[要旨]
有識者の間では、単に、ゾンビ企業だけであるというだけで、退出すべき会社と断定してはいけないという意見もありますが、例えば、融資の返済のリスケジュールをしてもらっている、すなわち、融資利息以上の利益を稼ぐことができないだけでなく、融資元金の返済原資の捻出もままならない会社については、業績が回復する見込みは極めて低くなり、銀行から支援の継続をしてもらうことが難しくなると考えることができます。
[本文]
今回も前回に引き続き、東京商工リサーチ(TSR)のWeb記事、「2026年『ゾンビ企業って言うな!』-金利引き上げ、窮境にある企業がより窮境に-」に関し、私の考えるところを述べたいと思います。前回は、金利が上昇する中で、ゾンビ企業の割合が増加すると懸念されていますが、事業を継続させるためには、最終的には利益を出すしかないので、銀行からリスケジュールに応じてもらっているなど、支援を受けている会社は、長期的には利益を得ることができなければ、銀行からの支援を続けてもらうことができなくなるということについて説明しました。
ここまで、5回にわたり説明してきたゾンビ企業ですが、このゾンビ企業をどう評価するのかは、見解が分かれています。例えば、成城大学の後藤康雄教授は、経済産業省に設置されている有識者会議である、中小企業・小規模事業者政策基本問題小委員会で、2024年10月1日に、次のように発言しています。
「最近ゾンビ企業という言葉が浸透しています。個人的にはこの言葉を中小企業に適用するのはちゅうちょしますが、既に浸透していますので使わせていただきます。このゾンビ企業の淘汰、という文脈で語られていることに近い話です。経営不振企業とゾンビ企業は同義ではありませんが、オーバーラップするのは事実です。では、ゾンビ企業は経済の足を引っ張るのでどんどん淘汰すべきなのでしょうか。
確かにマクロ的にはそれらのグループが成長力を押し下げている形にはあります。しかし、そもそもゾンビの客観的線引きは極めて困難です。また、特に小規模事業者では、ある時点でゾンビのように見えて、その後回復するということは珍しくありません。経済の足を引っ張るからといって、積極的かつ一律に退出を迫るというのはミクロ的な経済公正性から問題があります」
私も後藤教授の考え方にほぼ賛成です。ただし、後藤教授の指すゾンビ企業は、国際決済銀行の定量的な定義によるゾンビ企業、すなわち「利益が支払利息を下回る会社」のことだと思います。機械的に定量的定義で判定されたゾンビ企業の中には、業績が回復する見込みの高い会社も存在すると私も感じています。それでは、日本銀行の定性的な定義に基づくゾンビ企業、すなわち「業績が悪くて回復の見込みがないにもかかわらず、銀行等の支援によって存続している企業」の場合はどうでしょうか?
業績の回復の見込みの有無を100%正確に断定できないとしても、銀行等の支援、例えば融資の返済をリスケジュールしてもらっているとすれば、銀行から見た負担は決して軽くはありません。前述したように、定量的な定義によるゾンビ企業の中には、業績の回復の見込みがある会社も含まれていると思いますが、単に業績が悪いというだけでなく、融資の返済のリスケジュールを受けている、すなわち、融資利息以上の利益を稼ぐことができないだけでなく、融資元金の返済原資の捻出もままならない会社については、業績が回復する見込みは極めて低いと私は考えています。
また、これは私が銀行に勤務していた経験での肌感覚なのですが、定性的な定義によるゾンビ企業の多くは、会社組織が家業的(人間関係でつながっている組織)であり、あまり自律的ではありません。会計記録も不正確であったり不透明な部分が多く、仮に事業再生計画を策定しても、それをきちんと遂行できる体制にあるか疑問を感じることも少なくありません。
確かに、リスケジュールをしたからといって事業を回復できる可能性がゼロだとは断定できません。しかし、融資の返済のリスケジュールをしている間に、業績の回復のための努力の成果が現れず、何度もリスケジュールを繰り返すことになれば、最終的に金融機関は、その会社は回復の見込みがないと判断し、支援の継続に応じないとことになる可能性が高まることになると、私は考えます。
2026/8/7 No.3523
