鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

残業がなくならない本当の理由

経営コンサルタント、清水久三子さんのご

著書「外資系コンサル流『残業だらけ

職場』の劇的改善術」を拝読しました。


内容は、なぜ、職場に無駄があるのかとい

うことを説得力ある根拠をもって説明した

上で、その解決策を示しています。


その具体的な内容は本を読んでいただきた

いのですが、私の目をひいた点を挙げると

「働き方改革」が叫ばれているなかで、そ

れを実現するためのプロジェクトには疑問

感じるということを清水さんは述べておら

れます。


すなわち、「ノー残業プロジェクト」、

「業務スピード改善プロジェクト」などの

プロジェクトばかりが立ち上がり、結果と

して、やることが増えてしまっている。


時短を迫られるあまり、本来はやるべきこ

とまで便乗してやらなくなってしまう。


ゴールが不明確なままなので、いったん、

結果を出しても、経営者が納得せず、また

仕切り直しをしなければならなくなる。


結局「残業ゼロの徹底」などのスローガン

を唱えるだけになったり、残業をなくすた

めの努力を従業員個人に任せ、「定時帰宅

宣言」をさせるだけに終わる、ということ

を指摘されておられます。


要は、表面的なことばかり行われるので、

いつまでも本当の時短ができないというこ

とです。


このことについて、清水さんは解決策を示

しておられませんが、私は、大きく2つの

原因があると思います。


ひとつは、働き方改革だから、働く人の課

題であり、働く人「だけ」で解決できる、

または、働く人だけで解決できる課題であ

るということにされてしまっているからだ

と思います。


仮に、働く人だけで解決すべき課題であっ

たとしても、それに失敗したとき、経営者

には責任はないと考えることはおかしいで

しょう。


経営者は、表向きは働き方改革は重要課題

ということにしつつ、内心は他人事にして

いるという状態をあらためること抜きに、

真に働き方改革は実現しないでしょう。


ただ、経営者の人たちが、働き方改革につ

いて、臭い物に蓋をするような態度をとる

ことには、次のような理由があると考えて

います。


すなわち、従業員の方々の働く時間が短縮

することによって、生産高や売上高が減少

してしまうことを恐れているという面もあ

ると考えられます。


恐らく、多くの経営者の方は、勤務時間を

短くすることは賛同しても、それが生産高

や売上高を犠牲にする前提では賛同できな

いのでしょう。


私は、これが働き方改革がなかなか進みに

くい要因ではないかと思っています。


では、どうすればよいかというと、これは

私もコンサルタントのような立場だから言

えるのであろうと批判されることを前提で

述べると、思い切ってビジネスモデルを変

える必要があるということです。


早晩、日本では残業は原則禁止になる時代

に向かいつつあると思います。


そういった中で、大手企業では、従業員の

勤務時間を短縮するための設備投資を増や

しています。


これはIoTや人工知能の活用によって実

現性が高くなっています。


むしろ、このような設備投資を成功させる

かどうかが競争力の向上につながるといえ

るでしょう。


そうであれば、一日でも早く、従業員の勤

務時間が短くても利益を得られるビジネス

モデルを確立することが肝要です。


むしろ、いままでは、従業員ひとりあたり

の付加価値、すなわち労働生産性(=付加

価値額÷従業員数)は、実態としてあまり

意識されてこなかったと思います。


というのは、とにかく利益がでればいいと

いう前提で事業が進められ、その利益とは

従業員のサービス残業でもたらされていた

とすれば、経営者の功績はないに等しいと

いうことになるでしょう。


このように述べると建前を述べているよう

に思われますが、これまでは、労働法規が

遵守されているかどうかが、あまり厳格に

問われてこなかっただけというように私は

考えています。


働き方改革が提唱されているということを

もって、これからは、労働生産性の高いビ

ジネスモデルでなければ事業は続けられな

い時代になったということを、私たちは認

識しなければならないのだと思います。

 

 

 

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