鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

箸よく盤水を廻す

イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんが

ラジオ番組にご出演したときのお話を聴き

ました。


(ご参考→ https://goo.gl/SWgibW


ここで、鍵山さんは、禅宗の僧侶の方から

教えてもらったという、「箸よく盤水を廻

す」という言葉についてお話されておられ

ました。


これは、たらい(盤)の中の水を箸でかき

まわしても、最初は、箸だけが回っている

状態が続くが、辛抱強くそれを続けている

と、徐々に箸の周りの水も回りだし、やが

てたらいの中の全部の水が回るようになる

ということです。


これは、小さなことでも続けていくうちに

大きな影響を及ぼすようになるということ

の比喩であり、多くの方が理解されておら

れるでしょう。


したがって、この言葉については、これ以

上解説はいたしません。


ところで、鍵山さんは、毎日、会社を掃除

をして会社の業績を伸ばしてこられたこと

で有名です。


因みに、街をきれいに掃除したり、トイレ

掃除で素行の荒れている青少年を更生させ

る活動も行っています。


話を戻して、鍵山さんはご自身をご謙遜さ

れて、掃除をすることくらいしか自分には

できなかったから掃除を続けてきたとお話

しされておられますが、それはもちろん、

「箸よく盤水を廻す」という言葉を実践し

ようとしたからでしょう。


鍵山さんが会社で掃除を始めたころは、誰

も協力してくれないどころか、「社長は掃

除しかできないのか」などとさげすむよう

な目で見られたこともあったそうです。


しかし、掃除を続けて10年もたつと、

徐々に一緒に掃除をしてくれる人が現れた

だけでなく、社員も他の人にやさしく接す

るなど会社の雰囲気も良くなってきたそう

です。


ここまでの話は、鍵山さんの美談を書いて

いると受け止められてしまうかもしれませ

んが、私が伝えたいことは、自分が望むよ

うなことを実現するには時間がかかるとい

うことを鍵山さんの会社の例から学ぶこと

ができるということです。


「うちの会社は、経営環境が悪くて業績が

あがらない」、「うちの会社には優秀な部

下がいない」、「正直に仕事をしていたら

よその会社に出し抜かれる」という思いを

している経営者の方は多いと思います。


ただ、このような状況は、一朝一夕に変わ

らず、石の上にも三年どころか、鍵山さん

の会社でさえ、掃除の協力者が社内に現れ

るまで10年かかりました。


確かに、短期間ですばらしい業績を上げる

経営者の方もたくさんいますが、それは、

日本の会社の数から見れば、ほんの一握り

です。


ですから、私は、すばらしい才能を持つ経

営者でない限り、自社をよくするには時間

がかかりますということを顧問先の方にお

伝えしています。


しかも、それは、鍵山さんのような地道な

努力を継続するという条件がついてのうえ

のことです。


ここで、「掃除を10年続けないと、会社

がよくならないなんてばかばかしい」と考

える経営者の方が多いと思います。


ただ、私は、そのような考えをする方に、

ひとつ反論があります。


「すぐに結果が欲しい」と望む経営者の方

に限って、準備はあまりしていません。


一方で、達成できなかったらそれは自分の

責任であるという覚悟を持って事業計画書

を作成した人は、「すぐに結果が欲しい」

といった、他者に依存的な考え方は起こし

ません。


綿密な計画書をつくることに携われば、事

業を伸ばしていくには時間がかかるという

ことを理解できます。


そして、実現可能性の高い事業計画書がで

きたとしても、その計画通りに事業を進め

ることも、とてもたいへんなことだという

ことも容易に想像できます。


ここまで述べた社内の掃除も、事業計画書

の作成も、そのこと自体は難しいことでは

ありません。


その難しくないことを実践する経営者と実

践しない経営者の差は何なのか、実は、私

もこの明確な答えを見つけていません。

 

 

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日報は目的ではなく手段

私は、現在、日報コンサルティングのスキ

ルを習得するために、日報コンサルティン

グで多くの会社の業績の向上させてきた、

経営コンサルタントの中司祉岐さんからそ

れを学んでいます。


なぜ、日報コンサルティングを学ぼうかと

思ったかというと、コンサルタントになる

までは、会社の業績を高めるためにどうい

うことをすればよいのかということを助言

することが、コンサルタントの中心的な役

割だと思っていたのですが、コンサルタン

トになってからは、単にそれだけでは不十

分で、むしろ、提案した改善策を顧問先に

計画通りに実践してもらうスキルの方が大

切だということに気づいたからです。


そのスキルとして、日報コンサルティング

がとても有用だと思ったことから、中司さ

んに学ぶことにしました。


その一環として、先日、中司さんの主催す

る研修に参加してきました。


そこで、中司さんのパートナーである経営

コンサルタントの一圓克彦さんから、日報

を顧問先にどう使ってもらうかというお話

がありました。


ところで、日報については、多くの人が、

表向きは「よいツール」と口にしますが、

心の中では、「日報を書いて業績がよくな

るのだったら、そんな楽なことはない」な

どと思っているのではないでしょうか?


