今回は、コンサルタントとその顧問先との
関係について私が考えるところについて
述べたいと思います。
それを説明するために、ひとつの例を挙げ
たいと思います。
日本放送協会の前会長が、かつて、「経営
委員は会長の味方をしてくれない」という
ことを話ししていたそうです。
(ご参考→ https://goo.gl/kZbrdY )
日本放送協会の会長は、一般の会社で
言えば、社長にあたり、経営委員は、
取締役に相当します。
ただし、経営委員は、直接、協会の運営
にはかかわることはないので、一般の
会社の取締役よりは、やや、監査役に近い
立場にあると言えます。
前会長が前述のようなことをお話しした
のは、前会長の「失言」が続き、それが
批判されていた時期でした。
前会長は、ご自身の発言について誤解され
ていると考えていたようであり、そこで、
経営委員にも前会長を擁護することを期待
していたのでしょう。
これに対して、経営委員は、次のように
前会長に対して反論しました。
すなわち、「自分を取り巻くガバナンスの
仕組みが厳格であればあるほど、その人
たちに信任されているということの重みは
大きいのです。
ある程度しっかりとしたガバナンスが
会長を信任しているということになる
のです。
それによって会長の権威は非常に高まる
わけです。
ガバナンスとはそういうものなのです。
自分がやりたいことにケチをつけている、
あるいはチェックしようとしていると
いうように理解してはいけないのです」
というものです。
私は、これを聞いたとき、この経営委員の
役割は、コンサルタントの役割に近いと
感じました。
もちろん、前述の経営委員の発言には、
「ガバナンス」という言葉が使われて
おり、それは、法律的には、社長以外の
取締役や、監査役が担うことになって
いますが、いわゆるオーナー企業では、
取締役や監査役は法律的な関係よりも
人的なつながりが強く、実態としては、
あまり機能しているとは言えない
でしょう。
ですから、そこにコンサルタントが
果たすべき、役割があると思っています。
ここで、前述の前会長の意味する「味方」
の意味が、経営委員とは異なっていると
いうことに注目すべきだと思います。
前会長は、ピンチになっている自分を
擁護することが味方になることだと
考えているのでしょう。
一方で、経営委員は、ガバナンス、
すなわち、チェック機能が厳格であれば
あるほど、会長が信任されているという
ことになるとお話しされています。
これを分かりやすく言いかえれば、
前会長(または社長)が裸の王さまに
ならないようにすることが、前会長
(または社長)にとっての味方になる
ということです。
ところで、ここで、「それでは、
コンサルタントは、いつも正しいことを
言ってくれるのか」という疑問を持つ
方もいらっしゃるでしょう。
これは、100%保証できません。
しかし、コンサルタントは、ひとつの
会社に深くかかわっていない一方で、
多くの会社に広くかかわっています。
だからこそ、客観的に、よい会社や
悪い会社の例をたくさん知ることが
できます。
コンサルタントも完全ではありま
せんが、コンサルタントとして、
ひとつの事業に専念している顧問先が
単独ではなかなか分からないことに
ついて、価値ある助言をできるように
していることに、責任を持っている
立場にあります。
そういった意味では、もし、コンサル
タントが、役立つことを助言できない
とすれば、それは、無能なコンサル
タントと言えるでしょう。
そして、コンサルタントが最も避けな
ければならないことは、社長の太鼓
持ちになり、社長を裸の王さまにして
しまうことです。
これは、社長の機嫌は良くなりますが、
決して会社をよくすることにはなりま
せん。
そして、コンサルタントも自らを無能
であることを証明してしまいます。
私は、もし、顧問先から誤った意味
での「味方」になって欲しいと依頼を
受けた場合は、それをいさめるように
しています。
それでも、顧問先が考え方を変えない
場合は、私からコンサルティングを
辞することにしています。
悲しいことですが、そうしなければ、
コンサルタントとして自らを否定する
ことになってしまいます。