鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

逆の公私混同

今回は、公私混同を、一般に言われている

観点とは別の観点から述べてみたいと

思います。


改めて述べるまでもなく、公私混同とは、

公のこと(仕事のこと)と、私のことを

区別しないということですが、多くの

場合、私的なことに公のことを利用する

ことを指して否定的に使われます。


確かに、私がこれまで見て来た会社の

中には、前述の言葉どおり、会社経営者の

立場を利用して、私的なことまで会社の

ものを使っている例を見てきています。


例えば、会社の名義の自動車を私的

用事に使うということはその例のひとつ

でしょう。


ただ、この程度であれば、それほど大きな

問題にはならないとは思いますが、社長が

勤務時間中に部下を使って私的な用件を

依頼するということをすると、従業員は

士気を下げてしまったり、従業員自身も

勤務時間中に私的なことをしても許される

と考えてしまうようになったりと、悪い

影響が現れてしまいます。


一方、公私混同には逆の公私混同もある

と私は考えています。


逆の公私混同とは、例えば、会社の資金が

足りなくなり、無利息で社長が会社に

資金を貸し付けるというようなことです。


さらに、もう少し細かいことを書けば、

社長が無償で会社が受けている融資の

保証人になったり、自分の財産を担保と

して提供するということも、公私混同と

言えます。


しかし、このように書くと、「創業して

間もない時期や、会社の規模が小さい

ときは、社長の個人の財産を会社につぎ

こんだり、融資の保証人になることは

避けがたいことではないか」と考える方が

多いでしょう。


私も、このようなことは実態として仕方の

ないことだと思っています。


とはいえ、前述の、公と私を区別しない

という公私混同の意味からすれば、社長が

無償で会社の保証人になることは、公私

混同のうちのひとつと言えます。


ところで、事業を始めようとする方の

多くが、新たに会社を設立していますが、

その理由は何でしょうか?


ひとつだけではないですが、例として

あげれば、「信用が得られる」という

ものがあるでしょう。


なぜ信用が得られるのかと言えば、会社

組織で事業を行っていれば、それは、

きちんとした体制が整っていると受け止め

られるからでしょう。


その一方で、前述のような、会社に社長が

自分の財産をつぎこんでいたとしたら、

それは、会社をつくった意味は少なく

なってしまうと思っています。


もちろん、現実的には、最初から理想的な

状況になることは難しいということも理解

できます。


しかし、いつまでもそのような状況から

抜け出さないでいる会社も少なくない

でしょう。


最近は、銀行も、融資をするにあたって

必ずしも社長の保証を求めなくなって

います。


「自社は信用ある会社を目指す」という

方は、まず、銀行から融資を受けるに

あたって、社長が保証人にならなくても

よいという状況を目指してみてはいかが

でしょうか?

 

 

 

 

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偶発債務

約1年前の話ですが、鴻海がシャープを

買収するつめの段階で、偶発債務が話題に

なりました。


両社の個別のことについては、私は詳細を

把握していないのですが、一般論として、

買収しようとしている会社の偶発債務が

直前になって問題になるということは

不自然に感じます。


偶発債務は、どんな会社にもあるもの

なので、シャープだけがあれほど騒がれる

というのは、なぜなのかと思いました。


ただ、偶発債務についてきいたことがない

人にとっては、「シャープに何か新たな

問題が起きたのか」という印象を持って

しまった方もいらっしゃると思いますので

今回は、一般的な偶発債務について簡単に

説明したいと思います。


中小企業でポピュラーな偶発債務の例は、

商業手形割引です。


商業手形割引は、製品や商品の販売代金

として受け取った約束手形、または、

為替手形(これらは、貸借対照表の勘定

科目では、受取手形に計上されます)を

銀行に売却し、それらの手形の支払期日

までの利息に相当する割引料を差し引いた

金額を受け取るという資金調達方法です。


例えば、100万円の受取手形を銀行に

割引してもらい、その時の割引料が

5万円であったとすると、仕訳は次の

ようになります。


(借方)

当座預金 95万円

割引料 5万円


(貸方)