話はそれますが、「社内月例会議」なども

同様に、表向きは大切と言いながら、内心

では、あまり意味がないと考えている人が

多いと私は感じていますが、これについて

は、また別の機会に述べたいと思います。


話を戻して、先ほど「日報はよいツール」

と書きましたが、日報で失敗してしまう人

は、ツールを無意識のうちに目的にしてし

まっているのだと思います。


例えば、ある人が日報を書いて業績を伸ば

したときいた人が、自分もそれに倣って日

報を書き始めたとします。


これは、業績を伸ばした人は日報を書いて

いた、だから、自分も日報を書くことにし

た、よって、自分の会社の業績も伸びる、

という三段論法がその人の頭にあるのだと

思います。


ここで、その人は、日報を書くことを目的

にしてしまっており、ツールではなくなっ

てしまっています。


日報はツールなのだから、業績を伸ばすた

めのツールに過ぎず、どのような日報を書

けば業績を伸ばすことができるのかという

ことを分かっていなければ、いくら日報を

書いても業績は伸びません。


このような、目的と手段の取り違えは、先

程少し触れた会議についても共通すること

ですが、頭では理解している人は多いもの

の、実践するときに陥ってしまいがちな罠

だと私は考えています。


別の例では、情報技術を自社に取り入れよ

うとして、パソコンとソフトを購入したも

のの、それを使いこなせるリテラシーの高

い人が社内にいなかったり、会社の事業戦

略と、そのソフトでできることが一致して

いなかったりして、パソコンが単なる箱に

なってしまうということもあります。


また少し脱線しますが、このようなことは

システムベンダーさんがクライアントに対

してあまり説明しないので、私がITコン

サルタントとして、正しい情報化武装のお

手伝いもしています。


話を戻すと、この話は本の一部ですが、一

圓さんはこのような肝になる部分を中心に

お話されていました。


よく、セミナーをたくさん開いているコン

サルタントは、テクニック的なことをたく

さんお話しするという印象を持たれている

と思います。


私も、セミナー講師を何度か務めたことが

ありますが、いわゆるテクニックをたくさ

ん話すと、受講者からのうけがよいので、

それをたくさん話そうとしてしまうことが

ありました。


でも、受講者がテクニックを知ったとして

も、それを事業で実践してもらえなかった

り、誤った使い方をされては、何の意味も

ありません。


そのことよりも、前述のような、手段と目

的の取り違えが起きないようにということ

と心に銘じてもらうことの方が、受講者の

方にとっては、より役立つでしょう。


なぜこのようなことを書いたかというと、

テクニックを学ぶより、ツールの正しい使

い方を学ぶことの方が本質的であり、重要

なことだと私が考えているからです。


それくらい、日報をツールとしてとらえる

ということは大切であり、これを理解しな

ければ、いくら日報を書いたり、日報の書

き方を学んでも意味はありません。


そして、日報を書いて業績を伸ばした会社

というのは、実は、日報を正しく書いたか

ら業績が伸びたのではなく、本当に大切な

ことは何かということを分かっている会社

だから、業績を伸ばすことができたのかも

しれません。

 

 

