事をしな

かった」と考えてしまいます。


実際は、30時間で500ページしか原稿

が書けないのに、自分は1,000ページ

の原稿を書くことができると考えているか

ら、1,000ページの原稿を書くときに

30時間しか予定を割かない。


それが、完璧主義者は予定通りに仕事を終

わらせることができない原因のひとつだと

いうことです。


これを改善する方法として、佐々木さんは

仕事の記録を付けることをお薦めしていま

す。


仕事の記録を付けることで、実際にやった

仕事の量に納得し、「本当はもっと仕事が

できたはず」という思い込みをなくすこと

ができるということです。


この説明を読んだ時、私はこれに似た経験

が思い浮かびました。


しかし、それは自分のことではありません。


事業の改善のお手伝いをしている会社の経

営者の方の口から出てくる言葉です。


私「月例会議で、事業計画の進捗状況を、

確認していますか?」


社長「確認しています」


私「年度初めに、従業員の方と面談し、1

か年の実績の確認を行い、今後1か年に

担って欲しい役割を伝えていますか?」


社長「各従業員と面談を行い、確認と伝達

を行っています」


私「会社の今年度の目標は、従業員の方に

理解してもらっていますか?」


社長「会議のときに伝えました」


これだけのことを実施していれば、会社の

業績が悪くなることは考えにくいです。


実は、社長は私の質問したことを実践でき

ていると考えているのですが、本当は、で

きていないというのが実情です。


では、なぜ社長は私の質問に対して実施し

ていると答えるのかというと、例えば、会

議は開いているのですが、それだけで従業

員に自分の話した内容は伝わっていると

思ってしまうようです。


会議を開く目的は、会議を開くことではな

く、社長の方針が他の参加者に理解されて

いるかどうかなのですが、そこまでは社長

も確認はすることはほとんどありません。


毎月の実績の確認も、実績の報告は受けて

も、もし計画に遅れが出ていても、その具

体的な改善策を決めずにうやむやなままに

会議が終わり、会議を開いた意味がない状

態になっているのが実情のようです。


しかし、実績の確認の会議は開かれたので

社長は私の質問に「確認している」と回答

するようです。


実は、このようなことが起こらないように

するために、私のようなコンサルタント

ご支援する意義があります。


会議や面談は、その効果があるかどうかが

問われているので、単に会議の参加者が集

まっただけとか、面談のときに社長と従業

員で話し合っただけでは、当然、その意味

はありません。


とはいえ、一朝一夕で、効果のある会議や

面談ができるようにはならないことも事実

で、ある程度の期間をかけてスキルを高め

て行かなければなりません。


結論は、経営者の方は、「会議を開いた」

「面談を実施した」という、表面的な「記

憶」だけでよしとせず、その効果が表れて

いるかどうかという「記録」にこだわるよ

うにすることが大切です。


これは、結構たいへんなことですが、経営

者が身に付けなければならない重要なスキ

ルであると私は考えています。

 

 

 

 