受取手形 100万円


すなわち、資産である受取手形100

万円が減少し、そのかわり、資産の

当座預金95万円が増加し、費用の

5万円が発生するということです。


ところで、先ほど、会社が銀行に手形を

売却すると書きました。


商業手形割引は、機能面としては資金

調達なのですが、法律上は売買として

扱われています。


しかし、商業手形割引は、一般の商品や

製品の売買と同様に扱うことはでき

ません。


なぜなら、万一、売却した手形が支払

期日になって不渡りになったとき、

手形を買い取った銀行は、手形を売り

渡した会社に対して、それを買い戻す

という条件があるからです。


この条件の根拠は、手形訴求権と、

買戻し請求権のふたつがあるのですが、

ここではその説明は割愛します。


要は、受取手形を銀行に売却したと

しても、その手形が不渡りになると

いうリスクは、売り渡した会社からは

離れていないということです。


このリスクが偶発債務です。


そこで、会計上の規則では、決算日

時点で、割引した手形の金額を、

貸借対照表の欄外に注記することに

なっています。


これは銀行によって解釈が異なるの

ですが、商業手形割引は融資として考え、

財務分析を行うときは、商業手形割引

額を負債の額に加えて行っている場合も

あります。


一方で、会社の貸借対照表には、割引を

した手形の金額が負債の欄に計上されて

いないことから、経営者の方の中には、

商業手形割引を負債ではないと考えて

いる方も多いようです。


このように書くと、「それなら、商業

手形割引を負債として計上すればいい

のではないか」と考える方もいること

でしょう。


かつては、そのように計上する考え方も

あり、その方法で貸借対照表を作成して

いる会社もありました。


ただ、その理由については割愛しますが、

金融商品会計に関する実務指針」などに

よって、商業手形割引額は、貸借対照表

欄外に注記することとされています。


この点についてはややこしいのですが、

偶発債務という考え方が、銀行と、

中小企業経営者の間での認識の差が

起きる原因のひとつになっていると

いうことについて挙げておきたいと

思います。

 

 

 

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本物の決算書と真実の決算書

私がこれまでお会いしてきた方で、少な

からぬ数の会社経営者の方と、一部の

税理士の方の中に、本物の決算書と真実の

決算書の違いが分からないという方に

お会いしてきていますので、今回は、

両者の違いについて説明します。


ところで、本物と真実は、ほぼ同じ意味

ですが、少し違いがあります。


ここでいう本物とは、にせものではない

という意味で、真実とはいつわりがない

という意味です。


銀行の融資手続きに関しては、よく、

税務署の受付印を押印したものを提出

するように言われますが、これが、

本物の決算書です。


決算書に関する本物とは、税務署に提出

した(税務署の受付印のある)決算書の

ことと言ってもよいのですが、厳密には

株主総会で承認(会社法第438条等)を

得た決算書のことです。


すなわち、本物の決算書とは、株主総会

お墨付きを得ているという点でにせもの

ではないということを指します。


ここで、少しややこしいのですが、株主

総会の承認を得ているという点で、本物の

決算書はにせものではないのですが、

だからといって、本物の決算書には、

いつわりがないということには

なりません。


いつわりがないということはどういうこと

かというと、簡単な例をあげて説明して

みます。


例えば、毎年、約500万円の減価償却

行っていた会社があったとします。


しかし、当期の業績が芳しくないため、

当期は減価償却を行わなかったとします。


その結果、利益が300万円となり

ました。


これを株主総会に諮り、承認を得たと

します。


このことによって、300万円の利益を

計上した決算書は、本物の決算書となり

ます。


しかし、この、300万円の利益を計上

した会社の決算書は、いつわりがないと

いうことがいえるでしょうか?


本来なら、例年通り500万円の減価

償却を行い、200万円の赤字を計上した

決算書が、いつわりのない決算書と言える

でしょう。


これが、真実の決算書です。


ただ、ここでいう真実の決算書とは、

会社がいわゆる二重帳簿を作成していて

2つの決算書があり、そのうちのひとつを

指すということではありません。


いつわりなく決算書を作成したとすれば

こうなったであろうという架空の決算書

のことです。


では、ここで何が問題になってくるのか

というと、前述のような例では、減価

償却を行わないことで利益を計上した

会社の経営者は、自社の事業は黒字で

あると考えてしまうことです。


一方、銀行は、たとえ本物の決算書の

提出を受けたとしても、減価償却

十分でなければ、銀行の内部で本物の

決算書を修正して真実の決算書を作成

しています。


よって、銀行はその会社を赤字の会社

であると判断します。


そして、社長と銀行の間で認識が

異なると、融資の申し込みをしたときに

両者で話しが嚙み合わなくなります。


そのようになったときに、社長は

「銀行が貸し渋りをしている」と感じて

しまうかもしれません。


会社が利益を計上し、それを株主総会

承認したということまでは事実ですが、

だからといって、その会社は本当に黒字

であるかどうかという観点から見れば、

いつわりがないとは言えないでしょう。


そして、最も避けなければならない

ことは、表面的に利益を計上することで

安心してしまい、真に利益をえるための

活動に目を向けなくなってしまうこと

であると私は考えています。

 

