鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

定時退社する方法

創業10年で75億円の売上を得ている、

化粧品販売会社、ランクアップの社長の岩

崎裕美子さんのご著書、「ほとんどの社員

が17時に帰る売上10年連続右肩上がり

の会社」( https://amzn.to/2tuiptI )を

拝読しました。


ランクアップは、業績が好調なのに、17

時に定時退社できる理由は何か、興味深く

読んだのですが、やはり、その要因は単純

なことでした。


(ちなみに、岩崎さんの前職は広告代理店

の取締役で、その会社の社員は終電まで帰

ることができなかったブラック企業であっ

たことから、岩崎さんは早く帰ることがで

きる会社をつくりたいと考え、ランクアッ

プを設立したそうです)


そのひとつめは、経営者の方が、何をする

かを明確に指示していることです。


具体的には次の通りです。


(1)定時退社の徹底:18時になると、

役員自らが退社するよう号令をかける。


(2)業務の棚卸をする:毎月、社員の残

業の内容をチェックし、不要な仕事は廃止

する。


(3)アウトソースの活用:採用、ホーム

ページ作成、配送業務などはできるだけ外

注し、社内では社内でしかできないことだ

けをするようにする。


(4)ルーティンワークのシステム化:単

純作業はシステム化によって、所要時間を

短縮し、本来の業務に時間を割けるように

する。


(5)事務職の廃止:正社員には創造的な

仕事だけをしてもらい、事務作業は派遣社

員やアルバイトに任せるようにする。


(6)仕事のスピードを上げるための社内

ルールをつくる:社内資料は作り込まずに

簡易なものとする、会議は30分とする、

社内メールにあいさつ文などはいれないな

どのルールをつくり、省力化を図る。


(7)17時に退社可とする:本来の就業

時間は8時30分~17時30分だが、定

時よりも30分早く退社しても構わないこ

ととすることによって、就業時間は効率よ

く仕事をしようとするモチベーションが働

く。


これらが岩崎さんの実践した具体策なので

すが、実は、私は、これらの前に、岩崎さ

んが具体的に指示をしているという点が、

本当の定時退社できる要因になっていると

思います。


これを言い換えれば、もし社員が定時退社

できないとすれば、それは、岩崎さんの責

任になるというところから出発して指示を

しているのだと思います。


だからこそ、定時退社するための施策に効

力があるのでしょう。


もし、社長が、単に、「定時退社しろ」と

だけ指示をしても、残業はなくならないで

しょう。


なぜなら、前述の逆のことになりますが、

社員には権限がないので、単に、社長の指

示を受けるだけで、実効性のあることはで

きないでしょう。


または、単に社員が職場からいなくなるだ

けで、持ち帰り残業をしたり、管理職だけ

が職場に留まり、部下の残した仕事を片づ

けるということになってしまいます。


繰り返しますが、残業がなくならないとす

れば社長の責任という前提で、残業0を目

指さなければ、定時退社は実現しないと私

は考えています。


もうひとつの要因は、ランクアップの商品

の強さです。


具体的な説明は割愛しますが、岩崎さん

は、自社商品について、(1)自らが欲し

いと思う商品しか売らない、(2)顧客目

線でわかりやすく自社商品の特長を伝え

る、(3)親切で丁寧なサービスをつらぬ

く、というこだわりを持っているそうで

す。


これは、岩崎さんが広告代理店勤務時代に

学んだ売れる商品の特徴であり、これを徹

底することで、競争力が高まるということ

でした。


実は、私も、事業を営むとは、まさに、こ

のような考え方で臨むことだと考えていま

す。


というのは、起業家の中には、「いま、こ

の商品が売れそうだから、その販売を手が

けたい」とか、「自分は、この製品を作る

ことがすきだから、この製品を製造する事

業を手がけたい」という動機で起業してい

る人もいると感じています。


すなわち、顧客に価値を提供するというと

ころから出発して事業に取り組んでいない

という会社が少なくないと感じています。


このような安易な考えで起業すると、その

会社の事業は競争力のない商品や製品を販

売することになるので、社員の長時間労働

や、サービス残業などを前提にして、やっ

と利益が出るという事業になってしまうと