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どしゃぶりの時に傘を取られないために

「晴れの日に傘を貸し、どしゃぶりの時に

傘を取り上げる」と銀行を揶揄する経営者

の方は多いと思いますが、それでは、

どしゃぶりのときに傘を取り上げられない

ようにするにはどうすればよいかというこ

とについて述べたいと思います。


前述の揶揄は、会社の業況の良い時は、銀

行はおべっかを使うのに、業況が悪くなる

と、手のひらを返したように態度が冷たく

なるということを指しているのでしょう。


これは、明らかに銀行に否があります。


なぜなら、取引先への接し方は、一貫性が

求められるからです。


しかし、銀行は株式会社であり、銀行の業

務は営利事業です。


銀行には融資先の事業を発展させるという

役割もありますが、かといって、損失の出

る取引は避けなければならないという事情

もあります。


ですから、これは銀行だけではありません

が、もうかりそうな相手には機嫌をとり、

もうからなさそうな相手からは距離を置こ

うとするということは仕方がない面もあり

ます。


そこで、お互いに商売を営んでいる立場と

しては、銀行が自社に機嫌取りをしている

ということを真に受けることはあまり賢く

ないとも言えます。


ですから、仮に自社に機嫌取りをしてくる

銀行があったとしても、それは自社がピン

チになったときも続けてもらえるのかどう

かということを、的確に見抜かなければな

りません。


しかしながら、銀行の多くは、業況が悪い

会社とは取引をしたくないと考えていると

いうのが現実でしょう。


ですから、銀行の姿勢を見抜くことよりも

自社と銀行の信頼関係を強くすることの方

が、現実的と言えます。


このように書くと、「融資を受ける会社だ

けが一方的に負担が大きいのではないか」

と感じる方もいると思いますが、逆に、業

績のよい会社は複数の銀行で融資シェアの

奪い合いになります。


ですから、融資を得るための銀行への働き

かけが負担であると感じるとしても、それ

を、不平等と感じることは適切ではないと

私は考えます。


また、銀行から「どしゃぶりのときに傘を

取り上げられた」という会社の中には、

「晴れのときに驕り高ぶっていた」という

会社も少なくありません。


堅実な会社は、業績がよいときも悪いとき

も、一貫して謙虚に銀行に接していると私

は考えています。


銀行に対しては、決して媚びる必要はあり

ませんが、かといって、誠実に向い合うこ

とは、決して損ではないと思います。


話しを戻して、銀行から信頼を得るには、

具体的にどのようなことをすればよいかと

いうと、これも字数の兼ね合いから、概要

のみを書くと、自社の状況をつまびらかに

報告することと、自社の方針を適宜伝える

ことだと思います。


自社の状況をつまびらかに伝えることとは

具体的には、前月の月次試算表を銀行に毎

月持参するか送付することです。


ここで、月次試算表を送ることが、自社の

状況をつまびらかに伝えることになるのか

という疑問を持つ方も多いと思います。


確かに、必ずしもそうとは限りませんが、

年に1回作成される決算書を、銀行から催

促を受けてようやく提出する会社も少なく

ない中にあって、毎月月次試算表の提出を

している会社は、銀行から見れば、提供を

受ける情報の量はかなり多いと受けとめら

れるでしょう。


しかも、月次試算表を銀行に持参する会社

は、その際に、銀行の職員へ数値以外の情

報として自社の状況を伝えるだけでも、融

資稟議書を書くときの好材料が多くなると

感じることができます。


ふたつめの、自社の方針を伝えるというこ

とについてですが、できれば、年に1回、

自社の経営方針発表会を社内で開き、そこ

に銀行職員を招くということをすることが

望ましいと私は考えています。


こうすることで、会社の状況を銀行に理解

してもらいやすくなるだけでなく、自社の

事業に取り組む姿勢が熱心であるというこ

とを銀行職員に感じ取ってもらうことがで

きるでしょう。


発表会に銀行職員に来てもらえない、また

は、発表会を開くことが難しいという場合

は、経営方針を記載した書面を銀行に届け

るだけでも効果はあります。


もし、自社の経営方針を毎年作成すること

が負担であると考えている経営者の方がい

るとすれば、そのようなことをせずに、銀

行にピンチのときは助けて欲しいと願うこ

とは、虫がいいということになるのではな

いかと私は考えます。

 

 

 

 

