鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ベンチャーにはセカンドペンギンが必要

[要旨]

人材紹介業のキープレイヤーズの社長の高野秀敏さんによれば、経営者というファーストペンギンが果敢に飛び込み、そこに魚群を見つけたとしても、あとに続くペンギンがいなければ組織という群れは飢えてしまうので、重要なのは、ファーストペンギンのあとを追って海に飛び込み、多くの普通のペンギンたちの行動を促す、セカンドペンギンだということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、キープレイヤーズの社長の高野秀敏さんのご著書、「ベンチャーの作法-『結果がすべて』の世界で速さと成果を両取りする仕事術」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、高野さんによれば、ベンチャー企業の経営者は、中途入社したベテラン社員には、結果を求めると同時に、経営者の忠実な手足となることだけを求めており、なぜなら、ベテラン社員の仕事の仕方を部下に指導することは、社内の統率がとれなくなってしまうからだということについて説明しました。

これに続いて、高野さんは、リスクをとって最初に海に飛び込むファーストペンギンだけでなく、それに続くセカンドペンギンも大切だということについて述べておられます。「『ファーストペンギンになれ』、自己啓発書などでよく言われてきたことです。ですがベンチャーのいち社員として、あなたに求められる『行動』はファーストベンギンになることではありません。ファーストペンギンとは、ペンギンの群れが魚を求める際、天敵がいるかもしれない海に最初に飛び込む果敢なペンギンのことを指しています。

リスクを取るかわりに『手付かずの魚群』という先行者利益を得られます。そこから、ビジネスの世界でも『リスクを顧みずに挑戦すること』を意味して、ファーストペンギンになれとよく言われるようになりました。ですが(中略)、目の届かないところで戦略もなしに勝手に海に飛び込まれては、群れを率いる経営者は困ってしまいます。ベンチャーでファースペンギンになるのは経営者の役目です。

私がこれまでに会ってきたベンチャーの経営者は、皆とても勇敢でした。独創的で行動力にあふれていて、決断力もある。そんな人たちばかりです。誰もやったことのないビジネスや未開拓の市場に可能性を見出し、つねに新しい挑戦をしていました。高い視座で得た情報をもとに魚の気配を察知し、勇敢に海に飛び込む。これは経営者の役目です。でも、ひとりでやれることには限界があります。

社員がついてこなければ、ビジネスは広がらないし持続もできません。経営者というファーストペンギンが果敢に飛び込み、そこに魚群を見つけたとしても、あとに続くペンギンがいなければ『組織』という群れは飢えてしまいます。つまり、重要なのは2人目の存在です。優秀で勇敢なファーストペンギンのあとを追って海に飛び込み、多くの『普通のペンギンたち』の行動を促す。ベンチャーで結果を出し、評価されるのは、そんな『セカンドペンギン』です。

これが、いち社員であるあなたに組織が求める『行動』です。経営者が示した戦略や戦術に乗っかり、行動する。要するに、与えられた任務を確実に遂行できる人が評価されます。『評価なんて興味ない』という人もいるかもしれませんが、裁量のある仕事も給料のアップも、すベては仕事で結果を出して評価された先に与えられるものです。まずは与えられた仕事を受け入れ行動することが、すベての始まりになります」(88ページ)

事業活動は組織的活動です。したがって、高野さんが、「経営者というファーストペンギンが果敢に飛び込み、そこに魚群を見つけたとしても、あとに続くペンギンがいなければ『組織』という群れは飢えてしまいます」とご指摘しておられるように、経営者が果敢に海に飛び込んでも、それだけでは事業活動を続けることはできなくなります。そこで、高野さんは、ベンチャー企業ではセカンドペンギンが重要と述べておられるわけです。

これについて、高野さんは、ベンチャー企業の従業員は、ファーストペンギンではなく、セカンドペンギンとして任務を遂行し、成果を得ることが大切という主旨を述べておられますが、私は、ここで気になる点があります。というのは、これまで、私が、中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、確かに、経営者の中には、ファーストペンギンのような果敢な経営者の方がたくさんおられます。ところが、社長は大きな意欲をもって事業活動に臨んでおられる一方で、セカンドペンギンになろうとする部下がいないという会社も少なくありません。

社長1人だけが燃えていて、ほかの部下たちは社長からの指示を待って動くだけで、冷めた感じで働いているわけです。このような状態になってしまう理由はいくつか考えられますが、その1つは、社長が組織づくりにはあまり注力していないからだと思います。高野さんは、従業員はセカンドペンギンとして成果を出すべきとご指摘しておられますが、部下にとってそのインセンティブがなければ、セカンドペンギンになろうとはしないことは自然なことだと思います。

したがって、高野さんの、部下はセカンドペンギンとしての役割を担うことで組織的に事業活動できるという指摘は、経営者の方も認識しなければならないことです。すなわち、経営者の方は、セカンドペンギンになってくれる人が現れそうにない状態では、ファーストペンギンのように海に飛び込んではいけないと、私は考えています。

2026/5/6 No.3430