 

 

 

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用件を聞くのは野暮

西武ライオンズの元監督の伊原春樹さんが

読売ジャイアンツのヘッドコーチを務めて

いたときのエピソードを書いていました。


すなわち「(代走のスペシャリストで

ある)鈴木尚広選手を原監督が代走に

出そうとしたところ、鈴木選手は準備は

していたものの、たまたま何らかの事情で

もたもたしてしまった。


そこで、原監督は、別の選手を代走に送り

出した。


試合が終わったあと、原監督は鈴木選手に

もたもたしていたことを叱責した」という

ものです。


もちろん、原監督は鈴木選手に期待して

いたからこそ叱責していたわけですが、

代走や代打要員という選手は、監督の

立場に立って、自分の出番が来たらすぐに

グラウンドに立てるようにしていなければ

ならないということを示すエピソードで

あると思います。


私も、10年間、銀行の渉外をしていた

ので、このタイミングが重要であるという

ことはよくわかります。


お取引先の社長から急に電話がかかって

きて、「いますぐに会社に来い」と

言われたときは、99%は社長が私に

手柄を立てさせようというときでした。


手柄というのは、長年こちらから売り

込んできた契約に応じてくれるとか、

社長の知人を紹介してくれるといった

ことです。


忙しいからといって、社長からの電話に

もし「どういったご用件ですか?」と

きいたりしたら、「そういうのなら

来なくていい」と怒って電話を切られて

しまいます。


だから、私は忙しくても、社長からの

電話には用件もきかずに「わかりました。

すぐに向かいます」とだけ答え、社長の

もとに駆け込んでいったものです。


用件を聞くのは野暮というものだという

ことを経験しました。


このようなことは、逆のことも経験して

います。


例えば、かつて、私がパソコンを買い

かえる時、このWIFIも契約すれば、

パソコンを5万円値引きするという提案を

受けたときは、積極的に必要とは思って

いなかったWIFIも契約しました。


後になってみれば、WIFIを利用して

便利さを感じたので、ちょうどよい

タイミングで契約できたと感じています。


私のような営業経験が少ないものでも

このようなことを感じている訳ですから、

今回の記事は多くの方が分かっている

ような内容だと思います。


ただ、現実には、タイミングを狙った

営業活動を実践している人は残念ながら

少数だと感じています。


私が顧問先の営業力を高めようとする

ときは、無理に押し込み販売をする

よりも、タイミングを逃さないように

することを意識しようということを

提案しています。


この機微を感じて実践するということは、

いま話題のAIなどにはとってかわる

ことができないものであり、だからこそ

血の通う人が実践すべきことだと私は

考えています。

 

 

 

 

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不況だからコンサルタントは使わない?

