鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

計画策定には多くの労力をかけすぎない

[要旨]

船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、PDCAを実践しようとするときに、まず、計画を立てますが、その計画に多くのことを盛り込もうとすると、計画策定のための労力が増加し、計画策定自体が頓挫してしまう可能性があるので、目標はあまり労力がかからない程度に絞り込むことが大切だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんによれば、かつて、マクドナルドが業績不振になったとき、「60秒チャレンジ」、すなわち、「注文から60秒以内で商品を提供する」という「お客さまとの約束」を徹底して実践したところ、業績を回復させることができたそうですが、このように、自社の利益を増加させる活動に注力することが、業績を高める鍵となるということについて説明しました。

これに続いて、川原さんは、計画策定にあたっては、まず、達成が見込まれる目標を設定することが大切ということについて述べておられます。「計画策定で誤解されているのが、『やるベきことをどんどん計画の中に落とし込まなければならない』という考え方です。全面的に間違っているとは言えないのですが、この考え方でいくと、結局何も手がつけられずに放置される項目が発生します。

というのも、実行できるぐらいの量の『やるベきこと』であれば問題ないのですが、欲張って『あれもこれも』と詰め込んでしまって、結局やらなかった、あるいはできなかった、といった経験が皆さんもあるのではないでしょうか。目安としては、『計画どおりに実行すれば必ず目標が達成できる』必要最小限レベルの落とし込みです。(中略)

フランチャイズチェーン本部A社で起きた事例を元に説明しましょう。A社の商品部は15のカテゴリーに分かれており、それぞれに担当バイヤーが配置されています。ある年、『もっと現場の情報を収集・分析した上で商品政策を決定し、仕入先メーカーとの交渉に活用する』という方針が立てられ、バイヤーはより精度の高い現場情報を取集する必要が出てきました。

A社は、全国に約1,000店舗のネットワークを持ており、バイヤーが自分自身で情報を収集するのは不可能です。そこで、運営部のスーパーバイザーに情報収集を依頼することになりました。スーパーバイザーは、一人当たり5~10店舗ぐらいの担当を持って日々訪間活動を行なっていますので、無理なくできる作業ではないかと考えられていたのです。

ところがその目論見は大きく外れることになります。商品カテゴリーごとに存在する5名のバイヤーが、自分の仕事の都合に合わせてスーパーバイザーに情報収集を依頼してきたため、スーパーバイザーのところにはひっきりなしにメールが届き、それがたまっていった結果、情報収集どころか通常業務さえも滞ってしまうような状況になってしまったわけです。

A社の事例からもわかると思いますが、どんな会社であれ、ビジネスを成立させるためにやらなければならない日々の業務はすでに存在しています。しかも、ほとんどの会社は恐らくギリギリの人数で仕事を回しているでしょう。だからこそ、計画は現状の振り返りからスタートするのです。(中略)まずは現状の業務を整理して、その上でどんなことならできそうか、現実的なレベルでの計画を策定していきましょう」(77ページ)

一般的な会社は、会計期間の2か月後に決算が確定します。例えば、会計期間が4月から翌年3月の会社は、5月に決算が確定します。しかし、その決算の確定を待って計画を立てようとすると、前述の例の会社の場合、6月になって計画を立てることになり、すでに新しい会計期間がすでに2か月経過していることになります。そこで、遅くとも、1月までに、2月と3月の財務情報を見込んで、新たな会計期間の計画を立てることになります。

そして、このように、自社の財務情報を集めたり、迅速に行うこと自体が、中小企業にとっては、PDCAを行おうとすることの最初の壁になっていることもあると思います。しかし、業績のよい会社の共通点は、自社の財務情報などを迅速に把握するための投資を行っています。例えば、埼玉県入間郡にある産業廃棄物処理会社の石坂産業(2024年8月期の売上高は約67億円、従業員数は210名)は、同社社長の石坂典子氏の著書によれば、2011年に1億円をかけて自前で管理システムを構築したそうです。

詳細な説明は割愛しますが、精度の高い経営を実践しようとすると、財務情報などは、迅速、かつ、正確に把握する必要があるようです。話を戻すと、これまでPDCAを実践したことがない会社が、計画を策定するにはどうすればよいのかというと、私も、川原さんがご指摘しておられるように、まず、計画策定の負担が少なくなるようにして、大きな目標を達成しようとするよりも、PDCA自体が実践できるようにすることから始めることをお薦めします。

例えば、厳密な月次決算を行っていなくても、最初は、売上高と仕入額だけをExcelなどで集計し、それに基づいて、来期の売上目標や、粗利益の目標を設定するということから始めるとよいと思います。繰り返しになりますが、最初は、PDCAによる成果を出すことよりも、PDCAを実践することを目標とに注力し、それを定着させていけば、自ずと、業績も高まって行くと、私は考えています。

2026/3/29 No.3392