鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リースの薦め

融資のご相談を受ける際は、私はリースを

利用することを薦めています。


その理由を説明する前に、リースは多くの

方がご存知とは思いますが、その特徴を

述べたいと思います。


リースは、法律上は賃貸借契約ですが、

リース物件は、前もってリース会社が

リース物件を所有しておらず、リースの

利用者(ユーザー)が指定したものを

リース会社が購入してユーザーに貸与

するという点が、ひとつめの特徴です。


同じ賃貸借契約であるレンタルは、

レンタル物件を前もってレンタル会社が

所有しており、その点が大きな違いです。


ただし、リース物件は、中途解約が

認められておらず、リース料全額を

ユーザーが支払うことが義務付けられて

います。


リース料全額をユーザーが負担すると

いう点で、リースは、融資によって

設備などを調達する場合と似ており、

これをリースの金融機能と言います。


以上が簡単なリースの特徴ですが、

私がリースの利用をお薦めする理由は

次の通りです。


(1)ユーザーが欲しい機械や設備の

全額をリース会社が負担する。(銀行

からの借入の場合は、必要額の70%

程度が上限となる)


(2)法律上、リース物件の所有者は

リース会社にあり、リース物件が

事実上の担保として利用できる。

そのため、リースの審査は、銀行と

比較して承認されやすい。(機械や

設備などの動産も、法律上は担保に

できるものの、銀行は、手続きの

煩雑さから、動産を担保にする例は

多くない)