かつて、私がフリーランスになりたての

ころ、中小企業診断士の資格を持つ、

会社勤務の知人から、次のようなことを

言われたことがあります。


すなわち、「現在は不況だから、コンサル

タントを利用しようとする中小企業は

少ないだろう」というものです。


今回の記事の本旨とは関係がありま

せんが、そのような考え方から、彼は、

フリーランスにはならずに、会社に勤務

し続けていたようでした。


話しを戻して、その考え方が正しいか

どうかは私も判断はつきませんが、

確かに、会社の業況がよくないときに、

もしコンサルタントとの契約があったと

したら、経費を節約しようという観点から

契約を解除することになる可能性は高い

かもしれません。


ただし、私がフリーランスになってから

気づいたことですが、業績のよい会社は

コンサルタントを積極的に活用している

ということです。


しかし、これは、にわとりとたまごの

ような関係かもしれません。


というのは、業績がよいからコンサル

タントを利用できるのかもしれません。


ただ、私は、前述のような会社は、

コンサルタントを雇っているから

業績がよいというよりも、コンサル

タントの利用の仕方が上手だから業績も

よいのではないかと思っています。


逆に、コンサルタントを雇っているにも

かかわらず、業績が悪くなった会社は、

コンサルタントの利用の仕方が悪いか

よいコンサルタントを見分ける目が

なかったからではないかと思います。


というのも、私は過去に、コンサル

タントと名乗りながら、実は、会社の

経営者の腰巾着的な存在でしかなく、

会社の発展のために尽くしていないと

いう人を見てきています。


そして、そういう人を近づける経営者の

方も、脇が甘いのではないかと考える

ことができます。


ここまでの内容からは、「この記事を

書いている六角がコンサルタントだから、

コンサルタントをを利用する方が会社の

利益になるという、手前みそ的なことを

書いている」と受け止められてしまう

かもしれません。


しかし、私は、今回はコンサルタント

例に書きましたが、能力の高い経営者は

何に支出すべきか、どういう人とつき

あうべきかという判断にたけていると

思っています。


コンサルタントに限らず、どういう

人材を雇うべきか、どういうことに

経費をかけるべきか、どういう事業に

進出すべきかという判断が上手だから、

結果として業績がよくなるのだろうと

思います。


冒頭の、不景気だからコンサルタント

との契約を打ち切る会社があると

すれば、それは、その会社にとって

コンサルタントが不要なのではなく、

その会社はコンサルタントを活用

できるだけの余地が少なかったから

だと私は考えます。


最後に、公平さを保つために付言すると、

原則として、コンサルタントは、フィー

以上に顧問先の会社の利益を増加させる

だけの能力があることを保証しなければ

なりません。


前述の記事は、そのような前提で書いて

います。


能力がないのに顧問契約を結ぶので

あれば、そのコンサルタントは顧問先

から見て、無駄な費用を支出させて

いるだけになります。

 

 

 

 

 

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3つの融資方針

先月、建設会社さまの融資申請のご支援の

ときに私がつかった資料について、シェア

する旨をブログなどでお知らせしたところ

意外と多くの方から、資料の送付の申し

込みがありました。


融資申請のご支援に関心が高い方が多いと

いうことについて、あらためて実感した

ところです。


また、私は、定期的に融資勉強会を開いて

いるのですが、そちらでも、融資の上手な

申請方法が分からないという方が多いと

いうことを実感しています。


(融資勉強会の詳細については、こちらを

ご参照ください。

https://goo.gl/Arsljj


当然のことながら、私はかつて銀行勤務

時に融資審査を担当していたこともあり、

融資の審査過程は分かるわけですが、

経験のない方から見て、それはまだまだ

ブラックボックスなのだと、勉強会を

開くたびに感じます。


今回は、融資審査に関する誤解のひとつに

ついて述べたいと思います。


結論を簡単に述べると、銀行から見た

融資先は大きく3つに分けることが

できます。


ひとつめは、積極的に融資をしたい会社、

ふたつめは、融資するにはよく吟味しな

ければならない会社、みっつめは、吟味

するまでもなく、融資はしたくない会社

です。


このように書くと、特に真新しいこと

ではないように感じると思いますが、

問題は、もしかしたら融資を得られる

かもしれない会社と、融資はまったく

受け付けられない会社を見極めることが

必要だということです。


融資に悩んでいる会社は、銀行が積極

方針をとる会社以外の会社です。


ですから、よく吟味して融資を決める

会社と、融資はしたくな会社が悩む

ということです。


しかし、士業の方から顧問先で融資に

悩んでいる方のご紹介をいただくとき、

そもそも、銀行が融資をしたがらない

という会社が約半分をしめます。


これは当然とは言えなくもないですが、

士業の方としても、そこを峻別できるか

どうかで、顧問先からの評価がかなり

かわると思います。


要は、融資を受けられる見込みがない

ような状態になってから、融資の相談に

のることは意味がないし、融資を受け

られなくなるような状態になる前に、

いろいろな助言をすることの方が、

士業として評価されると思います。


では、銀行が融資したがらない会社とは

どういう会社かといえば、おおよそ、

次の通りです。


(1)債務超過になっている。


(2)過去に粉飾したことなどがある。


(3)業績がよくない上に、経営者自身に

改善策を説明できる能力がない。


(4)反社会的な組織とのつながりがある

疑いがある。

 

現実には、これらのような会社について

融資を受けられる方法はないかという

ご相談を受けることは少なくありません。


100%ないということはありませんが、

そのような案は、経営者側に受入れられ

ないものが多いというものになります。


ですから、結果として、融資は受けられ

ないということになってしまいます。


ただ、そのような会社の弱みにつけこみ、

違法な方法で融資をあっせんする人が

いるということも知っていますが、そこ

まで足を踏み入れてしまうと、ほぼ、もう

会社は回復できなくなってしまうでしょう。


銀行が融資をしたがらない会社の多くは、

経営者の方が独善的であったり、外部の

専門家には耳を貸さないために、その

ような状況に陥っているということが

多いでしょう。


ですから、そのような会社については、

あまり深いところまでお付き合いする

ことは避けることが賢明であり、早い

段階でそれを見極めることが専門家と

しては得策だと私は考えています。

 

 

 

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コンサルタントは顧問先の味方か?

