[要旨]
会社の事業の部門別管理は大切ですが、それだけでは、各部門が自主的に活動をするための決め手の要因にはなりません。一方で、精度の高い経営判断のためには、部門ごとの業績の管理は大切であり、比較的事業規模の小さい中小企業では、損益計算書に関する項目が妥当です。
[本文]
前回は。税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組のリスナーの方からの、「社長が各部門の主体性を発揮してもらいたいとの意図から、各事業部制から持株会社制に移行したものの、経理業務が複雑になったことから、持株会社制をやめてもとにもどして欲しいと思っているけれど、そのようなことは可能か」という質問に関連し、部門管理体制としでの、事業部制、社内カンパニー制、持株会社制について説明しました。
ところで、リスナーの方が勤務している会社の社長は、各部門が主体的に活動をして欲しいという意図で、持株会社制をとったわけですが、その考え方は妥当かどうかというと、大久保さんは、あまり関係がないと述べておられますし、私も同感です。持株会社制は、「各部門=各子会社」ですので、部門ごとの成績が明確化されることは間違いありません。
しかし、部門ごとの成績が明確になることは、各部門の主体的な活動を促す要因のひとつにはなりますが、それが各部門が主体的な活動を行うようになるための決め手になるわけではありません。各部門が主体的に活動するためには、もっと他の要因に改善を働きかけなければならないことは、明らかだと思います。ところが、その前に、これを言ったら元も子もなくなりますが、事業部制等による部門別管理は、ある程度の事業規模の会社でなければ、あまり役に立ちません。
事業部制等は、大きな権限を各部門に委譲し、社長は、もっと経営の中核的な部分に専念することが目的です。リスナーの方の勤務する会社の規模は示されていませんが、持株会社制にして経理事務が煩雑になったと述べておられることから、事業規模はそれほど大きくないと思われます。では、事業規模があまり大きくなければ、部門別の業績管理はあまり意味がないのかというと、これはこれで大切なことだと思います。
各部門の業績は、各部門のリーダーや社長のどちらが管理するかは別として、より精度の高い経営判断を行うためには必要な情報です。したがって、どのような管理体制をとるかによらず、部門別の業績を把握できるようにすることは大切です。ここで、さらに問題となるのは、部門別管理を行うことは、税務申告のためだけの最低限の経理処理を行っている場合と比較して労力がかかるということです。
この会計に関する取引の記録は、負担が大きくなり過ぎると問題となることは間違いありません。だからといって、情報が少なすぎると、正確な経営判断ができなくなり、却って、業績を下げる要因にもなりかねません。そこで、経営判断のための会計に関する取引の記録は、厳格さは追求しないまでも、ある程度の労力をかけても収集しなければならないと、私は考えています。
では、具体的にどこまで収集すればよいのかというと、それは、個々の会社の状況によって異なりますが、中小企業では、大久保さんもお話しされてられるように、部門ごとの損益計算書に関する項目で、おおよそ問題がないと思います。これも、大久保先生がお話ししてられますが、持株会社制にすると、貸借対照表まで各部門(各子会社)まで作成することになり、それが、管理の煩雑さの要因になります。
ここまでの話をまとめると、(1)部門別管理は大切だが、それだけでは、各部門が自主的に活動をするための決め手の要因にはならない、(2)しかし、精度の高い経営判断のためには、部門ごとの業績の管理は大切である、(3)その部門ごとの業績管理は、比較的事業規模の小さい中小企業では、損益計算書に関する項目が妥当である、ということです。この続きは、次回、説明いたします。
2026/3/6 No.3369
