鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

メーカーと協力してヒット商品を開発

[要旨]

アスクル前社長の岩田彰一さんは、同社の社長時代に、メーカーとの協力関係を重視していましたが、そのような中で、メーカーと協力して商品を開発していった結果、ヒット商品が生まれるようになり、同社の利益率が改善したそうです。このように、メーカーとの協力体制は、自社の業績を高めるために重要だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、アスクルの前社長の岩田彰一郎さんのご著書、「起業家になる前に知っておいてほしいこと-経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、岩田さんが、アスクルには、翌日に商品を届けることに顧客のニーズがあるということを確信したことから、積極的に物流センターに投資を行っていった結果、さらに顧客が増加し、投資も短期間で回収できるという好循環が得られたということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、アスクルのプライベートブランド商品を開発し、利益率を高めていったということについて述べておられます。「メーカーさんとの関係を大切にする姿勢を貫いていたことは、長期的には、利益率をあげることにもつながりました。大きかったのは、さまざまなメーカーさんと協力して、PB商品やNPB(ナショナルプライベートブランド)商品を開発できたことです。PB商品はNB(ナショナルブランド)商品よりも利益率が高くなります。

NB商品の価格には、広告やマーケティング、流通などのコストがかなり乗っています。PB商品はそれらのコストがないので、安く仕入れることができるのです。それに加えて、アスクルはNPB商品も開発していました。これはNB商品とPB商品の中間で、中身はNB商品だけれども、パッケージをアスクル限定のものにした商品のことです。こちらもPB商品と同様に、広告や流通コストなどが削減できるので、NB商品よりも仕入れ値が安くなります。

さらに、なかには、発売開始から一定期間はアスクル限定での販売だけれども、その後は他の販路でも販売していいという契約をしていたNPB商品もありました。メーカーさんにとっては、NB商品を共同開発できるようなものなので、PB商品をつくるよりもメリットがあります。このようなPB商品やNPB商品は、日頃からメーカーさんと関係性を築いていないとつくれません。関係構築を心がけていたからこそ、アスクルは数多くの商品を開発できたといえるでしょう。

さらに、開発した商品のなかから、ヒット商品がいくつも生まれました。先述した、コーヒーフレッシュ、スティックシュガー、ガムシロップの容器や包装を同じデザインに揄えた商品なども、ヒットしたNPB商品の例です。利益率の高いPB商品やNPB商品からヒット商品が数多く出たことで、アスクルは、売上だけでなく、利益率もあげることができました。」(140ページ)

NBとPBはすでに多くのビジネスパーソンに知られていますが、念のため、改めて説明すると、おおよそ、NBは製品を製造した会社がつくったブランドで、PBは商品を販売する会社がつくったブランドのことです。話を戻すと、引用部分では、ブランドのことが中心になっていますが、私は、鍵になるところは、「メーカーとの関係を大切にする姿勢を貫いていたことは、長期的には利益率をあげることにつながった」というところだと思います。

岩田さんは、メーカーから仕入れる商品の価格交渉では、メーカーに対して強い姿勢をとらなかったそうです。これについては、岩田さんの考え方なので、それが正しいかどうかはここでは述べませんが、だからといって、岩田さんは、自社の利益率を高めたり、自社商品の価格を下げたりすることについては、ずっと努力をしていたそうです。それが、メーカーと協力してNPB商品を開発することになったということだと思います。

かつては、小売業が競争力を高めるためには、メーカーや卸売会社と交渉して安く商品を仕入れ、そのまま低価格で販売し、価格で顧客へ訴求する方法が行われていました。しかし、現在のような、経済が成熟した状況では、品質の高い商品が安く販売されていることは当たり前になっており、顧客体験価値(CX)など、さらに室の高い商品を提供しなければならなくなりました。

これを実現する方法のひとつが、小売店での競争ではなく、サプライチェーン(製品の開発、材料の調達、製品の製造、物流、小売店での販売までの一連の製品の供給活動のことで、供給連鎖ともいわれる)で価値の高い商品を開発、提供することです。アスクルの場合、メーカーと協力することで、NPB商品を開発し、その中からヒット商品が誕生したと、岩田さんは述べておられます。

これについては、理解が容易だと思いますが、複数の立場が異なる会社が協力し合った方が、その成果物の完成度は高くなります。したがって、これからは、競争力を高めるためには、アスクルのように、サプライチェーンでの協力を行うことが、ひとつの鍵になると思います。現在でも、商品の販売価格について、メーカーと小売店の間でトラブルが起きることがありますが、これからは、このようなことは減少していくと思います。

2026/4/9 No.3403