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特定社債保証制度

今回は、特定社債保証制度について説明し

ます。


特定社債保証制度とは、会社が資金調達を

するために発行する社債について、その社

債を引き受けた人(会社)に対して返済

(償還)の保証をする制度です。


この制度の説明の前に、まず、社債につい

て説明します。


社債とは、会社法で定められた資金調達方

法のひとつです。


会社は社債券を発行し、投資家にそれを引

き受けてもらい資金を調達します。


社債も負債(固定負債)に分類されます

が、銀行からの長期借入金との違いは、次

の通りです。


(1)長期借入金は分割返済だが社債は期

日一括返済である。


(2)長期借入金は変動金利が一般的だが

社債は固定金利である。


(3)長期借入金は借用証書で1対1の取

引だが、社債は複数の投資家から資金調達

し、また社債券は流通性のある有価証券で

ある。


政府も、歳入が不足するために、国庫債券

国債)を発行します。


国債は、複数の投資家が引き受けて、また

投資家の間で売買されます。


一般の会社では、この国債に相当する資金

調達方法が社債ということになります。


それでは、特定社債保証制度について説明

します。


特定社債保証制度とは、会社の発行する社

債に対して、その80%の金額を信用保証

協会が保証することで、一般の社債よりも

資金調達を容易にするものです。


また、保証協会の保証は一般的には2億8

千万円が限度ですが、社債の場合は、保証

額は4億5千万円まで(社債発行額は5億

6千万まで)保証を利用できる点でも有利

です。


ただし、この保証を利用できる条件は、純

資産が5千万円、自己資本比率が20%以

上といった一定の要件が必要です。


なお、この制度を利用した場合、社債を引

き受ける「投資家」は、特定社債保証制度

の申請を仲介する金融機関です。


社債の制度は、不特定の投資家に引き受け

てもらうこととなっていますが、実質的に

は、保証を仲介した金融機関が「融資」を

しているときと同じことになります。


ただし、社債の発行条件は前述の通りであ

り、長期的なまとまった資金を調達しよう

とする会社にとっては有利な制度です。


また、一般的に、社債を発行できる会社は

信用のある会社であり、社債を発行したと

いう事実は、会社の役職員の士気を向上さ

せることにもなります。


さらに、特定社債保証制度を利用した社債

発行は、多くの場合、保証の仲介をした銀

行がプレスリリースを行い、新聞にも掲載

されることから、社会的な信用が増すこと

にもなります。


このように、特定社債保証制度による社債

発行は、資金の調達だけでなく、自社の事

業の発展のメルクマールにもなることです

ので、ぜひ、多くの会社に利用していただ

きたいと思っています。

 

 

 

 

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効果のあるPDCA

世の中には、成功するための本やセミナー

や教材などであふれています。


しかし、それらがいつまでたってもなくな

らないのは、それらが実際には効き目がな

いということになってしまいます。


もちろん、それはコンサルタントにも当て

はまります。


現在の日本にはコンサルタントがあふれて

いますが、いつまで経ってもいなくなりま

せん。


これは、嘘のように思われるかもしれませ

んが、コンサルタントとして働いている私

自身の目標は、世の中にコンサルタント

不要とすることです。


とはいえ、力不足の私には、その目標を達

成するまでには、相当の時間がかかりそう

です。


話しを戻して、多くの方が本などの媒体で

成功するための方法を示しているのに、そ

のような本などがなくならない理由は何か

ということを、コンサルタントである私は

ずっと考えてきています。


その結論の一端を、岡村拓郎さんのご著書

「自分を劇的に成長させる!PDCAノー

ト」( http://amzn.to/2fKrqf6 )から感じ

ることができました。


岡村さんは、PDCAを実践して、自分自

身を改善する方法を示していますが、記述

の多くに、なぜPDCAを実践することが

できないのかということを割いています。


これを、私がひとことでまとめて述べると

不完全さを理由に行動をしないということ

です。


もう少しつっこんで述べれば、人は潜在意

識で変わることを恐れているために、不完

全さをよい理由に変化をさけているという

ことです。


このことについて、岡村さんは、次のよう

に書いています。


ひとつめは、イチロー選手は3千本のヒッ

トを打ったが、そのためには6千回アウト

になっている。


したがって、成功するためには、あらかじ

め失敗することを許容して行動しなければ

ならないということです。


これについては、「失敗は成功の母」とい

う格言があり、多くの方が理解されている

ものの、前述の通り、感情の面で変化を避

けたいと感じてしまうことが、変わること

を妨げているのでしょう。


ふたつめは、本質的なこと以外に時間をか

けないということです。


岡村さんは、仕事は100点を狙わずに、

70点~80点を目指すべきと述べておら

れます。


というのは、テストで言えば、100点を

目指すためには、20点~30点分は応用

問題やひっかけ問題が占めており、それを

解けるようにするには、相当の労力が必要

になって、非効率的だということです。


仕事の内容によっては、絶対に間違いが許

されないというものもありますが、ここで

岡田さんが述べている主旨は、100点を

目指す仕事ばかりをしていると、本当にや

らなければならない仕事を犠牲にすること

になりかねないということです。


仕事を俯瞰して取捨選択することが必要で

あるということです。


みっつめは、PDCAの回数を増やすとい

うことです。


岡村さんは、ノートを使って、毎日、PD

CAを行うことを薦めています。


これは比喩的な言い方ですが、PDCAを

毎月実施している人は、年1回しか実施し

ない人の12倍の速さで改善を見込むこと

ができます。


同様に、週1回実施する人は52倍、毎日

実施する人は365倍の速さになります。


これは、私がよく使う例えなのですが、仕

事を野球に例えた時、多くの方は、ヒット

を重ねることをせず、ホームランばかりを

打つことを考える。


確かにホームランを打てば1打で点が入り

ますが、ホームランを打てる確率は低く、

小刻みにヒットを重ねることの方が確実に

加点につながります。


しかも、ホームランを打つには、それなり

の体力を養ったり技術を身に付ける必要が

あるのに、ユニフォームを着たばかりのよ

うな人が、いきなりホームランを狙うとい

うことをする人もいます。


そして、真に点が入らない理由には目を向

けず、自分が点を取れない理由は対戦相手

が強いからだと主張して、自らを改善しよ

うということから避けてしまいます。


繰り返しになりますが、PDCAをなかな

か実践できない理由は、目の前の小さな事

がらを軽んじているということです。


すなわち、「大事の前の小事」ということ

です。


そして、先ほどは、「人は変わることを避

けようとする」ことが成功につながらない

理由としてあげましたが、小さなことを軽

んじるという驕りも同様に成功しない理由

になっていると思います。


よって、「変わる」「驕らない」というこ

とを決意するだけでも、自分自身や経営す

る会社は改善するものと、私は考えていま

す。

 