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本物の作家

先日、作家の本田健さんが、作家になりた

いという人に向けて、どうすれば作家にな

ることができるかというアドバイスをを、

本田さんの制作しているポッドキャスト

お話しされておられました。


(ご参考→ https://goo.gl/ikVVzm


「本を書いたことがある人を作家というの

であれば、本を1冊書けば、作家になるこ

とができる。


でも、売れ続ける本を出し続けなければ、

プロの作家として認知されないだろう。


そうなるためには、寝食を忘れて原稿を書

き続けることができるかどうかに依る。


例えば、今では著名な作家である東野圭吾

さんは、アマチュア作家時代に勤務してい

日本電装を昭和61年に退職したもの

の、専業作家になってから、後にテレビド

ラマ化されたヒット小説の『名探偵の掟

を世に出すまでに、10年かかった。


しかし、東野さんは、その売れない間も原

稿を書き続けていたことから、売れっ子作

家になってから、書き溜めた原稿を新刊と

して次々に世に出せるようになった」とい

うものです。


本田さんのご指摘の趣旨は、単に本を1冊

書いただけでは、本物の作家とは言えず、

たくさん原稿を書き続けることができるく

らいの才能と情熱があり、それが読者に支

持されて報われるときに、本物の作家にな

れるということでしょう。


私自身も、ビジネス書作家に軸足を移して

行きたいと考えている中で、このご指摘ど

おりのことはまだまだできていないと自覚

し、きょうからまた心を入れ替えたいと

思ったところです。


そして、本田さんがご指摘されるような仕

事に傾ける情熱は、作家以外の仕事にも、

当然あてはまるでしょう。


例えば、「経営者」は、自ら会社を設立し

代表取締役に就任すれば、「経営者」に

なることはできます。


しかし、他の人から、「あの人はすばらし

い経営者だ」と認められるには、単に、手

続きで代表取締役に就任しただけでは足り

ないということは言うまでもありません。


これは、すべての経営者の方にあてはまる

わけではありませんが、代表取締役に就任

しただけで、目的を達したと考え、自らの

経営者としてのスキルに磨きをかける努力

を怠ってしまう方も少なからずいらっしゃ

います。


また、これは本田さんが直接ご指摘された

ことではありませんが、少ないながらも、

「経営者にならなければ、自分には価値が

ない」と考えている方にも会うことがあり

ます。


そのような方は、「経営者にならなければ

他者から認めてもらえない」という思いが

強く、「代表取締役」という肩書にだけ固

執してしまう傾向があるようです。


その肩書へのこだわりが、経営者としての

スキルアップの必要性に目が向かなくなっ

ているようです。


確かに、経営者の多くは尊敬される存在で

すが、だからといって、経営者でなければ

人間的価値はないということではないと思

います。


多くの経営者の方は、人の見えないところ

でたくさんの努力をしていますが、ある意

味、それができるのは経営者としての才能

を備えているとも言えます。


経営者に向いていない人は、別の面で才能

を発揮できる可能性があるので、「経営者

になりたいけれど、なかなか芽が出ない」

という方は、別の才能を探すこともひとつ

の方法でしょう。


そういう私も、ビジネスに関心を持ちなが

ら、経営者に向いていないもののひとりだ

と思っています。


だから、ビジネスに関連する仕事として、

コンサルティングをしたり、ビジネス書を

書こうとしています。


今回の記事の結論は、単純ですが、自分の

夢中になれることを探しましょうというこ

とです。

 

 

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機会平等と結果平等

先日、久留米大学理事の久原正治さんのお

話を、ポッドキャストで聴きました。


(ご参考→ https://goo.gl/263mtt


久原さんのお話は、次のような内容です。


すなわち、米国では、個人の行動は自分で

決めるものであるという風土がある。


そこで、その自由の裏付けである自己責任

についても重く考えられており、ルールを

破ったときの罰則も重い。


一方、日本では、個人で判断する自由は少

なく、多くのことは集団で決めるという風

土がある。


そこで、集団で規則を破るときがあって

も、個人が罰せられることは少なかった。


ところが、日本では、会社運営の仕組みに

ついて、風土の違う米国の仕組みをそのま

ま取り入れてしまったので、日本では集団

で意思決定をしているにもかかわらず、そ

れが規則違反であった場合、個人が罰せら

れるということになってしまった、という

ものです。


最近、日本の大手企業で不祥事が相次いで

表面化していますが、限定された違反者が

いたということではなく、問題のあること

についてずっと会社で引き継がれてきたと

いう例が見られます。


仮に、米国の会社で同じようなことが行わ

れようとしたら、引き継ぎが行われるとき

に、「これは規則違反だから、自分は引き

継がない」という判断をする人が多いので

はないでしょうか?