いうことです。


このような、事業の見立てが悪い会社は、

もし、社員の就業時間が短縮してしまう

と、事業が成り立たなくなります。


これを言い換えると、経営者が価値を産み

出す事業を構築できないことが、残業なし

の会社にできない大きな要因になっている

と私は考えています。


以上の2つの点が、岩崎さんの本を読んで

感じたことです。


社長は口から指示を出すだけでなく、自ら

責任をもって行動すること、価値のある事

業を構築すること、このような、単純なよ

うでなかなか実践が難しいことを岩崎さん

が遂行できたことが、残業をしなくても業

績が右肩上がりなる会社をつくりあげたの

だと思います。

 

 

 

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かんばん方式と全体最適

前回に引き続き、トヨタに17年間勤務の

後、現在はカイゼンコンシェルジュとして

ご活躍の石井住枝さんからおききしたお話

について述べたいと思います。


石井さんの古巣のトヨタと言えば、「かん

ばん方式」が代名詞になっています。


かんばん方式はあまりにも有名なので、こ

こであらためて説明する必要はないと思い

ますが、念のために簡単に触れると、自動

車の製造工程で、後工程が前工程に部品を

調達しに行く際に、何が使われたかをかん

ばんを使って伝える方式で、このことによ

り、不要な在庫を持たないようにすること

ができます。


ちなみに、かんばんとは、トヨタが独自に

名付けたもののようで、品名、品番、置き

場所などの情報が記載されている管理用の

カードを指します。


(ご参考→ https://goo.gl/Ysb9fb


ところで、私は、このかんばん方式につい

て、学生時代の会計の講義を受けていると

きに初めて学びました。


会計では、在庫は必要以上に持たないこと

が望ましいという考え方があり、前述の通

り、それを実現する手法として、よく、ト

ヨタのかんばん方式が好事例として紹介さ

れます。


そこで、私は、トヨタかんばん方式を導

入しているのは、会計の観点から、むだな

在庫を持たないようにするためであると、

ずっと考えていました。


ところが、石井さんのお話しをきいたとこ

ろ、かんばん方式は、会計上の観点からだ

けではないということが分かりました。


以前もご紹介しましたが、トヨタの製造現

場では、「前作業は神様、後作業はお客

様」という考え方をしているそうです。


(ご参考→ https://goo.gl/x5f7iW


これは、自分の作業は、前作業の担当者が

きちんと作業をしてくれたからできるよう

になっているので、前作業は神様と考えま

しょう、そして、自分の作業は、後作業の

担当者にきちんとバトンタッチできるよ

う、お客さまに対して仕事をするように渡

しましょうということを指しています。


このことをひとことで言えば、自分の担当

する工程だけのことを考えず、すべての工

程のことを考えながら仕事をする、すなわ

ち、全体最適を意識した結果、編み出され

た方式が、かんばん方式なのだそうです。


そして、当然のことながら、全体最適を目

指して行けば、むだな在庫を持つことも防

ぐことができるようになるという、会計の

観点でも効率化が図ることができます。


私も、会計学を学んだ当初は、会計とは事

業のひとつの側面を示したものに過ぎない

ということに常に注意しなければならない

と教えられ、ずっとこれを意識してきまし

た。


でも、石井さんのお話をきいて、自分自身

で戒めていた、会計の観点だけで、トヨタ

かんばん方式をとらえてしまっていたと

いうことに気づかされました。


今回の記事の結論は、事業は、会計の観点

だけから見ていてはいけないということで

す。


順序としては、事業全体を効率化すること

から出発し、その結果、よい製品ができ、

働く人も満足し、利益も得られるというこ

とになります。


ちなみに、これは会計の観点だけにあては

まるのではなく、別の観点にもあてはまり

ます。


例えば、「よい製品」と造ろうとして、製

品だけにこだわりすぎると、むだなコスト

がかかったり、従業員が疲弊してしまうと

いうことにもなります。


事業でよい成果を得るには、ひと、もの、

かねの3つの経営資源を最適に配分するこ

とが大切です。


そして、その配分をどうするかという調整

をすることが、経営者に求められている大

切な役割でもあります。

 

