[要旨]
ビジネスの目的は、顧客の課題解決ですが、架空の人物である「ペルソナ」を設定し、そのペルソナ一人を自社の顧客に絞り込むこで、顧客の問題を明確にでき、そして、顧客の問題解決を追求することで、高い顧客満足を実現し、さらに、収益性も高めることが可能になります。
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今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの佐治邦彦さんのご著書、「年商1億社長のためのシンプル経営の極意」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、これからは「何をやれば儲かるか?」ではなく、「何のためにやるか?」で、ビジネスの可能性が大きく変わる時代であり、どんな業界が儲かるかを考えるより、自社の強みを最大限に発揮できるビジネスモデルをつくり上げることが大切ということを説明しました。
これに続いて、佐治さんは、ペルソナの重要性について、改めてご説明しておられます。「すべてのビジネスの目的は、顧客の問題解決です。どんな問題を持った人たちを対象にするかを決めることが、自社の市場を明確にします。顧客の問題とは、『不安』、『不満』、『不便』、『欲求』です。顧客のどんな問題を解決するのかを明確にすることで、顧客の心をつかむための活動が明確になります。
顧客の問題を明確にするために、まず、対象顧客を、たった一人にまで絞り込んでいきます。(中略)これを『ペルソナ(最重要顧客)』と言います。たった一人に絞り込むことで、顧客の問題を明確にできます。そして、顧客の問題解決を追求することで、高い顧客満足を実現できるのです。そして、収益性も高まります。しかし、通常は、データ分析によって市場選択している会社が多いのが現状です。例えば、これから伸びる市場だと、データ分析で導き出された『高齢化市場』や『インバウンド市場』を選択している会社は少なくありません。
ところが、成長市場には、たくさんの競合が参入し、あっという間に成熟しますし、それが自社の強みが発揮できる市場とは言い切れないのです。また、現状の顧客の中で最も多いお客様を分析して市場を選択することもあります。しかし、抱えている顧客層があるとしても、それが価格の安さで選ばれているとするならば、その顧客に自社の価値は届いてはいません。であるならば、どんなお客様が重要顧客なのかを、もう一度、見直してみる必要があります。それでは、自社の強みを最も発揮できる市場とはどんな市場(ペルソナ)なのでしょうか?
それは、顧客の問題に深く共感でき、そんな顧客にお役立ちしたいと、心から思える市場を選択することです。顧客の問題に深く共感することで、相手の問題をしっかりと受け止められます。顧客にとって、自分の問題を深く理解してくれているということはとても重要です。それにより、顧客から高い信頼を得られるのです。そして、その人のために、何とかしてあげたいと心から思う気持ちがお客様に届き、顧客に高い満足を提供できるのです。つまり、自社にとって良質な顧客を選択することが重要なのです。自社の強みを最大限に活かすために、良質な顧客を明確にしましょう」
ペルソナの成功事例で有名なものは、スープストックトーキョウです。同社では、「秋野つゆ」という架空の人物をペルソナに設定しました。そして、彼女の特性を、「独身か共働きで、経済的な余裕があるバリキャリ37歳の女性、社交的な性格、シンプルさやセンスの良いものを好むが、個性的でこだわりがあり、装飾よりも機能を好む、プールに行ったらいきなりクロールで泳ぐ」など、細かく想定しています。
この、「秋野つゆ」を満足させるための商品開発や店舗設計などが、同社の個性を際立たせることになり、それが同社の成功につながっています。ところで、佐治さんも少し触れておられますが、ペルソナに近い考え方に、ターゲティングというものがあります。これは、データ分析により顧客を絞り込む手法です。私は、ターゲティングは効果がないと思いませんが、これも、佐治さんがご指摘しておられるように、他社も同じターゲティングをしてしまえば、効果が薄れてしまうという弱点があります。
一方で、ペルソナは、対象顧客を1人に絞ることで、自社の独自性を際立たせることができ、それが競争力を高めることになります。このペルソナを設定することについては、顧客を狭めてしまうのではないかという心配をする方もいますが、そのようには考えずに、自社の独自性を高める手法と考えればよいと思います。スープストックトーキョーも、秋野つゆさんをペルソナにしていますが、彼女と異なる属性の顧客も多く利用しています。逆に、秋野つゆさんと違う属性の人であっても、特徴のないスープ店より、特徴のあるスープ店を利用したいと感じるのではないでしょうか?
2024/1/23 No.2596