鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

身語意

[要旨]

これからは、経営環境の先行きが不透明な時代なので、過去の経験に頼らず、新たな行動をすることが大切になっています。


[本文]

岡山県倉敷市にある真言宗の寺院、高蔵寺の住職の天野高雄さんが、先日、配信したメールマガジンに、「身語意」について解説されておられました。「弘法大師の教えに、『身語意』というものがあり、身(おこない)・語(ことば)・意(こころもち)の3つを、高いレベルでひとつにすることが、成仏への最短距離であると説いておられます。この『身・語・意』の文字の順序には意味があり、『おこない』の後に『ことば』があります。そして、『こころもち』の前に『ことば』があります。

すなわち、『ことば』は経験(おこない)がなければ成り立たず、思ったこと(こころもち)の後に『ことば』は成り立ちません。これは、経験は嘘をつかないということであり、逆に、いくら心に念じても、やっていなければ虚言となるということです」経営の神さま、松下幸之助さんも、「百聞百見は一験に如かず」という名言を残しておられますが、天野さんの示唆も、これに通じるものでしょう。

そして、現在は、VUCA(不安定、不確定、複雑、不明確)の時代と言われている時代だからこそ、頭だけで考えず、実際に行動してみて、何が正しいのかを1日でも早く把握しようとする姿勢が大切になるでしょう。そして、ますます、過去の成功事例が参考にならなくなってきているので、どんどん新しいことをする会社こそ、たくさんのチャンスをつかむものと思います。

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学ぶ必要のない人ほど学ぼうとする

[要旨]

コンサルティングを受ける必要性の高い会社ほど、コンサルティングを受けようとせず、逆に、コンサルティングを受ける必要のない会社ほど、コンサルティングを受けようとする傾向が見られます。このことから、業績を改善するには、経営者の方の学ぼうとする姿勢が大切ということが考えられます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、本田健さんの著書、「大好きなことをしてお金持ちになる」を読んで、気づいたことについて書きたいと思います。本田さんは、以前、「おかねのIQ・EQを高めて、幸せな人生を送る」というセミナーを開くことにしたことから、それを、友人やクライアントに知らせたそうです。ところが、本田さんがセミナーに参加して欲しいと思っていた人、すなわち、おかねに問題を抱えている人からは受講の申し込みがなく、もう十分に成功していて、セミナーに参加する必要はないという人ばかり受講申し込みをしてきたそうです。

これについては、コンサルティングと、それを受けようとする会社の関係にも当てはまると、私は感じています。すなわち、コンサルティングを受けた方がよいと思われる会社、すなわち、業績があまりよくない会社は、コンサルティングを受けようとせず、業績がよくて、コンサルティングを受ける必要のないと思われる会社ほど、コンサルティングを受けようとする傾向にあるようです。(一部、事業再生を受けるために、銀行から言われて、しぶしぶ、コンサルティングを受ける会社はありますが…)

これらのことだけから、100%断言することは妥当ではないものの、事業を改善しようとするときは、まず、何をするかよりも、学ぼうとする姿勢があるかどうかが大切なのではないかと思います。「現在は、経営環境が目まぐるしく変化する時代」ということは、誰も否定はしないと思いますが、そうであれば、経営者の方が学ぼうとする姿勢はますます重要だということも、容易に理解できると思います。それにもかかわらず、業績がよくない会社の経営者の方が、学ぶことを避けているとすれば、自ら業績の改善を拒んでいることになってしまうのではないかと、私は考えています。

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すきなことだけをしていれば成功するか

[要旨]

事業活動には嫌な活動もありますが、事業活動を全体から見れば、その必要性を理解し、能動的に臨むことができます。したがって、経営者の方は、嫌なものはやりたくないと、安易に考えず、事業全体を俯瞰することが大切です。


[本文]


本田健さんの著書、「大好きなことをしてお金持ちになる」を読みましたが、同書の中に、ちょっと気になることが書かれていました。すなわち、「パンを作ることがだいすきな人が、パン屋さんを始めたところ、パンを作った後の片づけが嫌になってしまい、自分にパン屋さんは合わないと考えてしまう人がいるが、本当にパン作りがすきな人は、後片付けを気にならない」という指摘です。

よく、すきなことを仕事にすることが、成功するための鍵となるということを考える人は多いと思います。それを実践することは、頭で考えるほど容易ではないとはいえ、私も自分のすきなことを仕事にして成功することはすばらしいことだと思っています。ところが、この、「すきなことを仕事にする」という意味を、「すきなこと『だけ』を仕事にする」と考えてしまう方も多いと私は考えています。

確かに、私も後片付けは嫌ですが、ものごとを全体的に考えてみれば、やりたいことをやるためには、嫌なこともやらなければならないということは当然と思います。もちろん、すきなことより、嫌なことの方が多ければ、嫌なことをする意味はないと思いますが、パン屋さんの例で言えば、嫌な部分である後片付けは、パン屋さんを営むために必要な活動のうちの、ほんの一部に過ぎないと思います。そうであれば、嫌なことであっても、後片付けをすることの意味は十分にあると考えることができます。

