[要旨]
会社の事業を部門ごとに管理する体制には、事業部制、社内カンパニー制、持株会社制などがあります。事業部制は、事業部ごとに利益の責任を負い、社内カンパニー制では、さらにカンパニーごとに投資効率の責任を負い、持株会社制では社内カンパニーを法律的にも独立した会社とする体制です。
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税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組を聴きました。番組の中で、大久保さんは、「社長が各部門の主体性を発揮してもらいたいとの意図から、各事業部制から持株会社制に移行したものの、経理業務が複雑になったことから、持株会社制をやめてもとにもどして欲しいと思っているけれど、そのようなことは可能か」というリスナーの方からの質問に回答をしていました。
まず、この質問に対する大久保さんの回答は、単に、持株会社制にしただけでは主体性は発揮できないし、独立採算制を進めたいのであれば事業部制が妥当なのではないかというものであり、私も大久保さんと同じ考えです。そこで、持株会社や、その他の事業管理体制について、簡単に説明したいと思います。
1つ目は、事業部制です。事業部とは、製品、地域、顧客などで事業運営を分けて管理するときの部門です。製品ごとに分けるときは、例えば、電気製品メーカーの場合、エアコン事業部、冷蔵庫事業部などに分けます。同様に、地域ごとに分けるときは、東日本事業部、西日本事業部、海外事業部などに分けます。事業部には、各部門に利益獲得のの責任を負ってもらうため、それにともない、事業部にも権限を委譲しています。
例えば、各事業部で事業計画を立ててその遂行管理を行わせたり、事業部内の人事、取引先の選定、販売する製品の選定などの権限を事業部に持たせます。さらに、会社内の事業部同士の取引においても、外部の顧客との取引と同じように、利益を上乗せして会計処理を行うことも特徴です。ところで、事業部は利益に責任を負うという意味で、「プロフィットセンター」(利益責任単位)と呼ばれることがあります。
2つ目の管理体制は、カンパニー制です。カンパニー制は、事業部よりもさらに独立性の高い社内カンパニーをつくり、各カンパニーは、カンパニープレジデントが指揮をとります。カンパニー制の特徴は、各カンパニーが事業活動のための投資に対しても権限を委譲されていることです。事業部制は利益に対する責任を負う、すなわち、事業部ごとに損益計算書の管理を行うわけですが、カンパニー制では、さらに投資に対しても責任を負うことから、貸借対照表の管理も行うことになります。
このことから、カンパニーはインベストメントセンターとも呼ばれます。なお、各カンパニーは、投資額に応じて本社に社内金利を支払います。したがって、各カンパニーは、社内金利以上の投資効率を得なければ利益を得られないことになりますが、このようにして、積極的な事業展開を行うインセンティブを与えていることになります。
そして、3つ目が、持株会社制です。持株会社制では、社内カンパニーを法律的にも独立させます。このことによって、各会社の業績が明確になります。ところで、日本の法律(会社法)では、他の会社から議決権の50%を超えて保有されている会社など、実質的に支配されている会社を、その会社の子会社と定義しています。逆に、子会社を支配している会社は親会社といいます。また、日本の独禁法では、子会社の株式の取得価額の合計額が、会社の資産の50%を超えている場合、その会社を持株会社と定義しています。
さらに、持株会社のうち、自らも事業を営んでいる会社を事業持株会社といい、そうでない会社は純粋持株会社といいます。これについては明確に定義されていませんが、一般的に、持株会社制は、純粋持株会社が想定されているようです。ホールディングカンパニーという言葉も、持株会社を意味する言葉ですが、これも、一般的には純粋持株会社を指すことが多いようです。純粋持株会社は、カンパニー制をとっている本社機能に近い役割を担います。すなわち、子会社グループ全体の企業集団としての経営戦略を立案・管理したり、子会社間での資源配分を行う役割を担います。この続きは、次回、説明いたします。
2026/3/5 No.3368
