鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コミュニケーションとは合意形成が目的

[要旨]

船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、リーダーがメンバーと目標を共有できている状態とは、コミュニケーションとそれに基づく合意形成ができていることを指すということです。ただし、コミュ二ケーションとは、会議の場での一方的な通達ではなく、本音と本音で話し合える場を用意して、時間をかけて理解してもらうことであるという点に注意が必要だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんによれば、停滞するリーダーの考え方は、今の状態を維持するためにはという思考のため、新しいチャレンジをしようとしない一方、成長するリーダーは、これからやりたいこと、近い将来やるベきことから目標を組み立てるので、ゴールまでの距離がはっきりと見えており、そのために何をすベきか、どうすればゴールにたどり着けるのかをメンバーに示すことができるということについて説明しました。

これに続いて、川原さんは、コミュニケーションの重要性について述べておられます。「リーダーの皆さんがメンバーと目標を共有できている状態とは、コミュニケーションとそれに基づく合意形成ができていることを指します。人を動かすためには、理解してもらい、かつ納得してもらうというプロセスをたどる必要があります。

目標の共有を理解につなげ、計画の策定を納得につなげることで人は動くのです。もっと受け手の感情を表すような表現をしてみましょう。理解とは『なるほど、そういうことか』ということ、納得とは『それならできそうそれならできそだ』ということになります。だからこそ、目標を共有する段階で徹底的なコミュ二ケーションが必要であり、それがないと合意形成には至らないわけです。

皆さんは、メンバーとどのぐらいのコミュニケーションができているでしょうか。一点、勘違いして欲しくないのは、ここで必要なのは『説得』ではないということです。メンバーが、『おっしゃりたいことはよくわかりました』とか『会社にとって必要な目標だということは理解しています』などと答えているうちは、『説得には応じます』と言っているだけの話で、合意できているとは言えません。

ここで言う『コミュ二ケーション』とは、会議の場での一方的な通達ではなく、本音と本音で話し合える場を用意して、時間をかけて理解してもらうことです。このあるベきコミュニケーションを実行することによって、リーダーは本当の意味で『何のためにその目標を掲げて達成させなければならないのか』、つまり、目的が必要であることに気づくはずです」(37ページ)

組織論の研究の第一人者のバーナードが、「組織の3要素は、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションである」と述べていることは、あまりにも有名です。しかし、現実には、このコミュニケーションがうまくいっていないという会社は少なくないようです。その理由の1つとして考えられることは、特に、中小企業(=オーナー会社)でありがちなのですが、経営者の方は、自分の考えていることは、部下たちにも伝わっていると考えてしまうことです。

経営者は、当然ですが、普段から組織全体を見渡したす立場にあり、また、常に会社のこれからの事業展開を考えています。これは経営者としての役割として当然のことなのですが、部下の方たちも同じことを考えているという前提で話をしてしまいがちです。ところが、部方の方たちは、日常の業務に懸命に取り組んでおあり、経営者のような視点を持つことはなかなか難しい面があります。だからこそ、ある程度の時間をとって、経営者だからこそ見えてくること、それに基づく将来の構想などを伝えなければ、部下の方たちとなかなか話がかみ合いません。

2つ目は、コミュニケーションが一方的になっていると不十分であるということです。その1つの例は、いわゆる「報連相」です。事業現場の情報を共有することは大切であり、現場の情報を「報連相」によって、会社の幹部や経営者に伝えさせようとする取り組みはしばしば行われています。ところが、「報連相は、部下が上司に対して行うもの」と考える幹部や経営者が多いようです。または、幹部や経営者がそうは思っていなくても、部下にだけ報連相を行わせ、自らはそれを行わないという例も少なくないようです。

例えば、部下が「事業現場でこのようなトラブルがありました」と報告しても、それに対して、「報告してくれてありがとう」、「そのトラブルはこのようにすれば解決できると思う」、「その件は社長に報告して判断を仰ぎます」といった返答をせずに、「それは現場でなんとか対処しろ」とか、「あとで対応方法を伝える」とひきとっても、そのまま尻切れトンボになってしまうということも多いでしょう。

このような状態が続くと、部下の方たちは報連相を行う意義を感じなくなり、次第に部下からの報連相も行われなくなります。そして、後になって現場でのトラブルが大きくなって表面化すると、経営者は「現場からの報告がなかった」と弁明することがありますが、私は、それは、「経営者が現場からの情報が伝わるための働きかけを怠っていただけだ」と考えます。

3つ目は、川原さんが、「人を動かすためには、理解してもらい、かつ納得してもらうというプロセスをたどる必要」と述べておられるように、部下の方たちが会社の方針に基づいて行動してもらうためには、その方針を納得しもらう必要があります。その方針を納得してもらうには、ある程度のコミュニケーションが必要です。もちろん、上司から部下に対して、指示や命令(これもコミュニケーションの一種ですが)を出すことで、部下の方たちは動いてくれるでしょう。

しかし、それでは、部下の方たちは受動的にしか活動しません。上司も、事業活動の現場のすべてを把握できるわけではないので、部下の方たちに状況に合わせて個別に判断するなど、能動的に活動してもらうことが望ましいわけですが、そのためには、会社の方針を部下の方たちが納得できていることが前提です。しかし、人は有機的な存在ですので、部下の方の考え方に耳を傾けながらも、経営者や幹部の考え方を伝えて、両者の合意を形成していく必要があります。

ただ、このような合意形成は短期間ではできないことから、経営者の方はこれを避けてしまいがちですが、逆に、いったん、部下の方たちが会社の方針にしたがって自律的に活動できるような組織になれば、競争力の強い組織になります。これは、逆に言えば、部下の方たちが能動的に活動できるように、十分なコミュニケーションを嘉穂することが、経営者に求められている役割だと、私は考えています。

2026/3/23 No.3386