(3)リースによって機械や設備を

調達することによって、銀行からの

いわゆる融資枠を確保できる。


以上が、私がリースを薦める理由の

主なものですが、他には、リース料は

定額であり管理がしやすい、機械や

設備の法定耐用年数よりもリース

期間を短く設定し、その期間ですべて

費用にできるなどの利点があります。


一方、リースのデメリットとして、

融資の利率と比較してリース料が割高

であるということが挙げられます。


これについては、私はそれほど気に

する必要はないと思っています。


なぜなら、リースの利用によって

事務の効率化が図れることから、

機械や設備を購入した場合の煩雑な

事務の表面化しないコストが、

リースの利用によって顕在化した

ものということができるからです。


もうひとつ、リースについて注意する

点を述べたいと思います。


それは、「リースによって機械や

設備を調達すると、貸借対照表

資産が計上されないので、会社の

資産がスリムになる」ということを

述べる方が、希にいます。


リース会計では、リースによって

機械や設備を調達したとき、その

資産の相当額をリース資産として

資産の部に計上し、その同額を

リース債務として負債の部に計上

します。


金額がまったく同額とはなりませんが、

会計上はリースによる機械や設備の

導入は、融資によって調達した場合と

同じように考えて、記録します。


ただし、「中小企業の会計に関する

指針」では、リース会計の方法に

よらず、リースを賃貸借として考え、

リース資産やリース債務を計上せずに、

リース料のみを費用として計上する

方法を認めています。


そのため、多くの中小企業では、

会計上はリース契約を賃貸借契約と

して取り扱っています。


その結果、リース資産などは、貸借

対照表には現れませんが、銀行は、

リースも借入とみなして考えている

場合もあります。


したがって、リースによって会社の資産が

スリムになるという考え方は採らない

ことをお薦めします。


なお、リースに関する知識と実務に

ついては、拙著「図解でわかるリースの

実務いちばん最初に読む本」に詳しく

記載されていますので、ご参考にして

いただければ幸いです。

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事業部制組織とカンパニー制組織

今回は、事業部制組織、カンパニー組織、

そして持株会社について説明します。


まず、それぞれについて説明します。


最初の事業部制組織は、米国のGE社が

導入したと言われています。


事業部制組織が導入された背景には、

会社の規模が大きくなったということも

ありますが、その直接的な要因は、

複数の事業や、複数の地域で事業を

展開するにあたって、それぞれの課題を

それぞれの事業や地域で解決させようと

いう主旨で、事業部制を導入したと

いわれています。


事業部制の特徴としては、事業部長

には、大きな権限が与えられている

ということです。


具体的には、事業部の事業計画策定、

製品価格の決定、事業部内の人事権

などです。


その代わり、各事業部には、利益を

得る義務が課されます。


このことから、事業部はプロフィット

センターと呼ばれることもあります。


そのため、同じ会社内であっても、他の

事業部との間の取引では、社外へ販売

する価格と同じ価格で取引される、

いわゆる社内振替価格が適用されます。


つぎに、カンパニー制ですが、これは、

事業部制よりも独立性の高い、社内

カンパニーを置く制度です。


事業部制との違いは、カンパニーのトップ

である、カンパニープレジデントには、

設備投資の権限を有していることです。


その権限の見返りとして、社内カンパニー

には、投資に対する収益を得ることを義務

付けられています。


そのため、社内カンパニーは、インベスト

メントセンターと、呼ばれることがあり

ます。


そして、社内カンパニーは、カンパニー

ごとにそれぞれ貸借対照表を作成し、

投資に対する利益が得られていることを

本社に対して示すことになります。


このような社内カンパニーが採られる

背景には、社内カンパニーをあたかも

ひとつの会社に見立て、起業家精神

発揮させようという意図があります。


最後に、持株会社ですが、これは、

社内カンパニーを法律上も独立した

個別の会社とし、親会社である持株

会社が子会社をたばねていくという

管理の方法です。


ちなみに、ここで改めて説明をしておくと

日本の会社法では、他の会社から議決権の

50%を超えて保有されているなど、

その会社から実質的に支配されている

会社を子会社と定義しています。


一方、子会社を支配している会社は、

親会社といいます。


また、独禁法では、会社の資産のうち、

子会社の株式の取得価額の合計額が

50%を超える会社を、持株会社

定義しています。


持株会社のうち、自らも事業を行っている

会社は事業持株会社、株式の保有だけを

している会社を純粋持株会社といいます。


かつては、事業持株会社が多く存在しま

したが、最近は、組織再編などを行う

場合は、純粋持株会社を設立する例が

多いようです。


持株会社の場合、他社を買収することに

よって、直ちに自社の傘下にしたり、

不採算の子会社を売却または整理したり

することが容易である、という利点が

あります。


なお、持株会社とその子会社は、法律上は

別会社であっても、会計上はひとつの会社

とみなして、連結財務諸表が作成される

ことが一般的です。


今回の結論は、事業部、社内カンパニー、

持株会社の特徴を示しただけです。


複数の事業を営んでいる会社が、これから

さらに積極的な事業展開を行おうと考えて

いる場合は、前述のような制度から、どの

ような制度が適切かということを判断する

際のご参考としていただければと

思います。


ただ、会社によっては、事業部制や社内

カンパニーという名称の部署があっても、

それぞれ、その会社の定義で組織が

作られており、必ずしも前述の通りとは

限りませんので、ご注意ください。

 

 

 