 

 

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改善とカイゼン

先日、トヨタに17年間勤務し、現在はカ

イゼンコンシェルジュとしてご活躍の石井

住枝さんとお話しする機会がありました。


(ご参考→ https://effec.jp/profile


その際、石井さんから、「トヨタの改善と

カイゼン」について、お教えいただきまし

た。


トヨタでは、「改良」、「改善」と「カイ

ゼン」を使い分けているそうです。

 

改良とは、投資をしたり費用をかけたりし

て、現状をよりよくすること、改善とは、

問題点を解決すること、そして、カイゼン

とは、現状に問題があるかどうかにかかわ

らず、費用をかけないよう工夫して、現状

をよりよい状況に持っていくことだそうで

す。


ちなみに、トヨタでは、カイゼンの考え方

を海外の工場にも広めていますが、英語に

はそれに該当する単語がないため、そのま

カイゼンという言葉を使っているそうで

す。


ところで、なぜ、トヨタカイゼンにこだ

わるのかというと、それは、現在のトヨタ

をつくり上げてきた根源的な考え方だから

だそうです。


というのは、トヨタが自動車メーカーとし

て事業を始めたのは、実質的には戦後から

で、その時は、旧財閥系の自動車メーカー

と比較して後発だったそうです。


しかも、所在地が愛知県の「田舎」に立地

しているということもあって、政府や銀行

などからの支援もなかなか受けることがで

きなかったそうです。


そのような中、「お金をかけずにどうすれ

ば、ライバルに勝てるような性能のよい自

動車を製造できるようになるか」という課

題に、日々、取り組むしか選択がなかった

そうです。


現在は、売上高29兆円、税引前当期純利

益2.6兆円も計上している会社が、かつ

てはお金に悩んでいたということは、とて

も想像できないことです。


しかし、戦後の厳しい状況を切り抜けた経

験を活かし、そのときの対処法を続けてき

たことが、現在は、日本を代表する会社に

なる大きな動力となったのでしょう。


このトヨタカイゼンの考え方から学ぶこ

とはたくさんあると思いますが、私は、経

営に王道はないということを改めて感じま

した。


実は、トヨタのような巨額の利益を得てい

る会社は、何らかの特殊なノウハウがある

のではないかと、私は考えていました。


表向きはそのようなことは口にしてはいま

せんでしたが、「トヨタをまねれば、業績

がよくなる」と考えていました。


でも、石井さんのお話をきいて、確かにや

さしいことではありませんが、「お金をか

けずに工夫をする」という、至極、単純な

ことをずっと継続するということしかない

ということが分かりました。


私が、「きっと、トヨタには、業績を高め

る秘密のノウハウがあるはずだ」と思って

しまったのは、「きっと、楽をしても、も

うかる方法があるはずだ」という、不精な

考えがあるからだと思い、反省したところ

です。

 

 

