[要旨]
公認会計士の金子智朗さんによれば、売上もコストも、何らかの行動の結果であって、会計上の問題は会計では解決できないとご指摘されておられますが、このことを理解せず、闇雲に「コストを削減しろ」と叫ぶだけの経営者や会社幹部は少なくないので、具体的な行動を起こさなければ、財務状況は改善しないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、グーグルの幹部は、「予備知識が多すぎることは、イノベーションを阻害しかねず、今起きている事態について知りすぎていると、困難だと結論づける理由を十指に余るほど思いつく」と言っており、すなわち、いわゆる頭のいい人は、できない理由を考えるのが得意であることから、経営者は、社内に行動しない人が増えないような働きかけをすることが大切だということです。
これに続いて、金子さんは、コスト削減は掛け声だけでは実現できないということについて述べておられます。「顧問先の会社の経営会議などに同席すると、その会社の上司が部下に向かって、『もっと売上を上げろ』とか、『もっとコスト削減しなさい』などと言っている場面によく遭遇します。中には、『コスト削減!』と書かれた大きな貼り紙を、会社の至る所に貼っているような会社もあります。しかし、『売上を上げろ』と言って売上が上がったり、『コスト削減!』の貼り紙でコストが下がるくらいなら、誰も苦労はしません。
重要なのは、その先です。具体的に一体どういう行動をとるベきなのか。そこが一番大事なところです。どうやったら売上が上がりコストが下がるのか、一生懸命に財務分析をしてその答えを見つけようとしている人をときどき見ます。頭のいい人ほど、こういうことをします。優秀と目されている人がいる経営企画部門辺りで、いかにもやっていそうなことです。しかし、売上やコストという会計上の問題は会計では解決できません。売上もコストも、何らかの行動の結果です。原因となっている行動を変えない限り、その結果である会計数値は変わりません。もし、会計数値を直接変えたら、それは粉飾です。
財務分析が全く無意味とは言いませんが、数字をいじくりまわすのはほどほどにして、その原因となっている行動に目を向け、行動をどう変えるかということを考え、そして実際に行動を変えることが何より重要です。『同じことを繰り返し、違う結果を期待すること、それを狂気と言う』と言ったのは、物理学者のアインシュタインです。物理学を持ち出すまでもなく、原因となっている行動を変えずに、利益という結果だけよくなることを願うのは、自然の摂理からいってもあり得ません」(212ページ)
金子さんは、「売上もコストも、何らかの行動の結果」であって、「会計上の問題は会計では解決できない」とご指摘されておられますが、このことを忘れてしまう人は少なくないと、私も感じています。その代表的な例が、「上司が部下に向かって、『もっと売上を上げろ』」と言っているようなシーンです。このような上司は、自覚していないかもしれませんが、表面的にはコスト削減に努力しているように装っていても、潜在意識では、「コスト削減は恐らく不可能であろうから、掛け声だけをあげてやり過ごそうとしているのでしょう。
では、コスト削減は、どのように実践すればよいのかというと、すかいらーくの配膳ロボットの導入がよい事例だと思います。同社は、「2021年8月より、フロアサービスロボットの導入をスタートし、2022年12月27日に、『ガスト』、『しゃぶ葉』、『バーミヤン』をはじめとする、全国約2,100 店舗に3,000台のロボットの導入を完了」したそうです。その結果、ガストでは、(1)ランチピーク回転率が2%改善、(2)片付け完了時間が35%削減、(3)スタッフの歩行数が42%減少という効果があったそうです。
これにともなうコスト削減の効果は公表されていない、というよりも、ロボット導入の効果は、コスト削減だけでなく、さまざまな効果があるので、コストだけの効果を抽出することはできないのだと思いますが、コストを抑える効果があったことは間違いないでしょう。もちろん、こういった新たな方法を見つけたり、導入を決断し、定着させることは、考えるよりも容易ではないことも事実だと思います。しかし、それができるかどうかが、現在のような複雑な経営環境の中で経営者に問われている真の能力なのだと思います。
2026/7/7 No.3492
