鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

利益とは自社が生み出した付加価値分

[要旨]

北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんによれば、利益とは、売上の中で自分自身が生み出した付加価値分を数値化したものだということです。そして、もし、仕入れたものに付加価値が加わらなければ、売上が上がっても利益は出ないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんによれば、価値とは、どれだけ他者の役に立つかということであり、それはお金を渡す側が決めるということであるから、商品を提供する側が、「自分は相手の役に立っている」、「一所懸命に働いている」と思っても、相手がそう思わなければお金を支払わないということについて説明しました。

これに続いて、木下さんは、利益とは、自分が生み出した付加価値のことであるということについて述べておられます。「さて、Bさんは鍬を提供し、役立った分の対価をもらった。これが売上でお役立ち度の合計を数値化したものだ。では利益とは何か。売上の中で自分自身が生み出した付加価値分を数値化したものだ。鍬はBさんがつくったが、鍬の材料の木や鉄を仕入れているから、すベて自分でくったわけではない。

売上は、Bさんの鍬の価値の合計だが、利益はその中でBさん自身が生み出した付加価値分だ。売上だけなら簡単に上げられる。あなたが人の役に立ちたいと考え、Bさんから鍬を仕入れた。1本1,000円の鍬を10本仕入れ、1本1,000円で10人に販売した。Bさんから買っても、あなたから買っても、品質も値段も同じだ。お客樣はたまたま目についたあなたから買った。売上は1万円だが利益はゼ口だ。売上1万円(1,000円×10本)-原価1万円(1,000円×10本)=利益0円。

売上は上がったが、あなたは世の中の役に立ったか。企業の中には、売上100億円でも利益がほとんどないところもある。仮に、100億円の売上目標を立てたとする。100億円売り上げるために(中略)、価格比較サイトの最安値で、あるメーカーの10万円のPCを、10万台仕入れた。原価は100億円かかった。そして、同じ価格比較サイトに出品し、同じ最安値の10万円で販売した。お客樣は品質も価格も同じ最安値だから、たまたま目についたほうを買う。

1台10万円で10万台仕入れたPCが、1台10万円で10万台売れ、売上100億円を達成したとする。だが、利益はゼ口だ。売上100億円(10万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)=利益0円。仕入れたものに付加価値が加わらなければ、売上が上がっても利益は出ない。すでに世の中に役立っている商品を、そのまま仕入れて、そのままの値段で売ると、売上は上がるが、利益は上がらない。それはあなた自身が世の中の役に立っていないことを示している。

では(中略)、このPCに10年保証をつけて11万円で販売したとしよう。お客様が元のメーカーから買うと10万円だが、あなたの会社から買うと1万円高いものの10年保証がついている。10年保証に価値を感じる人が10万人いたらこうなる。売上110億円(11万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)-利益10億円。

一方で、10年保証に価値を感じない人、1万円は高いと感じる人が多ければ売上も利益も上がらない。価値があるか、利益が適正かはお客様が決めるということを忘れてはならない。年商100億円の会社でも利益を出さなければ存在価値はない。売上に意味はない。利益こそが会社のお役立ち度を示している。利益はその会社が本当に役立っているどうかのバロメーターなのだ」(84ページ)

本旨から外れますが、内閣府が公表している日本のGDP(国内総生産)は、理論上は、国内の会社が生み出した付加価値の合計です。したがって、GDPとは、木下さんのいう「お役立ち度」の合計額ということです。話をもどすと、業績があまりよくない中小企業の経営者の方のご相談にのると、「ライバルが多い」、「価格競争が厳しい」と悩んでおられる方が多いです。もの余りの時代の現在において、このような悩みは、多くの会社で共通するものかもしれません。

そこで、このような状況をどのように解決すればよいのかというと、その代表的な方法は、事業領域の変更(ドメインシフト)です。例えば、中小企業診断士の長尾一洋さんのご著書、「売上増の無限ループを実現する営業DX」には、印刷会社の山櫻のドメインシフトの事例が紹介されています。「顧客を循環させる無限ループを作るためには、売り手と買い手の関係が、一回だけのモノの売買では終わらずに、半永久的に持続する必要があります。(中略)

そのためには、モノ売りからコト売りへ、商品販売からサービス提供へと、売り切って終わらないビジネスモデルヘの転換を考えることが重要です。その前提となるのが、ドメイン(事業分野や競争領域)シフトです。(中略)『○○を売る』という物理的定義から『どのような機能や価値を提供するか』という機能的定義もしくは便益的定義にシフトすることで自社の目指すベき方向性を定め、それに沿ったビジネスモデルを考えていきます。

1931年創業の株式会社山櫻は、多くのオフィスワーカーにとって『名刺や封筒の会社』として認識されていることでしょう。桜色のロゴマークの入った箱で自分の名刺を受け取った思い出を持つ方も多いと思います。その山櫻が、名刺や封筒などの紙製品メーカーという物理的定義から『出逢ふをカタチに』する会社という機能的定義へとドメインシフトを行ったのは2012年。

紙製品にこだわることなく、人と人が『出逢う』ことのすベてに関わる商品やサービスを創造する会社へと転換を遂げました。現在、山櫻ではデジタル名刺交換・管理サービスの事業も展開しています。新たに定義したドメインのもとで、『営業DX』を起点に、商品・サービスカの見直しや業務効率の改善をデジタルで実現していきます」(53ページ)

経営環境の変化や、競争の激化によって、自社の利益が減少することがあります。そのような外部環境の変化は、自社に逆風となりますが、そうであれば、逆風がより弱い場所、または、追い風になる場所に、事業領域を移すことで、利益が増えることになります。繰り返しになりますが、外部環境の変化によって自社の利益が減少することは、直接敵には、自社に原因があるわけではありません。

しかし、自社の利益が減ったということは、顧客から見て役立つ事業ではなくなりつつあるということになります。したがって、ドメインシフトの必要性が大きくなったときは、それを少しでも早く察知するために、常に自社の利益を把握しなければなりません。それが、自社の利益の減少を最小限にするための大切な要素になると私は考えています。

2026/4/24 No.3418