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時は金なり

今回は、あまりにも有名なことわざである

「時は金なり」について、会計的観点から

見てみたいと思います。


時は金なりの、もともとの意味は、時間は

お金と同様に大切という意味ですが、会計

的には、時間はお金、すなわち、利益にな

ると私は考えています。


その例として、以前、説明した、キャッ

シュ・コンバージョン・サイクル

https://goo.gl/F6T7Fx )があげられ

ます。


この記事では、資金効率(なるべく少ない

資金で事業を維持しようとすること)を主

な論点として書きましたが、キャッシュ・

コンバージョン・サイクルを高めるもうひ

とつの狙いは、短期間にたくさんの利益を

得ようとすることでもあります。


なぜなら、引き合いを受けてから納品する

までの期間が短ければ、それだけ利益を早

く得ることができ、年間、もしくは、月間

など、一定の期間でのの獲得利益も多くな

ります。


このことは、あえてややこしい説明をする

までもなく、多くの経営者の方はすでに理

解されていることと思います。


このように、同じ商品を売るなら、より早

く納品する仕組みを作った会社が優位に立

つわけですが、一方で、中小企業ではこの

観点で事業改善をしようとする会社は少な

いと感じています。


この、納品を早くする仕組みは、多くの場

合、情報技術を取り入れることが中心にな

ります。


中小企業では、情報技術の導入は、やや負

担が大きくなる場合がありますが、それで

も、最近は少額の投資でも導入が可能にな

りつつあります。


また、情報技術の導入以外にも改善する方

法があります。


例えば、大手牛丼チェーン店では、最適な

厨房のレイアウトを研究し、動きに無駄の

ない調理ができるようにして、注文から配

膳までの時間を最短にすることで、顧客の

回転率が高めています。


さらに、あるレストランチェーンでは、厨

房のオペレーションを1人でこなすことが

できるように改善したそうです。


すなわち、調理時間を速くすることができ

なくても、従来は2人以上で行っていたこ

とが1人でできるようになれば、コストの

面からは、調理時間を半分にした時と同じ

メリットが得られるようになります。


中小企業でも、このような改善は、小集団

活動によってある程度は実現できると私は

考えています。


また、あえて、急ぎの需要に応えるという

事業もあります。


例えば、19時以降の注文であっても、当

日中にオーダーメイドケーキをつくって販

売している専門店もあります。


(ご参考→ http://otodocake.com/


これは、いわゆるランチェスター第一法則

による局地戦で、規模の小さい会社ほど有

利な戦法です。


このケーキ店のように、商品そのものでは

ライバルとの差をつけることが難しいくて

も、時間を切り口にして差別化をすること

で、中小企業であっても高い競争力をつけ

ることが可能になるかもしれません。


今回の記事の結論は、時間を利益にすると

いう観点から事業を改善することも可能で

あるということです。

 

 

 