今回は、コンサルタントとその顧問先との

関係について私が考えるところについて

述べたいと思います。


それを説明するために、ひとつの例を挙げ

たいと思います。


日本放送協会の前会長が、かつて、「経営

委員は会長の味方をしてくれない」という

ことを話ししていたそうです。

(ご参考→ https://goo.gl/kZbrdY


日本放送協会の会長は、一般の会社で

言えば、社長にあたり、経営委員は、

取締役に相当します。


ただし、経営委員は、直接、協会の運営

にはかかわることはないので、一般の

会社の取締役よりは、やや、監査役に近い

立場にあると言えます。


前会長が前述のようなことをお話しした

のは、前会長の「失言」が続き、それが

批判されていた時期でした。


前会長は、ご自身の発言について誤解され

ていると考えていたようであり、そこで、

経営委員にも前会長を擁護することを期待

していたのでしょう。


これに対して、経営委員は、次のように

前会長に対して反論しました。


すなわち、「自分を取り巻くガバナンスの

仕組みが厳格であればあるほど、その人

たちに信任されているということの重みは

大きいのです。


ある程度しっかりとしたガバナンスが

会長を信任しているということになる

のです。


それによって会長の権威は非常に高まる

わけです。


ガバナンスとはそういうものなのです。


自分がやりたいことにケチをつけている、

あるいはチェックしようとしていると

いうように理解してはいけないのです」

というものです。


私は、これを聞いたとき、この経営委員の

役割は、コンサルタントの役割に近いと

感じました。


もちろん、前述の経営委員の発言には、

「ガバナンス」という言葉が使われて

おり、それは、法律的には、社長以外の

取締役や、監査役が担うことになって

いますが、いわゆるオーナー企業では、

取締役や監査役は法律的な関係よりも

人的なつながりが強く、実態としては、

あまり機能しているとは言えない

でしょう。


ですから、そこにコンサルタント

果たすべき、役割があると思っています。


ここで、前述の前会長の意味する「味方」

の意味が、経営委員とは異なっていると

いうことに注目すべきだと思います。


前会長は、ピンチになっている自分を

擁護することが味方になることだと

考えているのでしょう。


一方で、経営委員は、ガバナンス、

すなわち、チェック機能が厳格であれば

あるほど、会長が信任されているという

ことになるとお話しされています。


これを分かりやすく言いかえれば、

前会長(または社長)が裸の王さまに

ならないようにすることが、前会長

(または社長)にとっての味方になる

ということです。


ところで、ここで、「それでは、

コンサルタントは、いつも正しいことを

言ってくれるのか」という疑問を持つ

方もいらっしゃるでしょう。


これは、100%保証できません。


しかし、コンサルタントは、ひとつの

会社に深くかかわっていない一方で、

多くの会社に広くかかわっています。


だからこそ、客観的に、よい会社や

悪い会社の例をたくさん知ることが

できます。


コンサルタントも完全ではありま

せんが、コンサルタントとして、

ひとつの事業に専念している顧問先が

単独ではなかなか分からないことに

ついて、価値ある助言をできるように

していることに、責任を持っている

立場にあります。


そういった意味では、もし、コンサル

タントが、役立つことを助言できない

とすれば、それは、無能なコンサル

タントと言えるでしょう。


そして、コンサルタントが最も避けな

ければならないことは、社長の太鼓

持ちになり、社長を裸の王さまにして

しまうことです。


これは、社長の機嫌は良くなりますが、

決して会社をよくすることにはなりま

せん。


そして、コンサルタントも自らを無能

であることを証明してしまいます。


私は、もし、顧問先から誤った意味

での「味方」になって欲しいと依頼を

受けた場合は、それをいさめるように

しています。


それでも、顧問先が考え方を変えない

場合は、私からコンサルティング

辞することにしています。


悲しいことですが、そうしなければ、

コンサルタントとして自らを否定する

ことになってしまいます。

 

 

 

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