[要旨]
公認会計士の金子智朗さんによれば、かつて、iPadは、OSをつくりなおしたことで、動きが軽くなり、顧客から支持を得ることができましたが、このように、前例を踏襲しようとすると顧客からの支持を得ることが難しくなるので、違うモノを売ることをもっと考えるべきだということです。
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今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、事業活動はコストを発生させるだけであって、顧客から製品の購入の意思決定をされなければ利益は得られないので、事業活動を目的化せず、顧客に購入の意思決定をしてもらうためにはどのように事業活動を行うべきかを念頭に置いて臨まなければならないということについて説明しました。
これに続いて、金子さんは、iPadはOSを軽くしたことで成功したということについて述べておられます。「ゲーム、パソコン、そして携帯端末のケースに共通していることは、新製品は機能を増やさなければならないと売り手側が勝手に思い込んでいることです。そして、他社が機能を増やしたら、それに追随せずにはいられない横並び意識です。快進撃を続けるアップルのiPadの成功は、OSを軽くしたことに一因があります。
iPadはいろいろな面で使い勝手がいいですが、特に起動の速さはテレビ並みです。それが可能になったのは従来のOSを捨てて、新しいOSを一から作り直したからです。一から作り直したことによって、非常に軽いOSができたのです。iPadの成功は、あくまでも顧客の視点に立って余計なものを捨てたことにあります。他社が機能を増やし続けている中で、自社だけがそれに逆行する行動を取るというのは簡単なことではありません。
しかし、他社と同じことばかりやっているだけでは、1つのパイの食い合いになるだけです。同じモノを売っているのに儲からないことを嘆く前に、違うモノを売ることをもっと考えるべきです。日本企業は昔から横並びが大好きですから、どこかのメーカが携帯にカメラを付ければみんなカメラを付け、どこかのメーカが音楽を聴けるようにすればみんな音楽を聴けるようにするという競争ばかりしています。
今や、携帯で写真が撮れるのも音楽が聴けるのも常識と言われそうですが、そんな常識は誰が決めたのでしょうか。投資家として成功したジム・ロジャースは、『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(日本経済新聞出版社)の中で、『常識はそれほど常識ではない、ほとんどの常識は間違っている』と言っています。また、『大勢に従って成功した者は、今までだれ一人としていなかった』とも言っています。
そもそも、人と同じことをするのが競争なのでしょうか?かつて、横並びばかりの日本企業に戦略と呼ベるものはないと言ったのは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーターでした。従来の常識に囚われずに、顧客の声に耳を傾け、自分の頭でちゃんと考えることが重要です。周りに流され、目先の顧客に安直に迎合していては、利益を上げられません」(40ページ)
iPadは、OSを独自のものに変えたことで、顧客から支持を得ることができました。これは、iPhoneのと共通だったOSを切り離し、再度、iPad専用のOSを搭載したことから、リバンドリングと言われます。一方、機能を分離することを、アンバンドリングといいます。これは、かつて、IBMが、コンピューターと、OS・アプリケーションを一体化して販売していたところ、それぞれを分けて販売するようにしたことを指していました。
その後、他の製品についても、機能を分けて販売することをアンバンドリングと言われるようになりました。その代表的な例は、LCCです。LCCは、機内食や荷物の預かりはオプションとし、運賃を最低限の価格としたことから、多くの支持を得ました。もうひとつの例をあげると、QBハウスもアンバンドリングと言えます。これも、一般的な理容店から、洗髪と顔剃りを省き、散髪だけを提供するかわりに、料金を低価格としたことで、顧客から支持を得ました。
ここで鍵となることは、ジム・ロジャースの「大勢に従って成功した者は、今までだれ一人としていなかった」という言葉だと思います。リバンドリングも、アンバンドリングも、機能の切り離しと再結合であり、技術面での課題は少ない手法です。したがって、従来のやり方を変えるかどうかという、経営者の決断によるものであり、それは、財務分析だけでは得ることができない結論だと思います。
2026/6/6 No.3461
