鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

正攻法

今回も、多くの方があたりまえだと考えて

いるにもかかわらず、実際には実践されて

いない人も多いということについて述べ

たいと思います。


「会社の業績を上げるためには、まず、

社内の体制整備をしっかりと行い、足腰を

強くするところから着手すべき」という

ことは、多くの方に理解してもらえると

思います。


しかし、コンサルティングを依頼された

会社の経営者に、同様のことを述べると、

「そんなことにあまり時間を割かずに、

すぐに売上を上げられるようにして

欲しい」と言われることの方が多いと

感じています。


それは、そもそもコンサルティング

依頼する会社は、切羽詰まっている状態に

あるという事情もあるという面もあるから

でしょう。


分かりやすく述べれば、一発逆転を狙って

その方法を模索するために相談してくる

ということでしょう。


しかし、そのような会社、というよりも、

一発逆転を当てにする場合、これも多くの

方が分かるとおり、業績が回復することは

ほとんど見込むことができません。


詳細は割愛しますが、「方法」や「戦術」

などで勝負しようとする会社は、所詮、

「方法」や「戦術」だけの勝負であり、

顧客とその会社との間の良好な関係を構築

することはできず、仮に、売上を増やす

ことができたとしても、単発的なものに

終わってしまいやすいと言えます。


そこで、結論は、正攻法で経営に臨むべき

ということなのですが、ここで、正攻法を

進めというなら、経営コンサルタント

聞かなくてもわかるという反論が出てくる

でしょう。


確かに、正攻法で経営をしろというだけ

なら、専門家はいらないように思われ

ますが、これについては別の機会に述べる

こととし、これまで私が別の記事で述べて

来た、「何を売るか」ではなく「どう売る

か」というスキルは、正攻法でなければ

身に付かないということが、今回の記事の

結論です。


もうひとつ、老婆心で触れさせて頂くと、

「だれでも明日から簡単に…」などと

いった触れ込みのスキルやノウハウは、

眉唾物である可能性が高いと私は考えて

います。

 

 

 