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なぜ利益を得なければならないのか

「会社は利益を得なければならない」と

いうと、ほとんどの人は当然のことと

考えると思います。


では、「なぜ、会社は利益を得なければ

ならないのか?」という理由については

明確なものはあまり聞いたことはありま

せん。


そこで、今回は、私が考える、会社が

利益を得なければならない理由について

述べてみたいと思います。


そのひとつめは、物理的なもので、会社が

成長するために利益が必要になるという

ことです。


会社が得た利益は3つに分けられます。


ひとつめは法人税として納税され、

ふたつめは株主への配当金として

支払われ、最後は内部留保として会社に

残ります。


ところで、配当がなければ、株主は

出資をしようとする意欲が低くなり

ますが、中小企業の場合、ほとんど

配当は行われていないため、問題は、

内部留保が増えるかどうかという

ことです。


内部留保が増えるということは、

純資産の部(=自己資本)が増える

ということです。


事業を拡大するには、資産も増やさな

ければなりませんが、資産を増やす

には、自己資本も増えなければなり

ません。


自己資本が増えなくても、融資を

受けて資産を増やすことができる

のでは?」と考える方もいると思い

ますが、融資だけで資産を増やす

ことは、ほぼ不可能です。


自己資本の額を変えずに、融資だけを

増やせば、自己資本比率が低くなり、

そのような会社は不安定な会社という

ことになります。


そのような会社へは、銀行は融資をする

ことは避けますので、必ずしも増加する

資産のすべてを自己資本であてる必要は

ありませんが、増加する資産に比例して

自己資本を増やさなければなりません。


利益を得なければならない理由のふたつ

めは、会社の存在意義を維持するという

ことです。


例えば、ある会社の事業で、60円の

商品を仕入れて、それを100円で販売

しているとします。


このとき、その事業では、商品ひとつ

あたり、40円(=100円ー60円)の

付加価値を産み出しているということに

なります。


さらに、その事業の間接部門の費用が

商品1つあたり20円かかっていると

すれば、商品1つあたりの利益は20円

(=100円ー60円ー20円)という

ことになります。


もし、この会社が、80円未満でしか

商品を販売できなくなったとしたら、

この会社の事業は赤字になってしまい、

意味のないものとなってしまいます。


その理由はつぎのとおりです。


まず、商品を仕入価格の60円未満で

販売することを肯定する人はいない

でしょう。


次に、商品を60円以上で販売でき

れば、仕入価格との差額は付加価値と

なりますが、その付加価値が20円

未満(=販売価格が60円未満)で

あるとすれば、その付加価値を得る

ために、20円の費用をかけることも

肯定する人はいないでしょう。


このように考えれば、赤字の出る事業は、

意味のないことということがわかります。


これに対し、次のように反論する方が

いると思います。


ひとつめは、商品の価格が低いのは、

競争が激しい、デフレになっている、

社会的な要請などの、様々な要因がある

という反論です。


これには根本的な勘違いがあります。


そのように主張する方は、「低価格で

販売すること=利益が少なくなること」

と考えています。


しかし、大手の会社は、「低価格で販売

すること=(適正な利益を維持しつつ)

低価格を実現するしくみ(ローコスト・

オペレーション)を実現すること」と

考えています。


要は、低価格での販売は競争仕方の

ひとつであり、その目的は利益を得る

ということに変わりはありません。


ですから、自社の商品の市場価格が低い

ことが、利益を得られない理由には

ならないということです。


反論のふたつめは、「会社の事業の目的は

利益を得るためだけではない」というもの

です。


これはCSR(企業の社会的責任)などを

念頭に置いているものでしょう。


例えば、「売り手よし、買い手よし、世間

よし」といった近江商人の教えのように、

会社はもうけのことだけを考えていては

ならないというものです。


これも勘違いがあります。


CSRは、自社の属する会社の地域、国

などの発展がなければ、自社も発展しない

というい考え方であり、地域や国に貢献

することをもって、自社が赤字になる

ことを肯定することにはなりません。


もし、自社が社会にとって必要とされる

事業を行っているが、黒字を見込めないと

いうことであれば、それは、株式会社では

なく、自治体が行うべきでしょう。


民間でやらなければならないとすれば、

すくなくとも、NPO法人、協同組合、

社会福祉法人、学校法人、宗教法人などの、

特殊な事業体で行うべきと思います。


以上が、私の考える、会社は利益を得な

ければならない理由です。


ただ、会社が利益を得なければならない

理由が分かったとしても、現実的に会社が

なかなか黒字にならないという会社もある

でしょう。


だからこそ、赤字になったときは、それを

放置したり、また、経営者が自らが経営

する会社が黒字であるか赤字であるかを

把握できていないという状況は避ける

べきと思います。

 

 

 

