鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ドミナントは競合が入り込む隙をなくす

[要旨]

経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、地域ドミナントは、ある限られた地域内に集中的に複数の店舗を出店して競合が入って来る隙間をなくし、地域の顧客や需要を総取りするピジネスモデルであり、例えば、西松屋はドミナントエリアを設定して出店していますが、店舗の売上高が予め定めた目標を超えると、その店舗とわざと顧客を共食いするようにもう1店舗出店することで、競合が入り込む隙をなくし、同時に顧客がゆったりと買い物ができ、レジでの待ち時間も無くなって顧客の満足が上がり、ひいてはりピートにつながることを狙っているということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、今枝さんによれば、事業の競争力を高めるためには、誰に何を売るかという市場でのポジショニングとしての戦略だけに目を向けるのではなく、戦略を支える業務活動や経営資源などの内部の仕組みを組み合わせたもの、すなわち、ビジネスモデルに目を向けるこが大切ということについて説明しました。

これに続いて、今枝さんは、西松屋の地域ドミナントについて述べておられます。「地域ドミナントは、ある限られた地域内に集中的に複数の店舗を出店して競合が入って来る隙間をなくし、地域の顧客や需要を総取りするピジネスモデルです。このビジネスモデルは、リアルな店舗を持つ企業のためのモデルです。本来、店舗はある程度距離を置いて出店したほうが店舗商圏が広がり中間に存在する顧客の取り込みも可能となるため効率がいいのですが、このビジネスモデルでは地域を限定してわざと店舗を密に配置します。

『いかに競合がいない空間を作り出せるか』ということは、他の優れたビジネスモデルにも共通して見られる重要な思考です。そしてこの地域ドミナントは、競合のいない地理的な空間を作り上げようとするビジネスモデルなのです。(中略)西松屋は『ドミナントエリア』を設定して出店していますが、店舗の売上高が予め定めた目標を超えると、その店舗とわざと顧客を共食いするようにもう1店舗出店すると言われています。これにより競合が入り込む隙がなくなるのと同時に顧客がゆったりと買い物ができ、レジでの待ち時間も無くなって顧客の満足が上がり、ひいてはりピートにつながるとしています。

地域ドミナントでは、地域を選んで集中的に出店します。競合の出店余地を封じるほど密に出店するわけですが、多くの場合、更に進んで西松屋のように自社の店舗間で顧客の共食いが起きるほどに密集して出店してしまいます。顧客の共食いにより店舗効率は落ちますが、競合が入って来る可能性は更に低くなります。共食いにより1店舗あたりの売上や利益が減ることになりますが、一方で、地域を独占できれば競合がいなくなるだけではなく、オペレーション面で大きく効率を上げることが可能になります。

まず同一地域に店舗が密集しているので、配送の効率が上がります。同一のトラックでより多くの店舗への配送が可能となりますし、店舗間融通もしやすくなりますので、在庫も抑制できます。チラシや看板などの広告効率も上がりますし、地域の人たちは同じ地域で自社の店舗を何度も見ることになりますので、地域での自社のプレゼンスが上がり、地域の人たちの意識に強く焼きつくことになります。更に、地域需要を独占できるので、店舗間で顧客がスイッチすることによる売上変動が地域全体として吸収されて需要が安定し、会社全体の業績が安定するだけでなく、在庫圧縮などの点でもメリットがあります。

また、要員の融通も可能になることもあります。副次的な効果ですが、西松屋が意図しているように店舗の効率が落ちることによって、顧客の待ち時間や少なくなったり、店舗内をゆったり使えるようになることもあります。その結果として顧客満足度が上がり、それが更に顧客の確実な来店を促すことになるのです。また、ゆったり買い物ができることによって顧客の滞留時間を上げることができれば、それが更なる購買や店舗選択につながります」(26ページ)

店舗同士が顧客を奪い合うような現象は、カニバリゼーションと呼ばれてることは広く知られていますが、地域ドミナントは、そのカニバリゼーションの弊害をカバーするメリットが得られるということです。繰り返しになりますが、店舗効率だけを見ると、地域ドミナントによって店舗効率は最善ではなくなるのですが、その低くなった効率性は、ライバルの出店による機会損失よりも小さくなるということです。

この地域ドミナントは、コンビニエンスストアや地域スーパーでも採用されていますが、私は、これからは地域ドミナントは採用しない方がよいと考えています。なぜなら、例えば、ミニスーパーのまいばすけっとは、首都圏に約1,200店舗あると言われていますが、現在、トライアルGOが出店攻勢を行っており、両社は消耗戦に入ると思われます。市場が広がっている時代は、地域ドミナントの持続性はあると思いますが、現在は、市場が縮小しており、体力のある会社同士が顧客を奪い合う時代になっており、あまりうまみのないビジネスモデルになっていくと思います。

2025年12月に、ドラッグストアのツルハとウェルシアが経営統合したのも、これまで地域ドミナントを実施してきた両社が、その手詰まりを感じているからではないかと思います。また、地方銀行も、県境をまたいで経営統合しているのも、やはり地域ドミナントの効果が薄れていることが背景にあると思います。とはいえ、地域ドミナントは、完全に否定されるべきものではありません。地方都市であっても、人口が増加している地域はあるので、そういった地域への地域ドミナントを実施することは妥当であると思います。

2026/2/20 No.3355