でも、日本では、規則違反があっても、そ

れについておかしいという声をあげること

は難しく、前例として踏襲されてしまいや

すい風土があります。


話を本題に戻すと、米国の会社は機会が平

等である一方で、日本の会社は結果が平等

になるような風土があると思います。


(100%そうだというわけではありませ

んが、米国と比較して、日本は結果平等な

社会だと私は考えています)


そして、機会平等と結果平等の一方が正し

くて一方が誤りということではないと思い

ます。


目指すところが何なのかということによっ

て、どちらか適しているかということも変

わってきます。


ただ、組織的な力に会社の業績が左右され

る時代にあっては、組織の構成員は個人が

責任をもって行動を決める人である方が望

ましいと私は考えています。


前述の「集団で決める」という方法は、単

なる合意形成であって、積極的な意思決定

をしているわけではありません。


また、「集団で決める」慣例が定着してし

まうと、安易に前例を踏襲し、深く考える

ことなく現状維持をしてしまうなど、思考

停止の状態に陥りやすくなります。


かといって、米国の狩猟型のような考え方

をしていただけでも、うまくいくとは限り

ません。


例えば、米国で考え出された、バランスス

コアカード(BSC)は、米国の会社が、

会計的な利益、短期的な利益の行き過ぎた

追及を反省してできた、会社経営のための

ツールです。


したがって、今回の記事の結論は、「組織

の力を高めるにはどうすればよいか」とい

ことが求められている時代においては、機

会平等と結果平等と統合した、新しい考え

方が組織と個人に求められているというこ

とです。


それでは、それを実現するためにはどうす

ればよいかということが鍵になりますが、

私自身、現在、それを明確に打ち出せない

でいます。


それを明確にするためにも、いま、研鑽を

積んでいるところです。

 

 

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現場改善がグローバル展開につながる

本日配信した、私が制作しているポッド

キャスト番組で、中小企業診断士の神谷俊

彦さんとお話をしました。

 

(ご参考→ https://goo.gl/ibehFg


神谷さんは、製造業を勤め上げた方である

一方で、私のキャリアは銀行勤務でしたの

で、今回の番組では意見は分かれました。


よい会社というのは、現場改善への情熱か

ら成し遂げられると神谷さんがお話しする

一方で、私は経営者の采配や仕組みづくり

で決まると考えています。


ただ、これは、どちらが正しいということ

ではなく、以前、私がご紹介した、ドラッ

カーのいう「知識人と管理者」のうち、神

谷さんは知識人が大切、私は管理者が大切

ということを述べているのだと思います。


(ご参考→ https://goo.gl/JqVRqg


ただ、私は神谷さんのお話を聴いて、確か

にその通りだと思ったことがあります。


それは、家具の製造販売をしている、ス

ウェーデンで創業(現在の本社所在国はオ

ランダ)した、IKEAがグローバル展開

していることです。


IKEAは、現在、フランチャイズ方式を

含め、世界36か国に店舗を出しています

が、このような会社は日本で創業した会社

に中にはありません。


私は、IKEAと同じ事業を営んでいる、

札幌に本社があるニトリも優秀な会社であ

るとは思っていたものの、国外では台湾

と米国にしか進出していません。


両社の違いについて、私は説明できません

でしたが、神谷さんは、「世界のどの地域

でも、同じデザイン、機能、価格で製品を

提供できるようにするために、IKEAの

製造現場では、あらゆる技術を駆使したり

高度な物流システムを構築したりするとい

う改善を精力的に行っている」ということ

です。


私は、ニトリのような会社は、効率的なS

CM(サプライチェーンマネジメント、供

給連鎖管理)の構築を、経営者が主導的に

構築しており、早晩、それをそのまま国境

をまたいで展開できると考えていました。


しかし、日本にグローバル企業が多くない

という現状を考えると、神谷さんのご指摘

のような、現場からの改善の差が、グロー

バル化の差となっているのだと思います。


神谷さんがこのような見方をするのは、も

ちろん事実を踏まえてはいるものの、それ

だけではなく、神谷さんご自身も、長年、

製造現場に携わってきて、現場からの改善

で会社の業績を高めてきたという自負があ

るのだと思います。


そして、結局、その現場改善の意欲の源泉

は、製造現場の情熱ということでした。


今回の記事の結論は、経営者は、熱い思い

を持っている現場担当者の意欲をいかに高

めるか、それを結果につなげるかという能

力も大切になるということです。


これを、現在より、もっと上手に実践でき

る経営者がたくさん登場すれば、日本にも

グローバル展開する会社がたくさん登場す

るのかもしれません。


また、私も、自分の考え方と逆の考え方を

持っている人と話したことは、とても有意

義であったと感じました。

 

 