 

 

 

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利息は返すものではなく払うもの

中小企業診断士の安田順さんのご著書、

「社長のための『中小企業の決算書』読み

方・活かし方」( http://amzn.to/2kaErju )

を拝読しました。


内容としては、銀行職員は、なかなか本音

を融資先の経営者に話さない。


また、融資審査にあたって銀行職員は、一

般的な財務分析を行っていない。


そのため、融資を受けている会社は、銀行

の不意な方針転換に翻弄されやすい。


そこで、銀行の考え方を理解してそれに備

えておくことが大切だということです。


そして、この本には、私が銀行職員時代に

感じたことがたくさん盛り込まれていて、

共感することも多く、お薦めしたい書籍で

す。


今回は、そのなかから長期借入に関する考

え方について取り上げたいと思います。


安田さんは、銀行から融資を受けている会

社の経営者に対して、「銀行に(毎月)い

くら返済していますか?」と問うと、「元

金と利息を合わせて●●●円くらいです」

という答えが返ってくることが少なくない

と述べておられます。


これについて、安田さんは、前述のような

言い回しが決して誤っているわけではない

ものの、きちんと「『返済元金』は●●●

円、『支払利息』は●●●円」と回答すべ

きだと述べておられます。


すなわち、返済するものは融資元金であり、

支払利息は返済するものではなく支払うも

のであるということをきちんと認識するべ

きということです。


これは、私の経験ですが、かつて事業再生

をするために、銀行から債務免除、すなわ

ち、借入金の棒引きを受けた会社の経営者

から、「今回、借入金の返済の一部を免除

したと言われても、うちの会社はこれまで

借入した額の倍も支払ってきている」と、

ぽつりと言われたことがあります。


現在は、金利はかなり低いので、その水準

から考えるとイメージしにくいかもしれま

せんが、かつて、借入金の金利が8%程度

の時代は、長期借入金を返済すると、返済

が終わるまで、支払利息額は相当な額にな

りました。


前述の経営者の言った、倍というのは誇張

しすぎですが、例えば、1億円の融資を受

けて、金利が8%とすると、これを10か

年で返済するときの金利総額は約4千万円

になります。


もちろん、元金は返済する(貸借対称表の

負債の部が減少する)もので、利息は支払

う(損益計算書の支払利息・割引料が増加

する)ものということは、私が説明するま

でもなく、多くの方は理解すると思います。


でも、経営者の方の中には、支払利息は経

費とは考えていないという方もいるようで

す。


前述の経営者の方は、「債務免除といって

も、それに相当する程度の利息は銀行は受

けとっているのだから、銀行は損をしてい

ないはずだ」と主張したいのでしょう。


もちろん、銀行は慈善事業ではないので、

融資利息は正当なもうけなのですが、債務

免除を受けた会社の経営者としては、感情

的に、自分たちは銀行に迷惑をかけていな

いと思いたかったのだと思います。


話しを戻して、安田さんが述べたいことの

趣旨は、長期借入金の返済元金は相当額の

利益を得ることを目標として認識している

かどうかが、リスケジュール(融資の返済

条件の変更、実質的には、融資元金の返済

猶予)を受けなければならなくなるかどう

かの分かれ目になっているということです。


すなわち、長期借入金の返済元金と支払利

息相当額以上の利益(この利益には、減価

償却費を加算した金額を指します)を目標

として事業に臨んでいる会社は、確実に融

資額を減らすことができます。


一方、資金繰りが繰しくなったら、新たに

借入をして、それで以前に借りた融資を返

済すればよいと考えている経営者の経営す

る会社は、借金が膨らんで、いつかリスケ

ジュールをしてもらわなければならなくな

ってしまうということです。


「利益」と「現金」、「支払利息」と「返

済元本」は違うということを分かっている

方は多いと思いますが、その一方で、前述

のような誤った判断をしてしまう人は意外

と多いということです。


これは、私への戒めでもありますが、自分

はこのことは分かっていると思いつつ、実

は間違ったことをしてしまっていることも

あるので、慢心には注意すべきということ

を感じました。

 

 

 

 

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