鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

馬力はトルクと回転数に分解して考える

[要旨]

公認会計士の林總さんによれば、売上利益率と総資産回転率は、総資産利益率の因数になっていますが、これらの関係を、総資産利益率を自動車の馬力、売上利益率をトルク、総資産回転率をエンジンの回転数に例えて考えればより理解しやすくなり、事業の改善活動に活用しやすくなるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、公認会計士の林總さんのご著書、「騙されない会計-会社の数字のウラを読む方法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、林さんによれば、高額商品ほど利益率が高いので、多少リスクがあっても、そういう商売のほうが儲かると考える人が多いようですが、フレンチレストランのひらまつと、餃子の王将では、利益率は同じであり、むしろ、王将の方が在庫回転率が高いので、少ない資金でビジネスを回しており、さらに、王将は、人件費を手厚くすることで、従業員のモチベーションを高め、生産性を高めているということについて説明しました。

これに続いて、林さんは、総資産回転率は会社の馬力を測る指標であるということについて述べておられます。「総資産利益率(=当期の利益÷総資産)とは、商売に投入した総資産(つまり事業に投入したキャッシュ)が、どれだけの利益を上げることができたかを表す数字です。当期利益が100万円で、総資産が500万円であれば、総資産利益率は20%。利益200万円で、総資産400万円なら50%となります。

売上利益率(=当期の利益÷当期の売上)は、売上に占める利益の割合。当期の売上が200万円、利益が100万円なら売上利益率は50%。売上が200万円あっても、利益が20万円しか出ていなければ売上利益率は10%となります。総資産回転率(=当期の売上÷総資産)は、総資産が何回回転して売上を作ったか、を表す数字です。総資産が50万円で、売上が100万円であれば2回転、同じ総資産で売上が200万円あれば総資産は4回転したことになります。

この3つを1つの数式にまとめると、(利益÷売上)×(売上÷総資産)=売上利益率×総資産回転率=総資産利益率となります。総資産利益率は、クルマにたとえていえば『馬力』。会社の馬力を表す数字です。売上利益率はトルク。トルクとは、カンタンにいえば回転軸を中心に働く、前方へと推進する力。総資産回転率はエンジンの回転。エンジンの回転数にトルクの力をかけると、どれだけ馬力があるかがというわけです。

馬力を上げるには、どうすればいいか。カンタンですね。回転率と利益率を上げればいい。つまり、トルクを太くして、エンジンの回転を速くする。回転率を上げるには、少ない資産で、より多くの売上を上げる仕組みを作る必要があります。利益率を上げるには、無駄なコストを減らす必要がある。そうやって、より少ない資産で、より多くの利益を出せれば会社の馬力はパワーアップします。『在庫』を軸に、パワーアップの方策を考える手もあります。

在庫は、投入したキャッシュの仮の姿であり、利益の源泉です。ということは、より少ない在庫で、より多くの利益を生み出す仕組みを考えればいい。そのためには、在庫の回転を速くするか、もしくは在庫の利益率を上げる--。(中略)ぐるぐると回転し続けるキャッシュが会社の成長や存続を支えているように(中略)、『在庫』、『予算』、『利益』、『費用』、『キャッシュフロー』の極意も相互にがっちりとつながっています」(177ページ)

林さんがご説明しておられるように、売上利益率と総資産回転率は、総資産利益率の因数になっていますが、これは、財務分析でよく使われる、改善ポイントを探る手法です。ちなみに、詳細な説明は割愛しますが、自社の指標を因数ごとに分析する手法をデュポン方式といいます。ちなみに、「デュポン」とは、1919年にこの手法を開発した、米国の化学会社の社名です。

話を戻すと、林さんが例えているように、総資産利益率を自動車の馬力と考えて、それを高めるために、トルクである売上利益率と、エンジンの回転数である総資産回転率に分解して考えると、何をどう改善すべきかがイメージしやすくなります。また、このような目標をする指標を因数にして展開していくことは、KGIとKPIの設定に応用できます。

例えば、バランススコアカードを活用して業関を改善した、米国のサウスウェスト航空では、「地上クルーのチームワーク改善」→「実稼働時間の増加」→「定刻離着陸の厳守」→「低コストの実現」と、KPIを積み重ねてKGIを実現する因果関係を明確にすることで、効率的な改善活動を実践しています。まとめると、改善活動は、単に気づいたことを五月雨的に行うのではなく、最終的な目標を分解して行うと、改善ポイントが明確になり、また、可視化され、効率よく業績を改善できるということです。

2026/2/17 No.3352