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殻に籠る経営者

私が銀行に勤務していた時や、コンサルタ

ントとして中小企業の事業の改善のお手伝

いをしている時に共通して感じることなの

ですが、業況がよくない会社の経営者ほど

接触が難しくなります。


例えば、融資に関する相談をするために、

会社を訪問しても不在、電話をしても出な

い、こちらに連絡するよう社員の方に伝言

しても、いつになっても連絡をしてもらえ

ないということが続きます。


このようなとき、前向きに受け止めれば、

現況の改善のために経営者自身も東奔西走

していて、銀行やコンサルタントに連絡す

る余裕がないと解釈できますが、後ろ向き

に考えれば、肝心なことから逃げていると

解釈することもできます。


ただ、私も、時間的な余裕は少ないので、

何度か接触を試みて、ようやく社長に会う

ことが精一杯でした。


したがって、なぜすぐに連絡がとれないの

かということまでは確かめたことはありま

せんでした。


ところが、経営コンサルタントの古尾谷未

央さんのご著書、「借りない資金繰り」

( http://amzn.to/2mX4Jnt )を読んだとこ

ろ、会社の資金繰りが行き詰ってしまった

ある総菜品メーカーの社長の行動について

書かれていました。


「(いよいよ資金が底をつくという段階に

なって)メインの金融機関も、資金ショー

トを見越して準備を始めました。


しかし社長は、今月の給与が出るかどうか

の瀬戸際にも関わらず、商品開発に没頭し

現実から逃避し、経理や外部の人間を避け

るようになってしまっていたのです。


仕入先、社員、金融機関など、すべてが社

長の敵となってしまい、一番楽なところに

逃げたのです。


これには働いている社員全員が失望しまし

た。


殻に籠るのではなく、陣頭指揮を執って危

機を乗り切る姿を見せなければ、社員も本

気になって会社のために頑張ろうとは思い

ません。


2代目社長として先代に指示されたことを

やっているだけなら良かったのですが、自

分が先頭に立って社員を巻き込んでやって

いくことは、普段から社員との信頼関係が

無いと難しく、その構築を避けてきたツケ

が今になって出てしまったのです」


私がこれまで接触のために労力を要してき

た経営者の方のすべてがこのような方とは

限りませんが、中には、この社長のように

現実逃避をする方もいたのでしょう。


ただ、このような社長は悪い例だというよ

うな、単純な批判をすることは、私はここ

ではするつもりはありません。


経営者といっても、人の子ですから、嫌な

ことは避けたいと思うし、私もその立場に

なったことがないわけですから、軽々に批

判することはできません。


では、なぜ殻に籠った経営者の事例を引用

したかというと、つぎの2点をお伝えした

かったからです。


ひとつは、古尾谷さんがご指摘していると

おり、社員との信頼関係の構築を後回しに

してはいけないということです。


これも当然のことなのですが、社長(代表

取締役)の就任は取締役の互選や株主総会

の決議などで行われるのですが、それは社

長というポジションに誰かを就けるための

手続きに過ぎません。


本当の社長に必要なことは、リーダーシッ

プを身に着けることです。


前述の社長は、社長に就任はしても、リー

ダーにはなっていなかった(=社員と信頼

関係を構築していなかった)ということで

あり、このような社長は意外と多いと私は

感じています。


ふたつめは、社長は殻に籠った時点で、実

質的に、会社は終わりということです。


前述の例では、社長が殻に籠ったことによ

り、「仕入先、社員、金融機関など、すべ

てが社長の敵」になってしまいました。


そのような会社は、機能しない状態である

ので、実質的にそこで会社は終わったも同

然です。


確かに、殻に籠らず、「陣頭指揮を執って

危機を乗り切る姿」を社員に見せることは

難しいことなのですが、この社長の役割は

代われる人はいません。


裏を返せば、普段は昼行燈のように見えて

も、会社が土俵際に立たされているという

ときにきちんと役割を果たすことができれ

ば、社長は務まるとも言えます。


社長のポジションに就いた以上、このこと

は覚悟しておくべきであり、それを貫くこ

とができそうになければ、前もって社長を

譲ったり、会社の体力のあるうちにM&A

などによって会社を譲渡しておくことはで

きるでしょう。


ただ、それでも結論を先延ばしにする経営

者の方は多いと感じています。


それは、経営者が孤独になりがちであり、

「将来を考えて、会社をたたむことを考え

てみては」という助言をする人が周りにい

ないこともひとつの要因かもしれません。


そこで、社長が孤独にならないよう、信頼

のおけるアドバイザーを得ることも、社長

としての仕事をまっとうするための重要な

要件といえるでしょう。


このようなこともあることから、私は、い

まは、連絡が取りにくい経営者の方のお手

伝いはお断りしています。

 

 