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社長とCEO

「社長」という肩書は日本人にとって

それほど珍しくない肩書ですが、最近、

「CEO」という、わかるようでわから

ないような肩書をつけている方が増え

ました。


この、CEOについては、専門書や

解説書では「最高経営責任者」という

説明をしていますが、これだけでは

よくわからないでしょう。


なぜなら、「社長兼CEO」などという

肩書をつけている人がいた場合、

「CEOが最高経営責任者ならば、社長は

責任者ではないのか」という疑問が残ると

思うからです。


要は、Chief Executive Officerの和訳で

ある「最高経営責任者」ということば

だけでは、きちんと、CEOを説明できて

いないということです。


そこで、今回は、CEOについて説明

したいと思います。


その前に、日本の会社の経営者

(≒取締役)について説明したいと

思います。


日本の会社の取締役は、業務執行と、

監督・意思決定の2つの役割を担って

いると言われています。


(厳密には、取締役会設置会社、指名

委員会等設置会社では、業務執行を

担わない取締役も存在しますが、

ここでは、日本の中小企業の大部分が

あてはまる、取締役会を設置して

いない会社を前提に説明します)


業務執行とは、会社の事業の指揮・管理を

行うことです。


代表取締役(≒社長)は当然に業務執行を

行います。


社長以外にも「専務取締役(営業担当)」

「常務取締役(首都圏担当)」、「取締役

工場長」などの担当業務を持った役員も、

それぞれ、営業、首都圏の事業、製造部門

などの業務執行を行います。


一方、監督・意思決定は、取締役が株主の

代理人としての役割を担うことです。


株式会社は、不特定多数の株主が出資を

して、それぞれ議決権を有していますが、

頻繁に株主総会を開くことができない

ために、日常的な意思決定や事業の監督

などについては、株主の代理人としての

取締役に委任することになります。


取締役が決定することは、法律に義務付け

られている項目もありますが、それだけ

でなく、事業計画の策定、戦略の立案

などを行います。


なお、話がそれますが、中小企業などで、

株主が社長ひとりだけ、もしくは67%

以上の議決権を社長が持っているという

ような会社が多いと思いますが、この

場合、「社長の意思決定=株主の意思

決定」ということになります。


このような会社で、社長以外に取締役が

いるとしても、形式的には株主の代理人

ではあっても、実態としては、名ばかりの

取締役になってしまいます。


ところで、米国の会社では、Directorが

日本の会社の取締役に相当します。


しかし、Directorは意思決定や監督を

行う役割だけを担っています。


米国の会社で業務執行を担う人たちは、

Officerと言います。


そして、Officerの中のトップがCEOや

COOということになります。


Officerの中で、担当する部門がある人は

CFO(最高財務責任者)や、CTO

(最高技術責任者)、CHO(最高人事

責任者)などと呼ばれます。


このDirectorとOfficerの関係は、日本の

指名委員会等設置会社の取締役と執行役の

関係に似ています。


というのも、指名委員会等設置会社は

米国の会社の制度を模しているからです。


なお、米国の会社のPresidentは

Directorが就きますが、日本の指名

委員会等設置会社では、代表者(会社の

行為を会社に代わって行う人)は、

取締役ではなく代表執行役です。


ただ、日本では、社長、専務取締役、

CEOといった肩書は、法律に基づく

ものではないので、それぞれの会社が

その会社で定めた役割を担う人につける

ことになります。


もし、日本の会社で、経営者の中に

CEOの役割を担う人を置きたいので

あれば、指名委員会等設置会社にして

代表執行役に就ければよいのではないかと

私は考えています。


直ちに指名委員会等設置会社にすることは

できないものの、経営者を、業務執行を

担う人と監督・意思決定を担う人に分ける

体制にしたいということであれば、

いわゆる執行役員制度を導入し、

業務執行の最高責任者を「取締役兼業務

執行役員社長」などの肩書をつけることも

可能だと思います。


ここまで書いた内容から、私が日本の

会社でCEOの肩書をつけることを

否定的に考えていると感じる方も多いと

思いますが、決してそうではありません。


会社の運営について、透明性を高めて

いこうとする場合、CEOのような役割を

持つひとを置くことはよいことだと思って

います。


そのためにも、日本の会社にCEOが

たくさん登場することが望ましいと私は

考えています。


ただし、実態をともなわずに、単に、

外見をよくするためだけにCEOという

肩書をつけるようなことは好ましいこと

ではないと考えます。

 

 

 

 