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いちごのケーキ

かつて、経営コンサルタントの石原明さん

から、次のようなお話をききました。


石原さんの知人で、自らが経営する会社を

大きく育て、現在は一線から退いた、初老

の元経営者のAさんと、そのご夫人、そし

て石原さんの3人が、ホテルのカフェで、

いちごケーキを食べる機会があったそうで

す。


その時、Aさんがぼそっと、「ぼくは、本

当は、いちごはあまり好きじゃないんだよ

ね」とつぶやいたそうです。


それをきいたご夫人が、「いままで、家で

は、私がいちごを使ったケーキやお菓子を

出すと、あなたは残さず食べていたから、

私はあなたがいちごを好きだと思って、努

めていちごのお菓子を出していたのに、ど

うしていちごが好きじゃないって黙ってい

たのよ!」と怒り出したそうです。


このAさん夫婦の会話から、なぜ、Aさん

は、いちごが好きじゃないとご夫人に言わ

なかったのか、なぜ、ご夫人は、いちごを

努めてAさんに食べさせようとしてきたの

か、それらの理由について、いろいろなこ

とが想像できます。


それらは例示しませんが、やはり、Aさん

は、夫婦間の関係を円満にすることを最優

先にしてきたのだと思います。


話は変わりますが、会社で仕事をしている

と、気をつけていても、言った言わないが

問題になることがよくあります。


私も、会社勤務時に、よく、言った言わな

いのもめごとに巻き込まれたことがありま

した。


中には、自らの口で言ったことを明らかに

記憶していながら、強引に言っていないと

主張していた人もいました。


そのような人は論外ですが、お互いに、悪

意を持たずに、そのようなことは言ってい

ない、いや、言っていたと、主張が食い違

うこともありました。


そのような場合、議事録や録音があれば、

真偽ははっきりするのですが、非公式な打

ち合わせなどの場合、記録がないので、真

偽はわからないままになります。


ただ、仮に、真偽がはっきりすれば、それ

で問題が解決するというわけではない、と

いうことも、多くの経営者の方は理解され

るでしょう。


なぜ、言った言わないが当事者同士で揉め

てしまうのかというと、同僚同士でありな

がら、お互いに相手は自分の味方でないと

感じてしまっているからでしょう。


仮に、お互いの記憶が違っていても、相手

が自分の味方であると感じていれば、記憶

の違いは気にならないでしょう。


むしろ、自分の話の伝え方がまずかった、

自分の話の聞き方がまずかったと反省する

でしょう。


いま、永田町では、何人もの重要人物に対

して、言った言わないの論争が起きてお

り、それはそれで真実が明らかになって欲

しいとは思いますが、比較的規模の小さい

中小企業では、何が真実かというより、ど

うしたらひとつの目的に向かって組織がま

とまっていくかが最大の課題です。


そして、会社内でそのような雰囲気を作る

ことが、少人数でがんばっている中小企業

の経営者にとって、とても大切な役割なの

だと、ふと思ったところです。

 

 

 