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経理規定

人財定着コンサルタントの後藤功太さんの

ご著書「そのマネジメントでは新入社員は

スグに辞めてしまいます!」

( http://amzn.to/2vu5tEs )の中で、後藤

さんは、新入社員に定着してもらうための

しくみとして、「業務マニュアル」「OJ

Tプログラム」「人事評価制度」を作成

することが大切だと述べておられます。


そして、後藤さんから聴いたお話しでは、

それらのマニュアルなどは、売上に直接

つながらないと判断され、作成には消極

的な経営者が多いということでした。


マニュアルなどの作成に否定的な考えを

持たれてしまう原因のひとつは、「手順

書を作る」ことが目的と考えられてしまう

からだと思います。


しかし、後藤さんの意図は、新入社員が

仕事を学びやすいようにするために、

マニュアルが必要だと考えています。


マニュアルがなければ、新入社員は、

先輩や上司から口頭で仕事を教えて

もらうことになります。


しかし、口頭だけでは、聞く相手のタイ

ミングを見計らう必要があったり、人に

よって説明が異なったりするなど、仕事を

学ぼうとする側からは、あまりよい環境

とは言えません。


そこで、マニュアルがないことによって

新入社員の士気が下がってしまうことを

避けるためにマニュアルを作ろうという

ことが後藤さんの意図するところです。


ですから、マニュアルをつくるという

意味は、単に、不文律になっている

手順を文字にするという作業を指すの

ではなく、仕事がしやすい規則を考え

ましょうということです。


これは、仕事の手順だけでなく、会計に

ついてもあてはまります。


一般的に、会社には経理規定という規則を

作ることが望ましいといえます。


もちろん、それぞれの会社の経理規定は、

一般的な会計原則の範囲の中で規定される

ものですが、自社ではいくつかある経理

処理のうち、どれを選択することが適切か

ということをあらかじめ示すことで、経理

処理を円滑に行うことができるようになり

ます。


しかし、残念ながら、中小企業では経理

規定を作成している会社の割合は低いよう

です。


そもそも、あまり複雑な経理処理は不要と

いうこともあると思いますが、自社の経理

処理はどのように行うのかということは

あらかじめ定められておらず、税法に定め

られている方法に従って処理するという

ことが多いようです。


そして、このような状態で、何らかの

問題が生じるということもあまりないと

考えられているようです。


しかしながら、私がこれまで担当して

きた会社では、工夫の余地があると

感じることがあります。


例えば、実地棚卸を毎月実施している

会社がありましたが、それほど深い

意味はないようでした。


毎月、実地棚卸により、棚卸減耗を確定

させているなら実地棚卸をすることは

必要ですが、厳密な月次決算を行って

いないにもかかわらず、毎月、実地棚卸を

することは、棚卸のためのコストが見合わ

ないと言えるでしょう。


そこで、月次決算の厳密さについて検討し

月次決算は実地棚卸ではなく帳簿棚卸で

行うというように社内ルールを変更し、

コストを減らすことを提案することも

ありました。


また、回収できないでいる売掛金の管理に

ついても、よく、社内でもめることがあり

ます。


売掛金が回収できないときに、それを督促

するのは、営業部なのか、経理部なのか、

お互いに仕事を押し付け合うことがよく

起こります。


このようなときも、両方の部署と役員を

合わせて会議を開き、どちらの管理とする

のかを決めることで、その後の混乱は

少なくなります。


また、販売先への与信の権限、回収不能と

なった売掛金の償却の権限なども定めて

おくと、より機動的に仕事を進めることが

できるようになります。


以上、ふたつの例で規則の大切さを述べ

ましたが、規則類は、規則を文字にする

作業と捉えず、自社に適切な方法を明確に

して、効率的な仕事ができるようにする

ことだと捉えて、それらを作成することを

お薦めします。

 

 

 

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赤札作戦

私は、事業の改善をお手伝いするときに、

5Sを実施するよう顧問先にお薦めして

います。


しかし、この5Sはなかなかうまく実践

できません。


その要因として、「不要なものを捨てる

決断ができない」というものがあります。


この捨てるという決断を促す工夫として

赤札作戦という方法があります。


この赤札作戦とは、まず、不要なものを

捨てるにあたって、不要かどうかという

基準を作ります。


基準とは、「6か月間使っていない」、

「量がわずかである」といった基準です。


この基準があるかどうかは、判断に客観

性を持たせる意味で重要です。


次に、捨てるかどうかの判断の確認は、

そのものを管理している部署以外の

部署の人に行ってもらいます。


例えば、購買部の管理しているものは、

総務部の人が、財務部の管理している

ものは営業部の人が判断するという

ことです。


他部署の人が判断する理由は、管理担当

部署の人は、「これはいつか使うのでは

ないか」という迷いを抱きやすいからで、

他部署のひとに判断させることで、この

ような迷いを避けることができます。


その次に、不要と判断されたものに

「不用品」という文字を書いた札を貼り

付けます。


ただし、その札は、赤地の紙を使います。


すなわち、不用品には赤札を貼るという

ことです。


この、赤札を貼るということは、一見

すると、あまり意味がないように思われ

ますが、視覚的に赤い札が貼られていると

不用品であるという判断が行われたという

重みを感じることができます。


このことは、実際に不用品を捨てるときに

迷いをなくす効果があります。


と、ここまで、5Sについて説明して

来ましたが、実は、この赤札作戦には

副次的な効果があります。


それは、判断をするという訓練になると

いうことです。


「判断をする」=「結果に責任を負う」と

いうプレッシャーがあることから、一般の

従業員の方は、細かなことでも上司に

伺いを立てる傾向があります。


そのため、なかなか自立的な活動ができる

るようにならないということになって

しまいます。


この、赤札作戦は、赤札を貼るかどうか

という判断をするという経験を通して、

判断することに慣れるという効果があり

ます。


もちろん、結果として、赤札を貼った

不用品が、実は必要になることがあった

ということもあります。


しかし、判断をして不用品と決めたという

その判断が尊重されるべきで、後になって

必要になったという結果論で誤った判断を

したということの責任は問われるべきでは

ないと私は考えます。


もっとも避けなければならないことは、

結果責任を問われることを恐れて、やる

ともやらないともどちらの判断もせずに、

「不作為の作為」に至ることだと、私は

考えています。


もし、会社の中で、結果責任が問われると

いう雰囲気があった場合、自立的に活動

する従業員はいなくなってしまったり、

経営者のまわりはイエスマンだけになり、

社長が裸の王さまになってしまう可能性が

高くなってしまいます。


経営者の方は、従業員の方の習熟度を

高めるためにも、従業員の方に積極的に

判断をするという習慣をつけさせることを

お薦めします。

 

 

 

 

 