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融資の裏技は会社の課題の先送り

私ごとで恐縮ですが、私は、毎年、人間

ドックを受診するたびに、節度ある生活を

続け、健康的な体質を目指してくださいと

注意されます。


これは至極当然のことです。


ましてや、暴飲暴食を続けても太らない

ようになる薬があるなどとは考えも

しません。


しかしながら、ビジネスの世界では、

「どんな会社でも融資を受けられる裏技が

あります」というキャッチコピーが飛び

交い、そのような裏技を信じる経営者の

方も少なからずいるようです。


私はこの「どんな会社でも融資を受け

られる裏技」というものはそもそも存在

しないと考えています。


ただ、仮に裏技があるとして、それでも

おかしいと考えます。


その理由のひとつは、銀行は融資を伸ばす

ことに努力しているからです。


銀行は融資をしなければ利益を得ることが

できませんから、黒字の会社や、赤字で

あっても、それが一過性であると考え

られる会社に対しては、ほぼ、融資に

応じるでしょう。


ですから、健全な会社では、裏技を使う

必要はないと言えます。


ここで、「中小企業はなかなか利益を得る

ことができないから、『裏技』が必要に

なることがある」という反論があると

思います。


これに対しては、「それでは、赤字の

会社に融資をすれば、その会社は利益を

得られるようになるのでしょうか?」と

逆に問いてみたいと思います。


融資によって、短期間の資金繰りは確保

できるのですが、融資によって、直接的に

会社を黒字にすることはできません。


確かに、融資によって一定の期間、資金を

確保できるので、その間に事業を黒字に

することができるということも考えれれ

ます。


そして、業績が芳しくなくても、銀行の

協力を得て、黒字になろうとして努力を

する会社はたくさんあります。


しかし、その一方で、融資による支援を

受けても、事業の改善に本腰を入れずに、

ずっと赤字から抜け出せない会社も

少なくありません。


そのような会社が、「裏技」を欲しがる

のでしょう。


そして、赤字の会社は、なぜ赤字なのか

ということを考えると、ドライな表現

ですが、顧客から支持を得られていない

からでしょう。


よく、「赤字の会社に銀行は冷たい」と

いうことをいう経営者の方がいますが、

銀行は会社の事業の結果を評価しており、

その結果というのは、顧客からの支持が

どれくらいあったかという結果です。


すなわち、銀行よりも前に、その会社は

事業のよしあしについて、顧客からの

評価を受けているわけです。


これは、経験的に感じるのですが、

銀行の融資姿勢に批判的な中小企業の

経営者の方は、どういうわけか、顧客

からの自社の評価についてはあまり

関心がありません。


その理由としては、私の想像ですが、

事業を継続させるための対策として、

顧客から支持を得るようにすること

よりも、銀行に融資を依頼することの

方が容易と考えているからではないで

しょうか。


これは、前述のように、融資を受けても

会社の事業は黒字になるわけではない

ので、本質的な課題から目をそらして

いるに過ぎません。


ここで話をまとめると、銀行は融資を

伸ばすことには積極的なので、黒字の

会社は、融資を受けるための裏技は

必要ない。


赤字の会社は、いわゆる「裏技」という

ものを使い、一時的に事業を継続させる

ことで、事業体質を改善するという

本質的な課題に取り組むことを避けようと

していると考えらえる、ということです。


要は、ゆでガエルの状態から早く抜け出す

ことが大切ということです。

 

 

 

