[要旨]
船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、重要な業務は、緊急な業務のために後回しにされてしまいがちですが、重要な業務を後回しにしてばかりいると、業績を下げることになるので、緊急な業務に追われることで、「自分は仕事をしているぞ」と思うことを避け、着実に重要な業務を実施できるよう、計画的な活動をしなければならないということです。
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今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんによれば、PDCAのP(計画)は、数値目標をいかに効果的かつ効率的に達成へ導いていくかといったテーマを持っていますが、一方で、そもそも日常業務はきちんと回っているので、たとえ徹底してPに取り組まなかったとしても業績への影響は限られることから、計画倒れが起きてしまうので、リーダーはそのようなことが起きないよう働きかけることが大切だということについて説明しました。
これに続いて、川原さんは、まず、現在の自社の業務について、(A)緊急かつ重要な業務、(B)緊急度は低いが重要な業務、(C)重要度は低いが緊急度の高い業務、(D)緊急度も重要度も低い業務の4つに仕分けし、そして、何から着手するか検討するとよいとうことについて述べてられます。「さて、仕分けが終わったら確認してください。(A)の『緊急かつ重要な業務』には、正に日々こなさなければならない業務で、その中でも大切だと考えているものが入っているでしょう。
(B)の『緊急度は低いが重要な業務』には、PDCAで推進したい業務や、新たに取り組みたい計画や企画、新しい商品やサービスの開発、といったものが入っているのではないでしょうか。(A)があまりにも多すぎる場合、それは好ましい状況とは言えませんし、Bに対して緊急度が低いからと放置しているのも当然好ましい状況とは言えません。
一方、重要度が低い(C)や(D)に関しては、ここに多くの時間を割いているようであれば、それも大きな問題です。(C)、(D)の業務は、思い切ってやめてしまうという判断が必要な場合もあります。また、やめるまではいかなくとも、極力効率化(人員や時間を取られない)を図るために、どんな工夫ができるかを考えるベきでしょう。
現場で意図や目的がハッキリしない業務を見つけたときに、『その業務は何でやらなきゃいけないのか知ってる?』と話を聞いたりしますが、得てして『前の担当者から引き継いだ業務なのでよくわかりません』や、『ルールでこうなっていますから』といった答えが返ってくることも意外と多いです。しかし、現場の従業員から自発的に『この業務は無駄だからやめましょう』といった意見が出てくることはありません。そもそもこの会社ではやらなければならない業務だと考えているわけですから。このあたりもリーダーが気を配るベきポイントです。
さて、(A)と(B)に話を戻しましょう。重要な(B)の業務は、そのまま放っておいでも構わない(短期の数字には影響がない)ものや、あるいはそのうちやるベきタイミングが出てきて緊急度が高くなり、(A)に移行するものがあるでしょう。(A)に移行する業務が多ければ、(A)の業務がさらに増えて、『緊急か重要な業務に振り回される』状況がさっばり改善しないことになります。
また、そもそも(B)は将来に向けて重要な業務ですから、本来は着々と進めていかなければなりません。例えば、先ほどのように(C)や(D)を効率化しようと思ったときには、『業務の効率化推進』という業務が(B)に入ってきます。ところが着手しなければ何も進まず、状況も変わりません。1年後に再度『緊急・重要マトリクス』を作成したら、全く同じ業務が、(A)、(B)、(C)、(D)にそれぞれ並ぶことでしょう。
この悪循環から抜け出すためには、次の考え方が必要です。(1)まず、(B)の業務を推進する時間を確保する。(2)(C)と(D)に関してはすでに述ベたとおりのことを実行に移す。(3)(A)に関しては、『なぜここに位置づけられる業務が多くなってしまうのか』という根本的な問題を把握し、解決策を検討する。(もちろん(B)が最優先なので、(A)に関してはいかに時間を割かれずに実行するのかを明確にする)
要するに、(A)や(C)で忙しいからといって『仕事してるぞ』とは思わないように、自分自身を戒める意識が大切だということです。リーダーは、ぜひこの優先順位で日々のスケジュールを組むよう意識してもらいたいと思います」(116ページ)
川原さんは、「(A)や(C)で忙しいからといって『仕事してるぞ』とは思わないように、自分自身を戒める意識が大切」と述べておられますが、私も、これまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきて感じることは、上から目線で恐縮ですが、経営者の方の多くは、「きょうも忙しく仕事をした」ことだけで満足していると感じています。
確かに、経営者や従業員の方たちが忙しく活動することは好ましいことに感じられますが、忙しいからといって、そのことが必ずしも業績を高めることになっているとは限りません。極端な例ですが、原価ギリギリで食事を提供しているレストランは、価格が安いということで多くの顧客が来店し、従業員の方たちは忙しくなりますが、従業員の給料や店舗の家賃を支払ったら赤字ということになっていれば、その忙しさは報われません。
逆に、1日3名しか施術しない美容室は、当然、それほど忙しくありませんが、そのことによって、その店を利用したい顧客がなかなか減らず、6か月先まで予約が埋まり、かつ、客単価も高くすることができ、業績が向上していることもあります。したがって、事業活動で大切なことは、従業員が忙しくなることではなく、業績が高いかどうかということです。
とはいえ、このようなことは、ここで述べるまでもないことなのですが、忙しいけれど、儲かってもいないという会社が少なくないところが問題だと、私は考えています。この理由については、これは明確な根拠はなく、私の肌感覚で恐縮なのですが、経営者の方の中には、本当は重要な業務をしなければいけないと理解しつつ、心の深いところでそれを避けようとして、忙しさを理由に、重要な業務を後回しにしているのではないかと思っています。
例えば、自社の業績が赤字であれば、商品の値上げをする、不採算な顧客との取引を解消する、新たな投資をして合理化をするといった対応策を行わなければなりません。ところが、もし、そのような対応策を実施して失敗すると、業績がさらに悪化したり、自分の責任が問われることになることから、忙しいことを理由にして現状を維持しているのではないかと思います。これについては、確かに、新しいことを行うことについては、経営者の方に、それなりの決断が必要です。
その一方で、現在の業績がよくないのであれば、現状を維持することも自分の評価を下げることになります。そうであれば、一日でも早く、重要性の高い業務に着手することが、よりよい結果につながります。繰り返しになりますが、その決断は難しいことは事実ですが、その難しい決断をすることが経営者の役割であり、それができるかどうかで経営者が評価されるのだと思います。
2026/4/1 No.3395
