[要旨]
経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、事業の競争力を高めるためには、誰に何を売るかという市場でのポジショニングとしての戦略だけに目を向けるのではなく、戦略を支える業務活動や経営資源などの内部の仕組みを組み合わせたもの、すなわち、ビジネスモデルに目を向けるこが大切ということです。これまでの戦略論では、ポジショニングが重視され、戦略が主に論じられてきたため、社内の仕組み等は従として扱われてきましたが、その結果、戦略の策定において実現可能性が検討されなかったり、戦略を実現する際に内部の仕組みを軽視してしまい、結果として実現が頓挫するということが頻繁に起こったということです。
[本文]
コンサルティング会社のエミネンスの代表の今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を拝読しました。同書で、今枝さんは、現在は、経営戦略だけでは事業の競争力は向上しにくいので、ビジネスモデルを取り入れることが望ましいということついて述べておられます。「本書の目的は戦略策定の力、戦略を読み解く力を養うことです。そのために、誰に何を売るかという市場でのポジショニングとしての戦略だけに目を向けるのではなく、戦略を支える業務活動や経営資源などの内部の仕組みを組み合わせたもの=ビジネスモデルに目を向けることにします。
なぜそうするのかと言うと、従来の戦略論ではポジショニングが重視され戦略が主であるとすると、社内の仕組み等は従として扱われてきました。その結果、戦略の策定において実現可能性が検討されなかったり、戦略を実現する際に内部の仕組みを軽視してしまい、結果として実現が頓挫するということが頻繁に起こりました。また、一見すると戦略として間違っていなくても、競合による戦略の模做可能性について正しく理解しないため、結果的に戦略自体が質の低いものになることもありました。これらの失敗は、戦略を考える上で、それを支える社内の仕組みや経営資源(つまりビジネスモデル)の検討や理解が不十分であったからに他なりません。
ではなぜ戦略を考える際に、それを支える社内の仕組みや経営資源について検討されないのか。それは多くの場合、戦略の立案者と戦略の実行者とが異なる担当者であることに起因します。また、それぞれを別々のコンサルタントが支援するといったことが、戦略とそれを実現する仕組みの分断に更なる拍車をかけているのです。持続可能な競争優位の源泉は、従来戦略として語られてきた顧客と提供価値の選択、即ちポジショニングよりも、むしろ業務活動や経営資源なと戦略を支える仕組みの方にあることが多くあります。
更に、戦略とそれを支える仕組みの間には連関が存在したり、循環が生じて自己再強化されるようになっていることもあります。つまり、成功しているビジネスは、戦略として強いのではなく、その戦略を支える仕組みも含めて事業体として強い、比喩的に言えば『生き物』として強いということができるわけです。このように、戦略を、それを支える仕組みと一緒に理解することは、戦略の実行の整合性や実現可能性を上げるだけではなく、戦略の質そのものを改善することにもつながるのです」(8ページ)
ビジネスモデルという言葉は、最近、頻繁にきかれるようになりましたが、理解を深めるために、その定義について確認したいと思います。今枝さんは、ビジネスモデルを「戦略を支える業務活動や経営資源などの内部の仕組みを組み合わせたもの」と定義しています。ちなみに、経済産業省が公表している、デジタルガバナンス・コード2.0には、ビジネスモデルについて、「企業が事業を行うことで、顧客や社会に価値を提供し、それを持続的な企業価値向上につなげていく仕組みである。具体的には、有形・無形の経営資源を投入して製品やサービスをつくり、その付加価値に見合った価格で顧客に提供する一連の流れを指す」と記載されています。
これらのビジネスモデルの定義からわかることは、ビジネスモデルは、会社の内部の経営資源が鍵になっているということです。例えば、今枝さんが、「一見すると戦略として間違っていなくても、競合による戦略の模做可能性について正しく理解しないため、結果的に戦略自体が質の低いものになることもある」とご指摘しておられるように、経営戦略そのものは模倣されやすいため、経営戦略だけに着眼していては、競争力を高めることは困難です。そこで、内部資源に着眼して、それを十分に活用する経営戦略を策定・実行することで競争力が高まります。ところが、中小企業では、内部資源の量が少なかったり、質が低かったりするので、どうすればよいのかという問題が浮かびます。
そこで、内部資源の量を多くしたり質を高めたりする活動が大切になるのですが、それだけでなく、現在の自社の内部環境分析をして、それを活用できる経営戦略を策定することで、ある程度の競争力向上を行うことができると思います。ちなみに、内部環境を分析して経営戦略を策定するには、VRIO分析やSWOT分析という手法があります。話を戻すと、ビジネスモデルは、内部資源が鍵になる手法であり、ビジネスモデルが注目されているこれからの時代は、内部資源をうまく活用する時代であるともいうことができると、私は考えています。
2026/2/19 No.3354
