[要旨]
事業活動には嫌な活動もありますが、事業活動を全体から見れば、その必要性を理解し、能動的に臨むことができます。したがって、経営者の方は、嫌なものはやりたくないと、安易に考えず、事業全体を俯瞰することが大切です。
[本文]
本田健さんの著書、「大好きなことをしてお金持ちになる」を読みましたが、同書の中に、ちょっと気になることが書かれていました。すなわち、「パンを作ることがだいすきな人が、パン屋さんを始めたところ、パンを作った後の片づけが嫌になってしまい、自分にパン屋さんは合わないと考えてしまう人がいるが、本当にパン作りがすきな人は、後片付けを気にならない」という指摘です。
よく、すきなことを仕事にすることが、成功するための鍵となるということを考える人は多いと思います。それを実践することは、頭で考えるほど容易ではないとはいえ、私も自分のすきなことを仕事にして成功することはすばらしいことだと思っています。ところが、この、「すきなことを仕事にする」という意味を、「すきなこと『だけ』を仕事にする」と考えてしまう方も多いと私は考えています。
確かに、私も後片付けは嫌ですが、ものごとを全体的に考えてみれば、やりたいことをやるためには、嫌なこともやらなければならないということは当然と思います。もちろん、すきなことより、嫌なことの方が多ければ、嫌なことをする意味はないと思いますが、パン屋さんの例で言えば、嫌な部分である後片付けは、パン屋さんを営むために必要な活動のうちの、ほんの一部に過ぎないと思います。そうであれば、嫌なことであっても、後片付けをすることの意味は十分にあると考えることができます。
このことは至極当然と思われるのですが、例えば、私が中小企業経営者の方にお薦めしているPDCAをきちんと実践する方は、あまり多くありません。PDCAが実践されないというよりも、PとDだけを実践し、CとAは実践しないままになっていることから、事業の改善がなかなか進まず、苦戦している状態がずっと続いてしまうという感じです。
確かに、C(検証)と、A(改善策の立案と実行)は、面倒な活動です。でも、事業を永続的に発展させていくためには欠かすことはできませんし、それを行う意味は十分にあります。したがって、事業は、すきなことだけをしていればよいとは考えずに、もっと、事業活動を俯瞰して見ることによって、嫌なことにも目を向けることができるようにならなければならないでしょう。このことを、本田さんの本を読んで、改めて感じました。