[要旨]
船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、かつて、マクドナルドが業績不振になったとき、「60秒チャレンジ」、すなわち、「注文から60秒以内で商品を提供する」という「お客さまとの約束」を徹底して実践したところ、業績を回復させることができたということです。このように、自社の利益を増加させる活動に注力することが、業績を高める鍵となるということです。
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今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんは、顧問先に5Sの実践をお薦めしているそうですが、それは整理整頓をしてもらうというよりも、成果がでるまでに時間がかかる改善活動を定着させる能力を高めてもらうことにあるということについて説明しました。
これに続いて、川原さんは、業績を改善するには、「お客さまとの約束」を果たすことが大切ということについて述べておられます。「『お客さまとの約束』とは、その約とは、果たして会社の利益は上がる、というイメージにつながるものでなければなりません。『お客さまとの約束』が定まれば、『その約束を果たすためにやるべき仕事が鮮明になる』ということであり、『約束に直接関係のない業務は、極力効率化するか場合によってはやめる』こともできる、ということです。
マクドナルドを例にとって説明しましょう。マクドナルドは数年前に一度、赤字転落してしまいましたが、そこからの改善の過程で『60秒チャレンジ』というキャンペーンを行ないました。レジで注文してから60秒以内に商品を提供できなければ、サービスクーポンを配布するというものです。ファストフード店に来る顧客のほとんどは、『手軽に早く済ませたい』と思っているはずです。
しかし、お昼時などの混雜時はどうしてもレジに行列ができてしまいます。そこで待ち時間を短縮することができれば、顧客側の満足度は上がり、なおかつ会社の売上アッブも期待できる、というのが真の狙いです。実際、マクドナルドはこのキャンペーンを行なうに当たり、『素早く商品の提供をするために』全店舗の厨房レイアウトを変更し、業務マ二ュアルでも細かく作業を規定するなど、実に100億円規模の投資をしたそうです。
このことから、実際に『お客さまとの約束』という言葉で掲げられているかどうかはわかりませんが、マクドナルドでは『できたてを素早く提供すること』に重きを置いていることがわかります。その後、同社は見事にV字回復を果たしました。もちろん、今もこの約束は守り続けられているのではないでしょうか。このぐらい明確かつ絞り込まれた『お客さまとの約束』を見出すことができれば、その企業は他社に負けない強みを獲得できるのです」(69ページ)
川原さんは、「『お客さまとの約束』とは利益獲得につながる活動」と述べておられますが、これは、事業活動で顧客に提供するベネフィットの言い換えだと、私は考えています。このベネフィットとは、商品を購入することによって得られる恩恵や便益のことで、米国の経済学者のレビットが、著書「マーケティング発想法」で、「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく、穴である」と述べたことで広く知られています。
では、この「お客さまとの約束」がなぜ大切なのかというと、ベネフィットは、商品を提供する側からはなかなか見えにくいという面があります。マクドナルドの場合、ベネフィットは時間の節約なのですが、ハンバーガー店の場合、どうしても。「おいしいハンバーガーを低価格で提供すれば顧客から支持される」と考えてしまいがちです。同社が、一時、業績不振に陥った理由は、このベネフィットを把握できていなかったからでしょう。しかし、「60秒チャレンジ」によって、顧客に真のベネフィットを提供することができ、業績を回復できたと考えることができます。
ちなみに、同じハンバーガー店のドムドムハンバーガーのベネフィットは「SNS映え」のようです。すなわち、同社では、他社では類似商品がない、「丸ごと!!カニバーガー」(1,290円)などを提供し、業績を回復させました。このベネフィットの違いからみれば、同じ業種のマクドナルドとドムドムハンバーガーは、顧客層が異なるわけですから、競合していないとも言えます。したがって、繰り返しになりますが、自社の業績が悪化したときは、的確な「お客さまとの約束」を見出すことができれば、競争力を高めることが可能になります。そして、経営者は、常に自社のベネフィットを探求していく努力が大切であると、私は考えています。
2026/3/28 No.3391
