[要旨]
経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、部下の方たちの気持ちをまとめるには、社長に対する不満や要望を聞く機会をつくるとよいそうです。そうすることで、部下の方たちの当事者意識を高めることができ、自発的に活動するようになるそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、厳しい経営環境にあっても事業を継続している会社は、社長の想いを社員に伝えたうえで、一緒に理念を考えてもらった理念があり、そのことによって、社員たちは理念に共感し、能動的な活動ができるようになるということを説明しました。
これに続いて、板坂さんは、社長は部下の不満を受け止めることが大切だということについて述べておられます。「社員の気持ちをまとめるには、遠い先の目標を掲げることも大切だが、荒治療が効くこともある。目先に見える目標を作り、それを阻む共通の敵を設定することで、全員の目線が揃い、一体感が増していくのだ。中小零細弱小家業の社長さんに対して、私は本気の無礼講の場を勧めている。社員旅行の夜や、忘年会の、『今日は無礼講で言い合おう』ではなく、真っ昼間、お酒も入れず、社員が社長さんを“共通の敵”として扱うミーティングの場を設けるのだ。
とはいえ、社員も社長さんも、なかなか口火を切りにくい。そこで、私のようなコンサルタントが入り、場をセッティングする。『今日は社長の悪口をいくら言ってもええ。私も社長と長時間、いろんな話をしてきたけど、正直、つまらんわ』と切り出して、『こんな社長を吊るし上げる会議、この先やるかやらんか言うたら、多分、やらん。今日しかないと思うけ、みんな思っていることを吐き出してみて』と、口火を切る。すると、口の重かった社員たちも、日頃の不満、要望、伝えたかったことを、バンバン話し始める。
社長さんにしてみれば、味方のはずの社員から吊し上げにされる、きつい時間の始まりだ。日頃、『僕はそんなに社員には嫌われていないと思います』と言っている社長さんほど、受けるダメージはでかい。しかし、社長さんを仮想敵にしたミーティングを終えると、社員はみんなスッキリした顔になる。そこで、『あんたらが責めに責めた社長をアホ社長のまま放っとくんか?』、『どうするんや?』と投げかけると、そこから会社を変えるための前向きなミーティングへと変わっていく。体育会系のノリが苦手な人も、いざやってみると、雨降って地固まることを実感してくれる」(185ページ)
私は、組織を変えるためには、必ずしも、「社長を吊し上げる会議」を開く必要はないと考えています。必要なことは、部下の方たちが、自分の意見も事業活動に反映されるということを実感し、当事者意識を高めてもらうことです。その方法の一つは、「社長をつるし上げる会議」だと思いますが、それ以外にも、QCサークルや5S活動も、時間はかかるかもしれないですが、部下の方たちの当事者意識を高める方法だと思います。
そして、もうひとつのポイントは、部下の方たちの当事者意識が高くなったとき、社長はそれを受け止めなくてはならないということです。これを言い換えると、社長は口出しできることが減ってしまうということです。もし、社長自身が「エースで4番」でいたいという気持ちを持っていると、その状況に耐えることは、あまり簡単なことではないようです。しかし、そこで「黒子」役でに徹することができるかどうかが、経営者の資質を高めることができるかどうかの分岐点なのだと思います。
2024/6/1 No.2726