鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

殻に籠る経営者

私が銀行に勤務していた時や、コンサルタ

ントとして中小企業の事業の改善のお手伝

いをしている時に共通して感じることなの

ですが、業況がよくない会社の経営者ほど

接触が難しくなります。


例えば、融資に関する相談をするために、

会社を訪問しても不在、電話をしても出な

い、こちらに連絡するよう社員の方に伝言

しても、いつになっても連絡をしてもらえ

ないということが続きます。


このようなとき、前向きに受け止めれば、

現況の改善のために経営者自身も東奔西走

していて、銀行やコンサルタントに連絡す

る余裕がないと解釈できますが、後ろ向き

に考えれば、肝心なことから逃げていると

解釈することもできます。


ただ、私も、時間的な余裕は少ないので、

何度か接触を試みて、ようやく社長に会う

ことが精一杯でした。


したがって、なぜすぐに連絡がとれないの

かということまでは確かめたことはありま

せんでした。


ところが、経営コンサルタントの古尾谷未

央さんのご著書、「借りない資金繰り」

( http://amzn.to/2mX4Jnt )を読んだとこ

ろ、会社の資金繰りが行き詰ってしまった

ある総菜品メーカーの社長の行動について

書かれていました。


「(いよいよ資金が底をつくという段階に

なって)メインの金融機関も、資金ショー

トを見越して準備を始めました。


しかし社長は、今月の給与が出るかどうか

の瀬戸際にも関わらず、商品開発に没頭し

現実から逃避し、経理や外部の人間を避け

るようになってしまっていたのです。


仕入先、社員、金融機関など、すべてが社

長の敵となってしまい、一番楽なところに

逃げたのです。


これには働いている社員全員が失望しまし

た。


殻に籠るのではなく、陣頭指揮を執って危

機を乗り切る姿を見せなければ、社員も本

気になって会社のために頑張ろうとは思い

ません。


2代目社長として先代に指示されたことを

やっているだけなら良かったのですが、自

分が先頭に立って社員を巻き込んでやって

いくことは、普段から社員との信頼関係が

無いと難しく、その構築を避けてきたツケ

が今になって出てしまったのです」


私がこれまで接触のために労力を要してき

た経営者の方のすべてがこのような方とは

限りませんが、中には、この社長のように

現実逃避をする方もいたのでしょう。


ただ、このような社長は悪い例だというよ

うな、単純な批判をすることは、私はここ

ではするつもりはありません。


経営者といっても、人の子ですから、嫌な

ことは避けたいと思うし、私もその立場に

なったことがないわけですから、軽々に批

判することはできません。


では、なぜ殻に籠った経営者の事例を引用

したかというと、つぎの2点をお伝えした

かったからです。


ひとつは、古尾谷さんがご指摘していると

おり、社員との信頼関係の構築を後回しに

してはいけないということです。


これも当然のことなのですが、社長(代表

取締役)の就任は取締役の互選や株主総会

の決議などで行われるのですが、それは社

長というポジションに誰かを就けるための

手続きに過ぎません。


本当の社長に必要なことは、リーダーシッ

プを身に着けることです。


前述の社長は、社長に就任はしても、リー

ダーにはなっていなかった(=社員と信頼

関係を構築していなかった)ということで

あり、このような社長は意外と多いと私は

感じています。


ふたつめは、社長は殻に籠った時点で、実

質的に、会社は終わりということです。


前述の例では、社長が殻に籠ったことによ

り、「仕入先、社員、金融機関など、すべ

てが社長の敵」になってしまいました。


そのような会社は、機能しない状態である

ので、実質的にそこで会社は終わったも同

然です。


確かに、殻に籠らず、「陣頭指揮を執って

危機を乗り切る姿」を社員に見せることは

難しいことなのですが、この社長の役割は

代われる人はいません。


裏を返せば、普段は昼行燈のように見えて

も、会社が土俵際に立たされているという

ときにきちんと役割を果たすことができれ

ば、社長は務まるとも言えます。


社長のポジションに就いた以上、このこと

は覚悟しておくべきであり、それを貫くこ

とができそうになければ、前もって社長を

譲ったり、会社の体力のあるうちにM&A

などによって会社を譲渡しておくことはで

きるでしょう。


ただ、それでも結論を先延ばしにする経営

者の方は多いと感じています。


それは、経営者が孤独になりがちであり、

「将来を考えて、会社をたたむことを考え

てみては」という助言をする人が周りにい

ないこともひとつの要因かもしれません。


そこで、社長が孤独にならないよう、信頼

のおけるアドバイザーを得ることも、社長

としての仕事をまっとうするための重要な

要件といえるでしょう。


このようなこともあることから、私は、い

まは、連絡が取りにくい経営者の方のお手

伝いはお断りしています。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

f:id:rokkakuakio:20180404162124j:plain