鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

価値のない行動は何もしない方がマシ

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、業績を高めるために最も大切なことは行動力であり、特に、闇雲に行動するのではなく、きちんと利益につながる行動をすることが大切だということです。しかも、利益につながらない行動もコストが発生するので、さらに業績を悪化させてしまうことになります。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、財務会計の損益計算書の最も下には当期利益が記載され、それで業績が評価されますが、これを、「人件費前利益」に変更してみると、株主への利益と従業員への利益を同列に置くことになり、それを最大化しようとする意欲が起き、また、従業員からの貢献に報いることにもなるということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、業績を改善するために最も大切なことは行動力であるということについて述べておられます。「ここまで、同じモノを売っているのに儲かっている会社と儲かっていない会社がある理由をいろいろと述ベてきましたが、もし、『一つだけ理由を挙げろ』と言われたら、行動力の違いを挙げます。もちろん、ただ行動すればいいというわけではありません。『汗水たらして頑張っている姿は美しい』という価値観は根強いですが、それは時に危険でさえあります。

その先が崖とも知らずに全力疾走している姿を思い浮かベれば分かるように、何も考えずに間違った方向に行動することは、結果が出ないどころか、致命的な結果にさえつながります。がむしゃらに努力する前に、努力の方向を間違えないということは、それはそれでとても重要なことです。また、付加価値のない行動なら、何もしないでじっとしている方がマシです。何もしないでポーつとしているのは気まずいため、ついつい何か行動をして、仕事をしている振りをしてしまうかもしれませんが、そんな行動は余計なコストを発生させるだけです。

しかし総じて現実を眺めれば、机の上で考えてばかりでなかなか行動に移さなかったり、慣例というだけでどうでもいいことは頑なにやり続けるのに、本当にやるべきことは、『例がない』というだけの理由でやらなかったりすることが非常に多く見られます。行動しなければ、何も起こりません。起こるはずがありません。みんな、そんな当然のことは分かっているはずなのに、行動しない。もしくは、ものすごく時間がかかる。私から見れば、それはもう歯がゆいばかりです」(206ページ)

改善のための行動しなかったり、利益獲得に関係のない行動しかしなかったりすれば、会社の業績は下がることは明らかなのですが、経営者や従業員がそのような状態となっている会社は、残念ながら少数派となっていることが実態のようです。そうなってしまう理由については、私がこれまで何度もお伝えしてきましたように、現状を維持すれば責任を問われることがないと、経営者の方や、その部下の方たちが考えてしまうからであり、これについて、再び、ここでお伝えする必要はないでしょう。(念のためにお伝えしますと、「現状を維持することで責任を問われることはない」という考え方は誤りです)

そこで、いわゆるオーナー会社の経営者の方が、業績が悪いにもかかわらず、現状を維持しようとしていれば(表向きは「変化することが大切」と口にしていても、行動がともなわない場合も含みます)、その会社は、失礼な表現で恐縮ですが、ゆでがえるの状態であり、1日や2日では状況の悪化は感じられなくても、1年、2年と経つうちに、気がつくと事業を継続できない状態になってしまいます。では、改善活動を継続できるようにするにはどうすればよいのかというと、これもたくさんの方法が考えられます。

そのひとつをご紹介しますと、毎月、10日までにメインバンクを訪問し、前月の業況を報告します。その時は、月次決算書を使い、前月の実績、計画との差、前年同月との差、実績が計画を下回っているときはその改善策を報告します。さらに、期初から前月までの累計についても同様に、前月までの累計の実績、計画との差、前年との差、計画を下回っているときはその改善策を報告します。もし、月次決算書をタイムリーに作成していないときは、売上高、粗利益を簡便的に集計したものでも構いません。

では、なぜ、銀行を訪問するのかというと、理由は2つあります。1つ目は、金銭的なコストがかからないことと、副次的な効果ですが、毎月、業績を報告に来る会社は、そうでない会社と比較して、融資判断に有利になるからです。(念のためにお伝えしますと、融資判断の最大の比重は業績なので、毎月、業績報告に行けば、業績が悪くても融資をしてもらえるようになるというわけではありません)

2つ目は、定期的に部外者に業績と改善策を報告することで、それが、改善活動を後押しする要因になることです。さらに、最初のうちは銀行は報告を一方的にきくだけかもしれませんが、回数を重ねるうちに、銀行職員の視点での初見や改善策を伝えてもらえるようになり、それが、無料で得られる改善のヒントになるかもしれません。

この改善策についての説明はここまでにしますが、日頃から現状維持で過ごさないようにする何らかの仕組みをつくって実践しなければ、なかなか、改善のための行動は継続できません。しかし、現実には、その改善策さえも実践しない会社経営者も一定数はいると思います。そこで、私は、事業改善は、効果の期待できる経営戦略がどれであるかを見極める前に、改善活動を継続するかどうかの方が大切だと考えています。

かつて、稲盛和夫さんが、松下幸之助さんの講演を聴きにいったとき、ダム式経営ができるようになるにはどうすればよいかと質問を受けた松下さんは、「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけれども、まず、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」という回答をしたとき、稲盛さんは、「鉄槌で打たれたように非常な感銘を受けた」とお話ししておられました。結局、金子さんのご説明に戻るのですが、何をするかの前に、それを実践しよううとする意思がなければ、どんなにすばらしい改善策や経営戦略も、実現されることはないわけです。

2026/7/4 No.3489