このことは至極当然と思われるのですが、例えば、私が中小企業経営者の方にお薦めしているPDCAをきちんと実践する方は、あまり多くありません。PDCAが実践されないというよりも、PとDだけを実践し、CとAは実践しないままになっていることから、事業の改善がなかなか進まず、苦戦している状態がずっと続いてしまうという感じです。

確かに、C(検証)と、A(改善策の立案と実行)は、面倒な活動です。でも、事業を永続的に発展させていくためには欠かすことはできませんし、それを行う意味は十分にあります。したがって、事業は、すきなことだけをしていればよいとは考えずに、もっと、事業活動を俯瞰して見ることによって、嫌なことにも目を向けることができるようにならなければならないでしょう。このことを、本田さんの本を読んで、改めて感じました。

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利益のすべてが排出権

[要旨]

電気自動車メーカーのテスラは、自動車製造事業自体は赤字ですが、温暖化ガス排出枠の売却益で収益を得ています。このような21世紀型の会社は、利益を得る仕組みが、従来の会社とは異なるという特徴があるようです。


[本文]

一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんが、東洋経済オンラインに、テスラについて寄稿しておられました。これについては、野口さんの記事にも書かれていますが、テスラの自動車年間販売台数は50万台で、トヨタの1,000万台の20分の1です。しかし、2021年4月のテスラの株式時価総額は6,498億ドルで、トヨタ自動車の2,157億ドルの約3倍という興味深い評価が行われています。

同社が、このような評価を受ける理由については、野口さんの記事に詳しく書かれていますが、私は、テスラの別の記事に注目しました。日本経済新聞2020年10月22日の記事によれば、2020年7月~9月の四半期決算の最終利益が3億3,100万ドルなのですが、同時に、温暖化ガス排出枠(クレジット)の売却益が3億9,700万ドルあり、これがなければ、同社は赤字だったということになります。

とはいえ、直前の四半期の最終利益は、1億4,000万ドルであるのに対し、クレジットの売却益は4億2,800万ドルであったことから、「本業」の収益構造は改善しつつあると言えます。もし、伝統的な自動車メーカーであれば、クレジットの売却で利益を得ようとすることは考えず、自動車製造で黒字を得ることにこだわるのではないかと思います。

同社は、2003年に設立され、CEOのイーロン・マスクは、経営者というよりも投資家としての性格が強い方なので、野口さんも指摘しているように、伝統的な「自動車メーカー」とは違った経営手法をとっているのだと思います。このような、名実ともに、21世紀型の会社は、今後、どんどん増えて行くと思いますが、どんな経営手法をとるのか、とても興味をもって注目したいと思います。

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シェアトップの座を奪い返した方法

[要旨]

キリンビールが、ビール系飲料のトップシェアの座を奪い返したときの、営業本部長だった田村さんは、特別なことをしたようではなく、実効性のある営業活動を徹底して行うよう、強力なリーダーシップを発揮したことに尽きるようです。このような基本的な活動を見直し、実践することは、とても大切です。


[本文]

キリンビール元副社長の田村潤さんのご著書、「キリンビール高知支店の奇跡」を読みました。キリンは、2001年に、ビール系飲料のシェアのトップの座をアサヒに奪われましたが、田村さんは、8年後にキリンがその座を奪い返したときの営業本部長でした。その田村さんは、1995年に、同社の中でもあまり営業成績がよくなかった、高知支店に支店長として赴任し、営業方法のたて直しを行った結果、2001年に、高知県での同社のシェアをトップにしました。その後、四国地区本部長、東海地区本部長、本社営業本部長と赴任し、同社のシェア奪回に貢献して行きました。

では、どうやってキリンはシェアを奪い返したのかという点に、多くの方が強い関心を持つと思いますが、私が同書を読む限りでは、営業活動を忠実に行ったということしか読み取ることができませんでした。むしろ、かつての同社では、会議のための会議、指示を受けたからしぶしぶ顧客先を回るという営業活動が横行していたようです。そこで、田村さんが、もっと実効力のある営業活動をするよう、営業職員を鼓舞してきたということに尽きるようです。端的に言えば、かつてのキリンは、ある種の大企業病になっていて、営業マンは受動的な営業活動しかしていなかったしていたのでしょう。

それに対して、田村さんがリーダーシップを発揮して、能動的な活動を行うよう促したところ、実効性のある営業活動が行われるようになり、シェアを奪い返すことができたということのようです。事実、高知支店では、営業マンが酒販店や飲食店を回りながら、なぜ、アサヒビールを販売しようとするのか、なぜ、顧客がアサヒビールを飲もうとするのかということを調査し、それへの対策を行ったという、本来、営業マンが行うべきことしか実行していません。でも、このような活動を徹底させることは簡単なようで、実際には、なかなか実践してもらうことは難しいことなのでしょう。

