[要旨]
船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、停滞するリーダーの考え方は、今の状態を維持するためにはという思考のため、新しいチャレンジをしようとしない一方、これからやりたいこと、近い将来やるベきことから目標を組み立てるので、ゴールまでの距離がはっきりと見えており、そのために何をすベきか、どうすればゴールにたどり着けるのかをメンバーに示すことができるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんによれば、成果主義人事評価制度は、短期的な成果が評価されることになるので、従業員の多くは、短期的な成果のためだけに活動するようになり、部門間の壁を取り除いて、組織全体が一体化しなければならないという長期的に重要な課題への取り組みが後回しにされるようになるため、PDCAの実践の妨げになるということについて説明しました。
これに続いて、川原さんは、成長できるリーダーは挑戦する意欲を持っているということについて述べておられます。「リーダーという役割を任されて、自らのさらなる成長とともに、自分のグループや部門を成長させることのできるリーダーは必ず出てきます。一方で、リーダーになるまでは順調に成長していたのに、そこで停滞してしまうリーダーもいます。この違いは、いったいどこからくるのでしょうか。船井総合研究所のチームリーダーの事例で説明しましょう。
船井総合研究所の組織の一番小さな単位がチームです。1チームは大体3~5名で構成されていて、そのチームを率いているのがチームリーダーという役職です。チーム数は全社で数十チームにも上り、チームリーダーはその数だけいるというわけです。チームリーダーの上にはグループマネジャーという役職があり、複数のチームで構成されるグループをマネジメントしています。
よって、組織におけるチームリーダーの当面の目標は『グループマネジャーになること』ですが、そこに至るまでの成長スピードは大きく異なります。もちろん、組織が狙っている領域が成長市場なのか衰退市場なのかも大きな要因にはなりますが、もう一つの要素として、『どんな考え方で目標を設定しているのか』が、組織を成長させる大きなポイントです。
[停滞するリーダーの考え方]『今期は厳しい環境の中、何とか目標を達成することができたけど、来期はさらに厳しい状況になりそうだ。だから、チームメンバーはこのまま現状維持で増やさずに、今期にややプラスした目標で何とか乗り切ろう』つまり、『今の状態を維持するためには』という思考のため、新しいチャレンジをしません。現状維持の目標では、現状を下回る成果しか出ないものです。そんな状態ではメンバーのモチベーションも上がらず、チームは停滞していきます。
[成長できるチームリーダーの考え方]『3年間かけて今のチームがグループになっていく基盤をつくるためには、3年後には3億円ぐらいの業績を上げる組織になる必要がある。そのときにはチームメンバーが10名程度必要だから、来期は少なくとも2名増員しなければならない。目標は今期よりも20~30%上げなければいけないけど、新しい仕掛けをしていけば決して不可能な話ではない。ここはぜひとも挑戦してみよう』
このタイプのリーダーは、『常に上を向いて挑戦していこう』という思考です。『これからやりたいこと』、『近い将来やるベきこと』から目標を組み立てるので、ゴールまでの距離がはっきりと見えています。そのために何をすベきか、どうすればゴールにたどり着けるのかをメンバーに示すことができ、大きな成果を上げることができます。わかりやすいように少し極端な表現にしましたが、決してどちらが良くてどちらが悪いと言いたいわけではありません。
目標達成は、ある意味会社との約束ですから、『できる(=達成可能性の高い)目標』を設定して、しっかりと責任果たすという姿勢も大切なことは確かです。しかし、現状維持に少しプラスしたぐらいの目標では、大きな成長は望めません。成長スビードを加速させるためには、たとえ達成可能性は低くても、『すベき目標』を設定してそこに向かっていく姿勢が大切です。リーダーに求められるのは、『できる目標』と『すベき目標』という2つの視点を持ち、できる目標はそのまま実行し、すベき目標については実現可能な形でメンバーに示していくことです。
例えば、突然『エベレストに登ろう』と言われたら、誰でも『ムリです』と答えるでしょう。でも、『近所のあの山に登ってみない?』と聞かれたら、どうでしょうか。『できそう』と思えませんか。つまり、最終的に達成したい目標七、現状でできる目標の間の距離を測りながら、バランス良くそれぞれをメンパーに提示していくことが必要です。これができるリーダーであれば、メンバーも目標に向かつて努力してくれ、自然と結果もついでくるでしょう」(27ページ)
前々回の記事で、川原さんが、「PDCAにおける『計画』とは、目標を達成するために、『何を』、『誰が』、『いつまでに』、『どうやって』実行するのか、が見えていなければならない」と述べているとお伝えしました。単に、「来期の売上は〇〇円」という目標を示されるよりも、そこに至る手段や方法が明確になっていると、メンバーたちはそれを達成できると感じることができ、達成するための意欲もわくと、私は考えています。
一方、川原さんは、停滞するリーダーは、「チームメンバーはこのまま現状維持で増やさずに、今期にややプラスした目標で何とか乗り切ろう」と考えると述べておられますが、これは言い換えれば、何を、誰が、いつまでに、どうやってといった要素を検討していないため、来期の目標を、今期にややプラスにする程度しか示すことができないのだと思います。
すなわち、リーダーが挑戦的な目標を示すことができるかどうかは、リーダーの心構えというよりも、精緻な事業計画によって、挑戦的な目標の根拠をきちんと示すことができるかどうかだと思います。中小企業経営者の方の中には、事業計画に基づく事業運営に否定的な方もいますが、それは、会計や事業計画策定不得手であったりするという面が大きいと思います。確かに、精緻な事業計画をつくるには、時間や労力がかかります。でも、挑戦的な事業活動ができるのは、精緻な計画があるからであり、事業計画の策定のための時間や労力は十分にペイすると私は考えています。
2026/3/22 No.3385
