[要旨]
船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんは、顧問先に5S(整理・整頓・清掃・清潔、躾)の実践をお薦めしているそうですが、それは整理整頓をしてもらうというよりも、成果がでるまでに時間がかかる改善活動を定着させる能力を高めてもらうことにあるそうです。しかし、5Sは特別なスキルが必要ではないにもかかわらず、定着させることができる会社は少ない一方で、業績を高めている会社は5Sを定着させていることから、両者の違いは、改善活動を継続できるかどうかということと言えるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんによれば、事業計画を十分に練り込んだものにせず、既存業務を延長するものであっても、しばらくは事業を継続できるため、十分に練り込んだ事業計画を策定しない会社は新たな取り組みを行う機会がなくなり、成長につながらなくなるので、注意が必要だということについて説明しました。
これに続いて、川原さんは、5Sを定着できなければ、事業活動の成果も得ることが難しいということについて述べておられます。「5Sとはご存知の方も多いと思いますが、整理・整頓・清掃・清潔、躾、それぞれの頭文字であるSをとって『5S』と名づけられたもので、いわゆる仕事の基本である5つの要素を徹底して実践することです。
もともとは工場で実践すベき取組として認知されてきた考え方で、例えば日本電産を創業して一代で売上高1兆円を超えるグループを形成した永守重信社長は、買収した企業を5Sで立て直しているといっても過言ではないようなお話をされています。そのような成功事例もありますし、コンサルタントの仕事で様々な企業を訪問していると、5Sを徹底している会社はすベからく強いことも目の当たりにしてきました。
これらの会社は、工場に限らず、オフィス、店舗、見えるところも見えないところも5Sが行き届いています。私自身もクライアント企業には必ず、『5Sを徹底すると絶対に儲かるからやった方が良いですよ』と、ご提案しています。もちろん、コンサルティングのテーマは別にありますので、意味合いとしては補足的なアドバイスになってしまいますが、確実に効果が出るため、かなり真面目にお勧めします。ところが、皆さんも予想されるように、ほとんどの企業で定着しないというのが実態です。
さすがに、見られないほど汚いといったことはありませんが、とても徹底されているとは言い難いレベルでその活動は雲散霧消していきます。特別なスキルが必要なわけでもない5Sが、なぜ定着しないのでしょうか。それは、成果を出せるまでの道のりが長いからです。私の経験から言えば、短くて半年、長くて1年ぐらいはかかるでしょうか。その間、ずっと地道に整理、整頓、清掃……をやり続けるのです。
ハッキリ言ってしまうと、とても地味な作業ですから、実行している皆ざんはなかなかその効果を感じることができません。むしろ『こんなことをするより、この時間を仕事にあてた方が効率も良いのでは?』なんて思う人もいるでしょう。時間の経過とともに『やろう』という人もいなくなり、結局は元どおり、という企業を私はいくつも見てきました。5Sに限らず、新しい取組を定着させるには時間がかかるものです。
なぜ、実践すれば良くなるのがわかっているにも関わらず、多くの企業が諦めてしまうのかというと、得てして、成果が全く見えない期間が長いからです。最初はそんなに急に成果が出ると誰も思っていないとはいえ、『かけた時間と労力の分だけ、少しずつでも良いから成果を実感したい』というのが人間の性です。ところが成果というのは、比例グラフのようには出ません。
たとえ成果を実感できない期間が長くても、成果を信じて諦めなかったときに、突如としてその成果は出てくるのです。皆さんも耳にしたことがあるかと思いますが、故・松下幸之助氏の言葉に、『諦めなければ成功する』というものがあります。かなり本質をついており、まさに5Sのように地道な取組をするときにこそ思い出していただきたい言葉です」(54ページ)
川原さんが、「5Sは特別なスキルが必要なわけでもない」のに、「ほとんどの企業で定着しないというのが実態」と述べておられますが、これを言い換えれば、5Sよりも難しい改善活動は、もっと定着しないということです。さらに、5Sが定着しない原因について、川原さんは、「成果を出せるまでの道のりが長い」と述べておられますが、きょう実践して、あした成果が出るというようなものはないということは、ほとんどの方はご理解されるわけですから、結局は、ひとつのことを継続できるかどうかによるということです。
そして、私も5S活動を顧問先の方にお薦めしていますが、それは、会社の整理整頓をすることを目的とするというよりも、改善活動をやり通す根気強さを習得してもらえるからです。ここで、経営者の方の多くは、「コンサルタントなのだから、あまり労力がかからずに、すぐに効果が得られる方法を考え出すことが、仕事だろう」と考えると思います。私は、そのような改善策はほとんどないと思っていますが、仮に、あったとしても、そのような方法は、他社も実践するわけですから、そのような改善策ではライバルとの差をつけることはできず、実践してもあまり意味はありません。
でも、5Sはスキルが必要がないにもかかわらず、やり遂げられる会社は少ないわけです。こう考えれば、5Sをやり続けることでライバルと差をつけることができると確信できます。それでも5Sに着手しない、または、着手しても継続できないとすれば、それは、結局、意思の強さでしかないということに帰結すると思います。
2026/3/27 No.3390
