鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会計ルールが守られない真の理由とは

[要旨]

短期工事に対する建設会社の売上計上は、一般的には、工事が完了し、発注者の検査が完了した時点で行われるべきであるものの、希に、業績をよく見せたいとの思惑から、検査が行われる前に売上を計上されてしまうことがあるようですが、このようにルールを守らない行為は、業績を改善するための活動から目を背けようとする行為であり、単に、ルールを守るべきという観点だけでなく、会社の発展の観点からも避けなければなりません。


[本文]

税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組を聴きました。番組の中で、大久保さんは、建設業に携わっているリスナーの方からの質問に答えておられました。その質問というのは、元請の大手ゼネコンから、四半期決算に間に合うように、12月中に受注した工事を売上計上して欲しいと依頼されるので、それに応じて請求書を発行し、帳簿上も売上を計上する一方で、実際の工事は、1月以降も手直しが続いているが、このような会計処理に問題はないのかというものです。

なお、本旨から外れますが、2021年から、上場会社等に対し、長期大規模工事(工期が1年以上、請負金額が10億円以上等の工事)は、新しい会計基準が適用されることになりました。しかし、中小企業等で、短期工事のみを請け負っている会社には、この会計基準の影響は受けないことから、従来の会計基準を前提に述べて行きます。一般的に、短期工事の売上計上(収益認識)は、引渡の時点で行います。

では、引渡とはどういう時かというと、これもひとことでは説明が難しいのですが、一般的には発注者の検査が行われ、問題がないと判断された時点です。それでは、大久保さんに質問をした方の会社の場合、手直し工事が残っている工事について、売上を計上してもよいのかというと、引渡が完了していないということを鑑みると、売上を計上すべきではありません。

しかし、数か月以内に引渡は完了するであろうから、売上を計上した日と、実際に引渡が行われた日にずれがあっても、両者が決算日よりも前であれば、決算にはほとんど影響しないことになります。それでは、引渡の前に売上を計上することに問題はないのかというと、それは、なぜ会計のルールがあるのかというところに立ち返って考えなければなりません。会計のルールは、株主や銀行などの利害関係者に対して、正しく業績を報告するためにあるわけですので、それは守らなければなりません。

このルールは守るということは、当たり前すぎる考え方なのですが、なぜ、これが問題になるのかというと、会計のルールが守られない原因の多くは、経営者が、自社の業績をよく見せたいという動機が働くことです。そして、会計のルールを守らないことによって、自社の業績をよく見せた経営者の多くは、その後、業績の改善そのもには努力せず、不正確な業績報告を行うことで、自分や自社の評価を維持しようとします。すなわち、会計のルールを守らないことによって、業績を改善する働きかけは行われなくなることが多いわけです。

大久保さんに質問をした番組リスナーの方は、会計のルールが守られないことに疑問を感じているわけですが、私は、会計のルールは、守るべきかどうかの議論の深いところに、経営者が真の問題から目を背けようとしている意図があるというところに最大の問題があると考えています。少し大げさな内容になってしまいましたが、ルールを守らないことは、業績の改善活動に対して、「蟻の一穴」のような影響を与えることになると考えていただきたいと、私は考えています。

2026/3/4 No.3367