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プロ野球選手に4割打者がいない理由

公認会計士の岩谷誠治さんのご著書、「経

理の知識ゼロでも決算書が読めるようにな

る本」( https://amzn.to/2Ilancj )に、

プロ野球選手に4割打者がいない理由につ

いて書かれていました。


その疑問の前提として、平成8年に東京六

大学野球首位打者になった慶応大学の高

橋由伸選手(現在のプロ野球読売ジャイア

ンツの監督)は、5割1分2厘の成績を残

すなど、東京六大学野球では、4割打者が

たくさん現れるのですが、これと比較して

プロ野球選手には4割打者がまったくいま

せん。


その理由は、プロ野球選手の打席は多いか

らと、岩谷さんは述べておられます。


プロ野球では、1つのシーズンに140程

度の試合があるので、レギュラーの野手は

年間に400回は打席に立ちます。


一方で、東京六大学野球では、1シーズン

が10試合程度なので、40回程度しか打

席に立ちません。


したがって、東京六大学野球の選手は、

シーズンの10試合の間だけ調子が良けれ

ば、4割の打率をあげることも可能なので

しょう。


しかし、1シーズン400打席のあるプロ

野球選手は、半年以上かけて行われる14

0試合を通して、ずっとよい調子を維持す

ることは不可能でしょう。


そのため、シーズンの間、調子のよい期間

と調子のよくない期間があり、それが平均

されると、2割~3割の打率になるという

ことが、冒頭の疑問への回答として書かれ

ています。


では、このプロ野球選手に4割打者がいな

い理由と会計は、どう関係があるのでしょ

うか?


これについて、岩谷さんは、「規模が大き

い会社ほど、毎年の決算書の変化は小さく

なります。


したがって、規模が大きい会社では決算書

の数値の小さな変化にも意味があります

が、規模が小さい会社は、毎年の決算書の

変化が大きいので、ザックリと決算書を見

た方が、有益な情報が得られます」と書い

ておられます。


これは、当たり前のことなのですが、一般

の人はここまで意識していることはあまり

ないでしょう。


これがどういう時に重要になってくるかと

いうと、中小企業では、売上高のブレが会

社全体に大く影響するということがありま

す。


例えば、売上高が3億円程度の工務店があ

るとします。


その会社では、主に、注文住宅を販売して

いるのですが、たまたま、1棟の住宅の工

期が遅れて、その会社の決算日までに引き

渡しする予定が、翌期にずれてしまったと

します。


住宅の価格が3千万円であったとすると、

その売上高が翌期にずれると、その期の売

上高の約10%が減少してしまうことにな

ります。


これが、売上高が30億円の会社の場合で

は、売上高が1%しか減少しないことにな

るので、会社全体から見た変化は小さくな

ります。


銀行が、融資先の審査をするときは、この

ような中小企業の特徴は理解しています。


そこで、融資審査は、1期の決算書だけで

は審査せず、最低でも3か年分の決算書に

目を通し、複数年の平均値などを算出する

など、より実態に近い状況を把握して融資

審査を行います。


一方、融資を受ける側にも注意すべき点が

あります。


前述の工務店の例では、単純ですが、仮に

引き渡しが遅れた住宅が、遅れずに予定通

り引き渡しできた場合の仮の売上高、仮の

利益額などを計算して銀行に状況を説明す

ると、銀行に自社の状況を理解してもらい

やすくなるでしょう。


ただ、現実的にはもっと複雑な事情で売上

高がぶれることが多いので、セグメント情

報(区分情報)を提供できるようにしてお

くとよいでしょう。


セグメント情報とは、例えば、売上高を、

店舗別、地域別、商品別、顧客別、部門別

といった、内訳で示す情報のことです。


私も、銀行職員時代に、融資先から売上高

が減少したときに「●●部門の売上のうち

●●円が翌期にずれこんだ」と口頭で説明

を受ける時がよくあったのですが、実は、

その会社は部門別に売上高を集計していな

いために、その口頭での説明の裏付が得ら

れないということがほとんどでした。


その口頭での説明が必ずしも信用できない

ということではないのですが、帳簿などを

見せてもらってよく調査をすると、社長の

説明は、売上高の減少の真の原因ではない

ということも少なからずありました。


やはり、きちんとした裏付けがないと、銀

行側はいぶかしく受け止めるでしょう。


話を戻して、今回の記事の結論は、中小企

業にとっては、売上がずれる影響は、大企

業と比較して相対的に大きいことから、部

門別の情報が活用できるよう、より細かい

管理が大切になるということです。

 

 

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