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リーダーシップと会社の業績

リーダーシップについては、さまざまな

研究が行われていますが、リッカートの


その中で、私が面白いと思ったものに、

米国の心理学者である、リッカートの

唱えた、システム4理論があります。


リッカートは、リーダーシップによる

組織の管理システムを次のように、

4つに分類しました。


システム1:権威主義・専制型

リーダーは部下を信頼しておらず、意思

決定に参加させない一方で、部下は恐怖に

よって働かされる。


システム2:温情・専制型

リーダーはあまり部下を信用しておらず、

多くの意思決定はリーダーが行う。部下に

対しては飴と鞭により動かそうとし、

部下はリーダーを恐れながら仕事をする。


システム3:参画協調型

リーダーは部下の大部分を信用し、

最終的な決定はトップが行うものの、

個別的な事項に関する決定の権限は

部下に委譲されている。コミュニケー

ションも確保され、部下の管理活動への

参画も動機付けとなっている。


システム4:民主主義型

リーダーは部下に全幅の信頼を置いて

おり、意思決定も全員で行われる。かつ、

コミュニケーションも確保され、組織と

しても統率されている。


組織の状況や、おかれている環境に

よって望ましいリーダーシップの

あり方は変わると思われ、どれが優れて

いて、どれが劣っているとは言えないと

思いますが、リッカートによれば、

システム4の状態の会社が最も業績が

よいとしています。


このように書くと、民主主義型の

リーダーシップを目指すことが

望ましいということになりますが、

しかし、実は、民主主義型のリーダー

シップを実現するには、ある程度の

前提条件が必要になると私は考えて

います。


それは、従業員の方たちの習熟度です。


なぜなら、従業員の方たちにも意思

決定に加わってもらうことになる

からです。


しかし、これは、これまで私が何度も

述べてきていますが、一朝一夕で実現

することは難しいことです。


でも、業績のよい会社を目指すには、

このようなリーダーシップを実現

することがいちばんの近道であると

私は考えています。


とはいえ、多くの会社では、短期的に

利益を得たいと考える方が多く、結果と

して、温情・専制型か、または、権威

主義・専制型のような、リーダーシップ

でしか会社を率いることができない

経営者が多くなっていると思います。


今回の結論も、これまで私が述べてきて

いることと重なりますが、従業員の方の

習熟度を高めることが大切ということ

です。


従業員の方たちの習熟度が高まれば、

競争力が高い会社になることは間違い

ありません。


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決算書の作成は誰のために行うのか?

私が融資のご相談を受ける会社は、業績が

あまり芳しくない会社が多くを占めます。


そこで、そのような会社が融資を受け

られるようになるためには、赤字の原因、

その対策、今後の見通しを添えて、銀行に

融資を依頼することになります。


ところが、その会社の赤字の原因を調べ

ようと思っても、実は、すぐにはそれが

分からないということがよくあります。


社長に赤字の原因をきいてみても、

それが社長の想像に過ぎないことも

よくあります。


では、なぜ赤字の原因がすぐにわから

ないのかというと、そのような会社の

決算書は、最終損益が分かるためだけの

最低限の経理しか行われていないから

です。


では、どのような経理が望ましいのかと

いうと、直接費(売上原価など)、間接費

(主に販売費・一般管理費)が明確に

わかる、または、顧客別、製品別、

部門別に損益がわかるという損益計算書が

望ましいと言えます。


しかし、そのようなことが分かるように

なっていない会社の場合、私は、伝票

などの資料までたどり、赤字の原因を

探るようにしています。


その結果、社長が考えていた赤字の

原因と、実際の赤字の原因が異なることが

あります。


例えば、社長は採算がとれていると思って

いた製品は、粗利益は得られているものの

固定費を吸収するほどの粗利益は得られて

いないために、結果として赤字になって

いるというような例は珍しくありません。


このような会社は、社長が改善すべき点を

分かっていない訳ですから、いつまで

経っても、業績は改善しません。


むしろ、悪化するばかりでしょう。


そして、そのような会社は、決算は行って

いるものの、それは法律で義務付けられて

いる、税務署に申告しなければならない、

という理由だけで決算を行っているので

あり、自社の業績の改善にはまったく

役立ててはいません。


さらに悪いことには、そのような会社の

経営者の方の中には、決算書作成は、

税務署や銀行のために行っているものと

いった認識をしている場合もあります。


このような会社は少ないですが、利益を

得るために行っている事業活動なのに、

利益が出ているかどうかを経営者の方が

分からない状態になっているという

ことはおかしな状態です。


話しを戻して、決算書は、経営者の方が

進むべき方向を誤らないための指針を

調べるための最低限の資料です。


決算書をしっかり活用することなしに、

業績を改善したり、銀行からの融資を

容易に得られるようになったりする

ことはないでしょう。

 

 

 

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