[要旨]
経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、アンバンドリングとは、従来一体的に提供されていた製品・サービスを分解し、顧客の欲する部分だけを提供することによって顧客が不要な部分を購入しなくてよいようにし、顧客による自社からの購買選択を促すビジネスモデルであり、顧客が必要な部分のみを買い求めることができるようにするとともに、不要な部分の提供にかかわる自社の業務活動が不要となるため、その分の業務活動や資源を節約できるようになるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、今枝さんによれば、同質化は、市場のリーダーである企業が採用するモデルであり、市場で下位の事業者や新規参入者が繰り出す自社に対する差別性で顧客受容性の高いものを即座に模做して打ち消してしまい、自社の規模による力に依存して優位を維持し続けるビジネスモデルであるということです。
これに続いて、今枝さんは、アンバンドリングについて述べておられます。「アンバンドリングとは、従来一体的に提供されていた製品・サービスを分解し、顧客の欲する部分だけを提供することによって顧客が不要な部分を購入しなくてよいようにし、顧客による自社からの購買選択を促すビジネスモデルです。顧客が必要な部分のみを買い求めることができるようにするとともに、不要な部分の提供にかかわる自社の業務活動が不要となるため、その分の業務活動や資源を節約できます。
アンバンドリングの用語は、ハードウエアとソフトウエアを一体販売していたIBMが1969年にこれらをバラバラに売ることを決定し、これをアンバンドリング・ポリシーと呼んだことに由来します。今では、ITシステムのみならず、様々な業界で商品の分割購入を可能にすることをアンバンドリングと呼んでいます。航空業界におけるLCCは、アンバンドリングの典型でしょう。食事の提供、手荷物の運搬、便や座席の変更など、本来の航空輸送以外のほとんど全ての付加サービスをオブションとしてしまい、それぞれに価格をつけて販売するのと同時に、航空輸送というサービスの本体部分の価格を安く設定しています。
QBハウスは、シャンプーやェービングなどのサービスは一切省き、カットを1,000円という安価で提供しています。日用雑貨品卸の中央物産は、メニュープライシングという卸価格決定方式を導入して、同社が提供するサービスを顧客が自由に選択できるようにしています。顧客にとって必ずしも必要ないものをオプションにしてしまうという意味で、ノーフリル(No-frill)ないしノンフリル(Non-frill)と呼ばれるビジネスモデルもアンバンドリングとほぼ同義と考えてよいでしょう。(中略)
アンバンドリングでは、一体的に販売されていた提供価値を分解し、別々に購入可能にするように変更します。不要な部分を販売しないことによってその分の売上は落ちますが、その結果として顧客による自社の選択が増加し、顧客単価は落ちるものの顧客数が上がり売り上げが増加します。そして、提供しなくなる価値に相応する業務活動が不要になり、更にそれに相応する経営資源が節約できることになります。
例えば、LCCのエアラインが食事の提供の一部を行わない結果、飛行機内という限られたスペースにおいてギャレー(台所)の設置スペースを極小化でき、その分余分に座席を搭載することが可能となったり、客室乗務員の数を減らすことができます。QBハウスではシャンプーやシェービングを行わない結果、水回りの設備やボイラが不要になり、店舗の設置場所が自由になりました。これらは、決して小さくない設備量、ひいては投資額の減少をもたらします。卸業者の中央物産は、メニュー化した作業の業務量をABC(Activity Based Costing)を用いて測定した上で価格に反映しています。
一方、競合はこれらに投資済みであることから、簡単にはアンバンドリングできないことになります。アンバンドリングによる提供価値の分割の先にある利益創出の仕組みには、いくつかのオプションがあります。まず、アンバンドリングによって分割された製品・サービスを顧客が購入すると、その他の部分(オプションになっている部分)も同じ企業から買わざるを得ないようにしてしまい、そこから利益を上げるというモデルが考えられます。
顧客は最初の取引によって購入先を拘束されるので、追加部分の価格を引き上げて利益率を上げるということも可能です。このように書くと、顧客にとってよいことはないようにも聞こえますが、アンバンドリングによって顧客は不要部分を買わなくてもよくなり、結局全部購入する場合であってもオプション部分が必要かどうかを見極めてから購入することができるので、顧客にとってのリスクが減少し、そのメリットは大きいと言えます」(94ページ)
アンバンドリングについては、環境変化への対応にも優れていると、私は考えてます。例えば、コロナ禍で、冷凍食品の需要が増えたことに対し、冷蔵庫から冷蔵機能を外した家庭用冷凍庫、いわゆるセカンド冷凍庫の需要が増えました。また、テレビ離れを背景に、ドン・キホーテがチューナーレステレビを開発し、販売したところ、1か月で6,000台が売り切れたそうです。このように、アンバンドリングで新たな需要への対応が可能かどうかを検討してみることも、売上増加のための鍵になると思います。
また、LCCのように、商品の提供方法についてアンバンドリングの考え方を当てはめることで、新たな需要を生むことができると、私は考えています。例えば、生花店の青山フラワーマーケットは、生花店には必要とされていた、花の寿命を延ばすための冷蔵室を備えない店舗を開発しました。その結果、これまで出店が難しかった、狭い空間にも容易に出店ができるようになり、駅中、駅近を中心に出店していった結果、10年間で売上が約1.8倍に伸びたそうです。これは、QBハウスの花屋版と言えるのかもしれません。
2026/2/26 No.3361
