[要旨]
経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、グローバル化とは、現在の日本国内における提供価値(製品・サービス)を海外、特に新興国において提供・販売し、それと並行してビジネスシステムをグローバルに最適配置するビジネスモデルであり、日本など先進国における強みを新興国に移植して売上を増加させ、継続的な成長を目指すことができるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、今枝さんによれば、特定市場の支配するビジネスモデルは、他の市場から隔された特定の市場において圧倒的な市場シェアを持つことによって、規模の経済によるコストダウンを図ることができるなど、他社に対して優位に立つことができるビジネスモデルであるということについて説明しました。
これに続いて、今枝さんは、グローバル化のビジネスモデルについて述べておられます。「グローバル化とは、現在の日本国内における提供価値(製品・サービス)を海外、特に新興国において提供・販売し、それと並行してビジネスシステムをグローバルに最適配置するビジネスモデルです。先進国においては人口が伸びず、多くの産業でプロダクトライフサイクル後半の停滞を経験する一方、新興国では所得の上昇とともに市場が形成され、成長が始まっています。
そのため、日本など先進国における強みを新興国に移植して売上を増加させ、継続的な成長を目指します。また、規模を達成し、業務活動や経営資源などのビジネスシステムをグローバルで最適配置する結果、会社全体として有利な費用構造を持てるようになり、世界市場における競争力を維持・強化できます。トヨタ自動車、ホンダ、スズキ、ヤマハ発動機などの自動車メーカー、二輪車メーカー各社は、新興国に工場とディーラーネットワークを構築してグローバル企業へと発展しています。
自動車以外でも、パナソニックやソニーなどの電機メーカー各社や、コマツ、日立建機などの建機メーカーをはじめ、最近では従来の組立メーカーに加えて素材、食品、衣料、チェーンレストランなど様々な業界でグローバル化への挑戦が行われています。グローバル化の前提となる環境側の要因は、主に2つあります。1つ目の要因は先進国での市場成長の終焉と新興国における市場形成と成長の始まりです。この市場の地理的な歪みを捉え、自社も新興国に拡大しないと成長ができなくなってしまうのです。もう1つの要因は、国境という今まで市場を隔てていた境界の消滅です。
従来国境が企業のビジネスシステムを分断する界面として機能していたものが、通信や物流、関税障壁の撤廃によって境界としての役割を果たさなくなり、グローバルで意味のある規模を達成し機能を最適配置しないと、これを達成した企業に敗れてしまうのです。『特定市場の支配』でも述べたように、規模は様々な好循環を生み出しますから、新興国に市場が広がった以上、ここに進出しておかないと、グローバルな競合との関係で体力差が生まれ、新興国においてだけではなく、従来の先進国市場でも敗退しかねないのです。
グローバル化においては、従来先進国において展開していた提供価値、業務活動、経営資源を新興国に展します。先進国において作り込まれた提供価値を新興国に投入するため失敗のリスクが少なく、今までの市場における顧客受容性を移植することができ、売上を継続的に成長させることができます。一方、業務活動や資源は最適な地域に再配置します。これによりコストダウンが進みます。最後に、グローバル市場を一体的に運営することによってグローバル全体として規模の経済に基づく好循環を廻していきます」(47ページ)
事業活動を海外に展開することの利点については、理解がそれほど難しくはないと思います。特に、日本国内では経済活動が成熟化している状況である一方、需要が伸びている海外では、製造・販売する側がイニシアティブを握ることができる可能性が高いという面では、その利点があると考えることができます。例えば、建設機械メーカーのコマツは、2008年3月期の売上高が約9千億円でしたが、2025年3月期の売上高は約4.1兆円に急成長しています。この要因は1つだけではないと思いますが、主に、北半球では経済活動が停滞しつつある一方で、南半球では資源開発が活発化しており、その需要に応えていることのようです。
この例のように、市場を世界に広げることで、ビジネスチャンスが広がることが、グローバル化の最大の利点と言えます。そして、最近では、中小企業であっても、グローバル化で成長している事例も珍しくなくなりました。中小企業白書2024年版によれば、「2021年度の大企業の直接輸出企業割合は28.1%、直接投資企業割合は32.0%となっている。一方で、中小企業の2021年度の直接輸出割合は21.0%、直接投資企業割合は14.2%となっている」そうです。
したがって、海外展開を検討している中小企業経営者の方は、専門家の方にご相談してみることをお薦めします。しかし、当然のことながら、海外展開にはリスクもあることも注意が必要です。例えば、日本と比較して、海外では商習慣が異なったり、政情が不安定であるなど、カントリーリスクが高かったりすることや、海外現地法人を設立したとき、その法人の利益は母国に移転できないこともあるなどの制約があります。とはいえ、総じてグローバル化の利点は大きいと私は考えています。
2026/2/23 No.3358
