鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

顧客が求める価値のために積極的投資を

[要旨]

アスクル前社長の岩田彰一さんによれば、岩田さんが、同社には、翌日に商品を届けることにニーズがあるということを確信したことから、積極的に物流センターに投資を行っていった結果、さらに顧客が増加し、積極的に行った投資も短期間で回収できるという好循環が得られたということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、アスクルの前社長の岩田彰一郎さんのご著書、「起業家になる前に知っておいてほしいこと-経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、起業した直後の会社は赤字になりやすいことから、支出を最低限に抑える必要があり、そのためにも迅速に業績を把握できるようにすることで顧客のニーズを確かめ、それを見極めた上で黒字に確保できる範囲で資金投入することが大切だということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、自社の事業について、顧客のニーズがあることを確信してから、物流センターの整備に積極的に投資をしたということについて述べておられます。「お客様のニーズがあることを確信してからは、成長のために必要な投資を積極的に行うようになりました。特に重点的に投資をしたのが、物流センターです。

アスクルの大きな魅力のひとつは、社名にもしたように、『明日来る=注文翌日に商品が届く』ことです。『明日来る』といいながら、明後日来る、5日後に来るとなれば、お客様はアスクルに失望し、離れていってしまいます。注文が少ない頃は、物流センターがそれほど整備されていなくても、多少残業をすれば何とか対応できましたが、注文が増えれば、そういうわけにもいきません。そこで、物流センターの増強と最先端の物流システムの構築に投資したのです。

まず必要だったのは、物流に関するノウハウです。そこで、最先端の物流のノウハウを持った優秀な人材を採用しました。そのうえで、物流センターを急ビッチで増やしていきました。その時々の売上に対して、はるかにキャパシティの大きな物流センターを開設していったので、経営陣のなかには心配する人もいましたが、私はそれでいいと考えていました。

物流センターの稼働率が低いことよりも、物流センターがパンクして翌日配送ができなくなるほうが、はるかに問題だからです。物流センターを全国各地に開設すると、お客様への配送距離が短くなるので、配送コストが下がります。それに加えて、翌日配送も、より確実になります。すると利便性があがるので、お客様がさらに増え、投資を短期で回収できるという、良い循環に入りました」(124ページ)

引用部分からわかる通り、アスクルが顧客に提供するベネフィットは、注文した翌日に商品が届くという利便性です。この商品を翌日に届けるという手法は、現在では当たり前になっていますが、アスクルが起業した1990年代は、これを実践している会社はほとんどありませんでした。しかし、岩田さんは、翌日に商品を届ける手法にこそ需要があるということを見出し、大胆に物流センターに投資をしました。

アマゾンも同様の事業展開をしています。アマゾンは1995年に起業しましたが、当初は、自らは在庫を持たず、本の取次会社から本を発送させる手法をとっていました。しかし、迅速に本を届けることに需要があるとわかると、1997年から物流機能を充実させて行きました。そして、広く知られているように、アマゾンは物流センターの仕組みそのものが企業秘密になっており、アスクルと同様に、迅速な配送が顧客へ提供している価値であり、高い競争力の大きな要素となっています。

この2つの会社の事例から分かるように、現在は、「何を売る」かではなく、「商品をどのように売れば、顧客への提供価値が高くなるのか」という観点で事業に臨まなければなりません。岩田さんも、ジェフ・ベゾスも、顧客が求めている提供価値を確信を持って見極めることができたからこそ、大胆な投資を決断できたのだと、私は考えています。

2026/4/8 No.3402