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レバレッジ効果

今回は、会計用語のレバレッジ効果につい

て解説します。


レバレッジとは、梃子(てこ)のことで、

レバレッジ効果とは、梃子の作用によって

少ない負担でも大きな果実を得ることがで

きるようになる効果のことです。


会社の事業では、融資を受けることによっ

て、投資効率を高めることができ、これを

財務レバレッジとも言います。


たとえば、資本金1,000万円だけで、

年間100万円、すなわち10%の利益を

得ている会社があるとします。


この会社が、金利1%で1,000万円の

融資を受け、事業資金を2倍の2,000

万円にしたとき、年間200万円の利益を

見込むことができます。


このとき、融資金利10万円を除いた19

0万円が最終的な利益となり、1,000

万円の資本金に対して、19%の利益を得

ることができます。


このように融資を受けることで、レバレッ

ジ効果が働き、投資効率が高まります。


そして、このレバレッジ効果は、融資を受

けることが望ましいという根拠のひとつに

なっています。


そこで、たくさん融資を受けることによっ

て、レバレッジ効果を高めるとよいという

ように考えることもできます。


前述の会社の場合、融資額を2,000万

円にすると、利益額は300万円を見込む

ことができ、利息額20万円を除いた28

0万円の資本金に対する割合は28%と、

さらに高くなります。


では、さらにレバレッジ効果を高めるため

に、もっと融資を受ければよいということ

になるかというと、必ずしもそうではあり

ません。


そのひとつは、論理的な根拠の説明は割愛

しますが、融資の多い会社は不安定である

ということになってしまうからです。


例えば、資本金1,000万円の会社が、

融資を9,000万円を受けていた場合、

直感的に安定性がない会社だということが

分かると思います。


もうひとつは、レバレッジ効果は逆にも働

くことがあります。


例えば、前述の会社の経営環境が悪化し、

1,000万円の資本金だけで事業を運営

していたとき、50万円の赤字を計上、す

なわち、投資効率が▲5%になったとしま

す。


もし、この会社が1,000万円の融資を

受けていたとすれば、赤字額は100万円

になった上に、さらに、利息額10万円を

払うことになり、資本金1,000万円に

対する赤字額の割合は、▲11%になって

しまいます。


ここまでレバレッジ効果について説明して

きましたが、このことはすでに多くの方が

理解しておられることでしょう。


一方で、「ビジネスチャンスがあるのに、

自己資本比率が低いからという理由で、銀

行に融資を断られた」ということを経営者

の方からきくことがあります。


会社経営者として、レバレッジ効果を活用

することは望ましいのですが、これは諸刃

の剣にもなるので、適度な自己資本は欠か

ません。


ですから、事業を拡大するには、融資だけ

を頼ることは適切ではありません。


ちなみに、自己資本比率を高める方法とし

ては増資もありますが、中小企業の場合、

繰越利益を増やしていくことが基本です。


利益を得ることは大切ということは多くの

方が理解されておられると思いますが、そ

の根拠のひとつは、単に「もうける」とい

うだけでなく、事業を安定させる自己資本

を増加させるためでもあるのです。

 

 

 

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すぐに効果のあること

「すぐに効果の出る施策をやれ!」


これは、私がかつて働いていた銀行の本社

で働いていた時に、役員から何度も聞かさ

れた指示です。


当時の銀行は、多額の不良債権を抱えてい

て、その補填のために多くの利益を出さな

ければならない状態でした。


その状況は分かっていたので、指示を受け

た私たちも、懸命にすぐ利益の出ることを

実施しようとしていました。


でも、その一方で不安も感じていました。


なぜなら、すぐに利益の出る施策というの

は、実が青いうちに収穫するようなもので

あったり、将来につけを残すようなことば

かりだったからです。


結果として、銀行は国有化という形で、実

質的な倒産を迎えました。


バブル崩壊後の銀行は、あまり傷を負わな

かった銀行と、深い傷を負った銀行に分か

れ、徐々に両者の業績の差は広がって行き

ました。


そして、旧山一證券や旧拓銀の経営破たん

をきっかけに、傷の深い銀行は国有化され

たり、強制的に資本注入を受けたりしまし

た。


そこで、私が勤めていた銀行は、遅かれ早

かれ経営破たんしたことには違いがないの

かもしれません。


そうであれば、傷の浅いうちに資本注入を

受けるよう自ら手を挙げた方が、損失額は

少なかったことは確実です。


ただ、これは、多くの破たんした会社の例

を見ると、ほとんど不可能なのかもしれま

せん。


なぜなら、会社を破たんさせた経営者は、

責任を追及されるからです。


もう少しありていに書くと、破綻した銀行

の経営者は、不良債権を負ったことについ

て損害賠償請求訴訟を起こされ、ほとんど

の場合は、旧経営者はすべての財産を失う

ことになります。


恐らく、当時の経営者は「もう少し会社が

持てば、なんとか切り抜けられるのではな

いか」という甘い希望を持っていたのかも

しれませんが、やはり、傾き出した銀行を

正常に戻せるのであれば、とうの昔にでき

ていたはずです。


と、ここまで書いてきたことから何を言い

たいのかというと、「すぐに効果の出る施

策をやれ!」と経営者が言い出した時点

で、もう会社は倒産への道を転がり出して

いるということです。


もうひとつ付け加えると、「すぐに効果の

出る施策」だけをやっていればいいのであ

れば、経営者は不要です。


そもそも、事業の施策は1年~2年でゴー

ルするものではなく、短くても3年~5年

をかけて実を結ぶものです。


だからこそ、その実を結ぶまでに経営者の

采配が必要なのです。


ですから、「すぐに効果の出る施策」を求

める経営者は、自らの存在を否定している

ことにもなります。


実は、「すぐに効果の出る施策をやれ!」

という言葉は、私が事業改善のお手伝いを

した会社の経営者の口からもきいたことが

あります。


そのような状況に至った理由はさまざまな

ものがあったかもしれません。


ただ、「すぐに効果の出る施策をやれ!」

という指示を出さないですむようにするこ

とが経営者の最低限の責務であり、それを

口にしなければならなくなるような状況に

なったのであれば、せめて、それ以上傷口

が広がらないように善後策をとることが望

ましいということを、私の経験から感じて

います。

 

 

 

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