[要旨]
経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、顧客ライフサイクルマネジメントは、顧客の生涯のできるだけ早期に顧客とのコンタクトを構築し、顧客の成長による嗜好やニーズの変化、可処分所得の変化などに合わせて提供価値と収益性を変化させることによって利益を上げるビジネスモデルだということです。例えば、ベネッセは、「にどもちゃれんじ」の安価で魅力的な教材で子供を早期に補捉し、同社のメインの商品である進研ゼミへと顧客を誘導して利益を上げています。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、今枝さんによれば、グローバル化とは、現在の日本国内における提供価値(製品・サービス)を海外、特に新興国において提供・販売し、それと並行してビジネスシステムをグローバルに最適配置するビジネスモデルであり、日本など先進国における強みを新興国に移植して売上を増加させ、継続的な成長を目指すことができるということについて説明しました。
これに続いて、今枝さんは、顧客ライフサイクルマネジメントについて述べておられます。「顧客ライフサイクルマネジメントは、顧客の生涯のできるだけ早期に顧客とのコンタクトを構築し、顧客の成長による嗜好やニーズの変化、可処分所得の変化などに合わせて提供価値と収益性を変化させることによって利益を上げるビジネスモデルです。トヨタ自動車は、『いつかはクラウン』のコピーが端的に表すように、ディーラーによる顧客情報管理と顧客の買い替え時期の把握を前提として、顧客の年齢の上昇と収入増加に合わせて上位の車種を提案していき、最上位グレードヘと導いていく方法で顧客からの収入の最大化を図ってきました。
ベネッセは、『にどもちゃれんじ』の安価で魅力的な教材で子供を早期に補捉し、同社のメインの商品である進研ゼミへと顧客を誘導して利益を上げています。(中略)アップルは、米国において同社のPCであるマッキントッシュを学校に寄贈、あるいは安価で提供し、学生にその独特の操作性に習熱させて、卒業後も同製品を使用することを促していました。(中略)このビジネスモデルでは、顧客の生涯の早い段階で製品やサービスを通じて顧客を捕捉し、その後顧客の成長や習熟に従って新たな製品・サービスへと顧客を移行させるため、マーケティング費用を大幅に節約することができます。
顧客の住所や連絡先に関する情報は個人情報として保護されているため、そもそも顧客を捕捉できること自体が大きな優位なのです。顧客の年齢が進むに従って顧客の収入が増え、製品・サービスへの習熟も進んで顧客の提供価値への要求が大きくなるため、高価な製品・サービスを売ることができるようになり、顧客に販売する提供価値の更新にっれて収益性も増大していくのが普通です。顧客ライフサイクルの前半では顧客の獲得が優先されるため、利益度外視の価格で販売して顧客のハードルをできるだけ下げるー方で、ライフサイクル後半では顧客が離脱しないように努めながら利益率を上げていきます。
例えば、ベネッセでは『こどもちゃれんじ』よりも進研ゼミの価格が高く、しかも学年が進むに従って高額になるように設定されています。顧客ライフサイクル前半でのディスカウントを正当化するため、『子育て支援』や『学割』などの名目も使用されます。また多くのメーカーが、最上位モデルの宣伝に有名人を起用するなどして憧れの製品とし作り上げ、ライフサイクルによる製品・サービスの更新を促すということを行っています」(54ページ)
顧客ライフサイクルマネジメントは、顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)を高めることが目的と思われます。顧客生涯価値の「生涯」とは、顧客が生まれてから亡くなるまでという意味の生涯ではなく、1人の顧客との取引が始まってから終わるまでという意味です。また、「価値」は、その顧客との取引開始から取引終了までに得ることができるキャッシュフローの総額の現在価値という意味ですが、1人の顧客から得ることができる利益の総額とほぼ同じです。
この、顧客ライフサイクルマネジメントはほとんどの方が重要と考えると思いますが、なぜ、重要かというと、個別の顧客に対して、都度、取引を重ねるよりも、1人の顧客にリピート購入してもらう方が、販売する側の労力が少なかったり、購入する側の意思決定も容易になるからです。そこで、まず、リピート購入をしてもらえるような商品を揃えることが必要です。次に、こちらは、LTVと直接の関係はないものの、顧客関係管理(Customer Relationship Management、CRM)を行うと、さらに効率性が高まります。
CRMは、顧客の属性に合わせて、適切な営業活動を行い、顧客との関係を深めていく手法です。例えば、自動車販売店では、顧客が購入した車種や購入日のほか、購入者の職業、趣味、家族構成なども管理し、リピート購入につなげていることは広く知られていますが、これも、CRMのひとつです。そこで、自社製品をリピート購入して欲しいと考えている経営者の方は、LTVを多くするにはどうすればよいかという観点で製品を開発したり、CRMを導入して顧客関係強化を図ることをお薦めします。
2026/2/24 No.3359
