鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『多産多死』ではなく『少産少死』

[要旨]

北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんによれば、利益を最大化するためには、ロングセラーを前提に商品を開発すべきということです。なぜなら、次々に新商品を開発すると、売上も増加しますが、その開発コストや販売コストも増えるため、利益が減ってしまうからだということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんによれば、例えば、広告宣伝費を多くかければ売上は増えるけれど、営業利益は下がることから、原価や販管費をいくらかけてもいいというわけではないので、利益を増やすためには、闇雲に売上を増やすのではなく、費用の管理を行うことが欠かせないということについて説明しました。

これに続いて、木下さんは、ロングセラーの商品を開発することが大切だということについて述べておられます。「『売上最小化、利益最大化』を目指すには、まず『少産少死』の経営を徹底する。商品・サービスを『少産少死』にすること。商品は一生売り続けるつもりで開発する。ダメになったら廃番にしようと考えず、ロングセラー前提で商品開発を行う。この反対が『多産多死』の経営だ。『多産多死』の経営は流行りの商品を次々に出す。

一つの商品に依存せず、いつも商品が入れ替わって売上が立つ仕組みになっている。人は新しいものに興味を持ちやすい。新しいだけで魅力的だ。その点で勝負するには、常に新しいものをつくり続けなくてはいけない。だから、『多産多死』の経営はコスト高になる。販売形態によってもコストは大きく変わる。当社は通販しかやっていない。しかし売上を最大化するため、通販と店頭販売の両方をやる会社が多い。こうした会社のほとんどは、どちらかが赤字になっている。

私なら黒字事業に特化し、赤字事業をやめる。経営者の中には、『通販と店頭販売をやることで宣伝になる、相乗効果がある』と言う人がいる。しかし、利益率は低くなる。両方やるとオペレーションも2種類必要になるから社員教育やノウハウの蓄積などにコストがかかり、利益を圧迫する。なぜ利益が少なくなるのに、多くの会社が通販と店頭販売の同時展開をやめられないのか。売上志向だからだ。利益を起点に考えていないので、売上が上がることに手を出してしまう」(69ページ)

私は、木下さんの考え方に、80%賛成です。それは、ロングセラー商品がある会社は、木下さんがご指摘しておられるように、コストが少なくて済むからです。ロングセラー商品はコストがかからないということは感覚的にご理解されると思いますが、詳細な説明は割愛しますが、ボストンコンサルティンググループ(BCC)が開発した、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)は、ロングセラー商品を育てることを目的とするマネジメントツールです。

ですから、「利益を得ること=コストを少なくすること」と考えれば、基本的に、ロングセラー商品を取り扱うことが基本と言えることに間違いはありません。しかし、会社の中には、経営環境の変化によって、自社商品の需要が減少する例は少なくありません。例えば、日本を代表する鉄道会社の東日本旅客鉄道は、2025年7月に経営ビジョンを公表しています。これによれば、営業利益に占める運輸事業の割合は、2025年度は約46%でしたが、2031年度には約36%にすることを目標としています。

すなわち、同社は、鉄道会社であるにもかかわらず、すでに運輸事業の利益が半分を下回っていますが、6年後には、それが約3分の1にまで下げることを目指しています。このような判断は、業種により異なりますが、ロングセラー商品だけに頼り過ぎることは、リスクが高い面もあるため、常に経営環境の変化に対応できるよう、別の商品を開発することも必要だと、私は考えています。

2026/4/21 No.3415