結論としては、トップシェアを奪い返した方法は、裏技でも必殺技でもなく、本来の活動を徹底して行ってもらえるような、強力なリーダーシップを、田村さんが発揮したということだと思います。一方で、現在、業績が伸びないで悩んでいる経営者の方が、たくさんいると思いますが、まだまだ、万策尽きたとは言えないのではないかと、私は考えています。ぜひ、田村さんのような、強力なリーダーシップを発揮することなど、まだやり残していることはないかということを、見直していただくことをお薦めします。

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法律に触れないだけでは成功しない

[要旨]

経営者の方の事業運営上の判断は、法律に触れないものとすることは、最低限のことです。よい成果を得るためには、さらに、ビジネスの観点からよい判断を行うことが必要ですが、この観点を持たずに判断をしてしまうことは避けなければなりません。


[本文]

岡田正宏さんが制作しているポッドキャスト番組に出演していた、弁護士の平岡卓朗先生のお話を聴きました。平岡先生によれば、平岡先生は、すでに中小企業診断士の資格も取得しており、顧問先の事業が発展するための、より、適切な助言をしていきたいとお話しされておられました。

資格が2つあれば、助言の幅が広がるということは、すぐに理解できますが、平岡先生は、幅が広がるというよりも、多面的に助言をしたいとお考えのようでした。というのは、顧問先から、「コロナで売上が減ってしまったので、従業員の給料を下げたいが、いくらぐらいまでなら大丈夫なのか」という質問を受けたとき、弁護士としては、違法にならない額を回答することになります。

顧問先の経営者は、給料を下げることで、減益の幅を縮めようと考えているわけですから、違法にならない範囲で給料を引き下げることは、ある面で、会社を守ることにつながります。しかし、平岡先生は、中小企業診断士としては、違法かどうかにかかわらず、いま、従業員の給料を下げれば、士気が下がり、業績をさらに悪化させることになりかねないとも助言できるようになると、お考えのようです。

すなわち、法律に触れない判断をしたとしても、それは、必ずしも、ビジネスの観点から正しいとは限らないということです。このことについては、多くの方が理解すると思うのですが、私も、ときどき、手続きに問題がないかということだけに関心を持つ経営者の方に会うことがあります。冷静に考えれば、法律に触れさえしなければよいということであれば、誰でも経営者を務めることができます。

でも、会社の経営は、法律を守ることは当然で、さらに、よい成果を得るために、さまざまな要因を勘案しながら難しい判断を行い、その良し悪しで成果が決まるものであるということは言うまでもありません。でも、窮地に立っている経営者の方は、最低限の法律に触れているかどうかしか、気がまわらなくなるのでしょう。平岡先生のお話を聴いて、とても頼もしい専門家の方がいらっしゃるということを感じました。

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経営者と自己肯定感

[要旨]

経営者の自己肯定感が低い場合、経営判断が独り善がりになる傾向があります。そこで、会社にとって、より望ましい経営判断ができるようになるために、経営者の方は、自己肯定感を高めることが必要になるでしょう。


[本文]

経営コンサルタントの相馬一進さんが、離婚してしまう夫婦の心理について、ブログに書いていました。すなわち、夫婦の一方、または、双方が、自己肯定感が低いと、相手に対して意見をのませることで、自己肯定感を高めようとするので、関係が悪くなり、離婚に至るということです。私は心理学の専門家ではないので、きちんと説明はできませんが、相馬さんの指摘はその通りだと思いますし、多くの方も、理解されると思います。

そして、自己肯定感の低い人の行動については、ビジネスでも現れることがあると、私は考えています。会社の経営者や管理職で、あまり成功しそうにない案や、会社に利益をもたらさなさそうな案を、無理をしてでも通そうとする人を、ときどき見かけますが、そのような人は、心の深いところで、「自分の考えを通すことで、自分の肯定感を高めたい」と考えているからではないかと思います。

そのような人たちは、端的に述べると、「我が強い人」や、「体面にこだわる人」などでしょう。もちろん、このような心の狭いビジネスパーソンは少数派であると思いますが、珍しくないという印象を持っています。では、今回、自己肯定感の低い人について言及したのはなぜかということですが、そのうな方が、中小企業の経営者であった場合(に限りませんが)、事業の目的を取り違えてしまう可能性が高いと感じたからです。

極端な例ですが、自分が「エースで4番」でないと気がすまないという方が、ある会社から独立して会社を起こしたとき、経営者として最優先すべきことは、事業で利益を得ることであるにもかかわらず、自分のやりたいことを最優先してしまいがちになると思います。私は、顧問先の会社には、PDCAの実践をお薦めしていますが、それは、前もって正解のわからない時代だからこそ、自社の取るべき戦略について、少しずつ修正しながら、より精度の高いもの近づけていくべきという考えに基づくものです。

でも、自分の考え方を優先する経営者は、PDCAそのものを嫌がります。そうすると、着実にPDCAを実践しているライバルとの差が、どんどん広がっていってしまいます。特に、経営者は、一般の人よりも重い責任を担っていますので、その判断は、より高い精度が求められます。だからこそ、誤った経営判断を行うことを避けるために、経営者自身が、自己肯定感が低いと感じる場合は、何らかの対策をとることが必要でしょう。

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