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中小企業の人材育成

よく、中小企業の経営者の方から「うちの

会社にはよい人材がいない」という嘆きを

きくことがあります。


これに対して、「人材を育てることも

経営者の役割だ」というように、単純に

結論付けるつもりはありません。


今回は、望ましい人材がなかなか集まら

ないと悩んでいる中小企業経営者の方に

対して、私が考えるところを述べたいと

思います。


ひとつは、従業員の個性を活かすという

ことです。


これは、人財育成家の沖本るり子さんの

ご著書「相手が“期待以上”に動いて

くれる!リーダーのコミュニケーションの

教科書」( http://amzn.to/2qd7JgV )に

書かれていた例ですが、かつて、沖本

さんが勤務していた会社の部下に、伝票の

入力が不正確で困っていた野田さんという

方がいました。


しかし、ある日、社長から、野田さんが

大口の契約をとってきたことは驚きだと

言われたそうです。


そこで、沖本さんは、野田さんに伝票を

正確に入力するようになってもらうこと

よりも、営業に専念してもらうことの

方が、会社全体としてメリットがあると

考え、野田さんの伝票入力は、伝票の

入力が得意な別の部下に代わってもらう

ようにしたそうです。


そうすることで、野田さんの営業成績は

さらに向上したそうです。


これは、多くの方にご理解いただける

人財活用法ですが、私が多くの会社を

見てきた中では、経営者の方が、自分の

得意分野(営業や技術など)だけで

部下を判断してしまいがちで、例えば

営業が得意な経営者は営業が不得手な

部下は、それだけで「優秀な人財でない」

と判断してしまうという例を見てきて

います。


これも多くの方が理解している通り、ひと

にはそれぞれ個性があり、その個性を

活かせる場所を提供することで、会社の

業績に貢献してもらうことができるように

なります。


もうひとつは、イチロー選手の才能を

見い出した故仰木監督の有名な例です。


前任者からは変更を指導されていた打撃

フォームを、本人の希望通りに打たせる

ことを仰木監督が認めた結果、イチロー

選手は210本の最多安打の成績を残し

ました。


プロ野球においては、よい成績を残す

ことが最大の目的であり、指導者が自分の

こだわりでそれをさまたげることは避ける

べきです。


と、ここまで人材育成について書いて

きましたが、「言うは易く行うは難し」

ということも分かります。


特に、コンサルタントがこのようなことを

いうと、経営者の方から「それなら自分で

やって見せろ」と言われがちです。


そこで、結論としては、経営者はそれだけ

難しい役割であり、事前に、そのような

マネジメントスキルを身に付けることが

大切だということです。

 

 

 

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継続性の原則

企業会計原則に継続性の原則というものが

あります。


企業会計原則とは、会社の会計の具体的な

原則を示すもので、この手続きに従って

会計の手続きが定められます。


この、企業会計原則のうちのひとつの

継続性の原則は、文字からも分かる通り、

会計の手続きは継続性がなければならない

ということを定めている原則です。


この、継続性の原則は、会計公準の中の

企業継続の公準が前提になっています。


会計公準とは、企業会計原則のさらに

上位の考え方です。


そして、企業継続の公準とは、会社は

半永久的に継続するという前提であると

いう考え方です。


そもそも、会社を立ち上げた方は、

余程のことがない限り、ずっと事業を

続けることを前提としています。


そうでなければ、従業員を終身雇用

することができません。


話しを戻すと、会社は半永久的に継続

するという前提であるために、会計の

手続きは、むやみに変更することは

避けなければならないという原則が、

継続性の原則です。


もうひとつ、継続性の原則の前提と

なっている背景には、会計の手続きは

会社の事業の状況に合ったものとする

というものがあります。


要は、会計の手続きは、凡そ規定されて

いるものの、必ずしもひとつではなく、

会社の事業に合わせて最も適切なものを

会社が選ぶということです。


そして、その会社がいったん選定した

手続きは、前述のとおり、むやみに変更

することは避けなければならないという

ことを、継続性の原則で定めています。


ところで、継続性の原則についてここで

取り上げた理由は、この原則が守られない

ことが多いと、私が感じているからです。


継続性の原則が破られる背景としては、

利益が減少しそうになったり、赤字に

なりそうになったりするときです。


そのようなときは、よくある例は、前期

まで適用していた減価償却を実施せず、

見かけ上の利益を増やすというような

ことが行われます。


その他にも、貸倒の見積もり方法を変更

したり、売上の認識のタイミングの基準を

変更したりします。


(なお、利益額が増加しそうな会社が、

納税額を減らそうという意図で、費用を

増やすために、継続性の原則を破ることも

希にあります)


私は、よく「銀行から信頼される決算書

とはどういう決算書ですか?」ときかれる

ことがあるのですが、これに対しては、

企業会計原則を守っている決算書です」

と回答しています。


今回は、継続性の原則を説明しましたが、

それは、企業会計原則の中で、最も守られ

ない原則だと感じているからです。


経営環境の厳しい時代にあっては、事業で

利益を継続して獲得していくことは決して

容易なことではありませんが、それは、

会計の原則を無視することで解決すると

いうことはいうまでもありません。


銀行からの信頼を得るためには、会計上の

規則を守ることは欠かせません。

 

 

 

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ころがし融資

銀行の専門用語で、ころがし融資という

ものがあります。


ころがし融資は、融資先が商品や材料を

購入するときの資金不足を補うために

行う融資なのですが、返済期限が到来

しても、新しい契約を結び直して、

従来の借入を返済させることなく、

そのまま新しい契約の融資に切り替える

融資のことです。


これは、融資を受けている側から見て、

返済期限が到来しても新しい融資に

切り替わるので、ずっと利息だけを払い

続け、元金の返済はしない状態となり

ます。


そのため、このような融資をころがし

融資といいます。


実は、これはややこしい面があります。


というのは、元金の返済がない融資を

ずっと続けている融資というのは、

外見上は、資金繰が悪化している会社に

対して、リスケをしている状態と変わりが

ないということになるからです。


そのため、銀行によっては、このころがし

融資は消極的に行っているところもある

ようです。


しかし、業績のよい会社には、ずっと

融資をしていたいとの思惑から、ころがし

融資をすることもあります。


融資を受ける側から見ても、返済期限が

到来するたびに返済しないですむという

ことから、ころがし融資は便利な面が

あります。


そこで、ころがし融資を受けられるように

するための方法を説明します。


ひとつは、よい業績を維持しながら、

短期借入を期限までに返済することを

繰り返していきます。


当然、返済する前に、返済後の反復借入を

申し込み、その承認を得ておきます。


このようなことを繰り返して実績を積む

ことによって、タイミングを見計らって

ころがし融資を打診する方法です。


もうひとつは、融資専用の当座貸越契約を

結ぶ方法があります。


これは、いわゆる「融資枠」の契約で、

信用保証協会の保証条件で契約することが

できます。


(ご参考→ https://goo.gl/cfwAfX


(ただし、返済方法を「随時弁済」とする

契約の場合のみ、前述のようなころがし

融資と同じ融資を受けることができます)


ある面で、ころがし融資を受けることが

できる会社は、銀行からの評価も高いと

いうことでもあり、このような会社を

目指すということをお薦めしたいと

思います。

 

 

 

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きめ細やかな対応

「顧客からの支持を得るには、きめ細や

かな対応が大切」ということは、多くの

方がお話しされています。


しかし、具体的に何をするのかという

ことについては、あまり具体例は聞き

ませんし、さらに、具体的に実践して

いる会社の割合は低いのではないかと

思います。


ひとつの例として、弁当や総菜を販売

しているオリジン東秀を挙げたいと

思います。


同社では、弁当を販売する、オリジン

弁当のほかに、働く主婦を標的とした

キッチンオリジン、イートインの

スペースを設けた、Origin、

中華料理を提供する、中華東秀など、

8種類の店を出店しています。


(参考→ https://goo.gl/RNLzce


単に、「弁当・総菜」を販売するだけ

なら、8種類の店舗を作る必要はない

でしょう。


顧客のニーズというのは、弁当・総菜

そのものよりも、それらがどういう

方法で提供されるかという面の重要性が

高まって来ているということです。


そして、それらに応える方法が、正に

きめ細やかな対応方法ということに

なるでしょう。


ここでは、きめ細やかな対応の例として、

オリジン東秀の店舗を挙げましたが、

その他に、ワントゥワンマーケティング

CTI(コンピューターテレフォニー

インテグレーション)、CRM(カスタ

マーリレーションシップマネジメント)

などがあります。


これらは、情報技術の進展によって実践

できるようになりましたが、さらには、

最近は少ない投資で実現できるので、

必ずしも大企業だけが実践できるもの

とはならなくなっています。


また、中小企業は、必ずしも情報技術を

駆使する必要はありません。


いわゆる、小回りの利く販売方法を実践

することもできます。


そして、それを実現するには、従業員に

スキルを習得してもらうための期間や

費用が必要になります。


ただ、冒頭に述べた通り、起業するときに

多くの会社は「何を売る(製造する)」と

いうことは決めていても、「どうやって

売る(顧客を創る)」というところまでは

決めていない会社の割合は高いと感じて

います。


いまは、よい商品・よい製品が販売され

ることは当たり前の時代であり、競争に

勝にはどう売るかということで決まる

訳ですが、実は、きめ細やかな対応こそ

口で言うほど易しいことではなさそう

です。

 

 

 

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