[要旨]
公認会計士の林總さんによれば、事業計画は経営者の思いを数字に置き換えたものであり、それらを貸借対照表、損益計算書などで表現し、自分の思いが合理的なものかどうかをチェックし、結果が赤字であればどこに問題があるのかをチェックし、計画を練り直していくことが重要だということです。すなわち、事業計画は夢を語るための“絵に描いた餅”ではなく、思いの合理性をチェックし、PDCAサイクルを効果的に行っていくためのツールだということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、公認会計士の林總さんのご著書、「騙されない会計」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、林さんによれば、経営がうまくいっていない会社は、たいてい壮大なビジョンを語り、無理な計画を立て、むやみに事業を拡大して、決算を見てため息をつき、振り返りも反省もせずに終わっているか、明確なビジョンもないまま計画を立てているため、従業員がついてこない状態だということなので、PDCAを実践して、従業員の足並みをそろえ、効率的な活動ができるようにすることが大切だということについて説明しました。
これに続いて、林さんは、会計は事業改善のためのツールであるということについて述べておられます。「経営は『ビジョン』ありき。ビジョンあっての『計画』です。そして、計画は『実践』と『見直し』があって、初めて推進することができる。実践と見直しのベースとなるのが予算と決算の数値です。ところが中小企業経営者の多くは、例えば銀行から融資を受ける際に事業計画書の提出を求められると、まずバランスシートや損益計算書を作る。それを見せながら、『今年まで業績はパッとしなかったけれど、来期はもっと伸びるはずです』と、主張する。
でも、『その根拠は?』と問われても、答えられない。なぜなら、『これは税理士さんが作ってくれた資料ですから……』笑い話でも珍しい話でもありません。経営のイロハを多少はかじった(つもりの)二代目経営者や若い起業家の中にも、こんなトンチンカンなことを言う人が結構います。そもそも事業計画とは、経営者の思いを数字に置き換えたもの。思いを数字に置き換え、これをバランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書で表現して、自分の思いが合理的なものかどうかをチェックする。計算した結果が赤字であれば、合理性がない、ということです。
では、どこに問題があるのか。コストがかかりすぎているのか、売上を伸ばす工夫や手立てが足りないのか。あるいは、自分の思いそのものが論理的におかしいのか--。そこをチエックして、計画を練り直していくことが重要です。予算は夢を語るための“絵に描いた餅”ではありません。決算書も、単なる成績表ではない。会計は、思いの合理性をチェックし、PDCAサイクルを効果的に行っていくためのツール。つまり、経営を支援するための道具なのです。最近、ITや英語と並んで、会計もビジネスパースンに必須の知識といわれていますが、学ぶベきは“経営に役立つ”会計です」
林さんは、「事業計画とは、経営者の思いを数字に置き換えたもの」とご指摘しておられますが、融資を受ける際に、銀行から事業計画を提出を求められると、税理士などに作成を依頼する経営者の方は少なくないようです。私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきて感じることは、多くの中小企業経営者の方は、「これからの自社の事業活動は問題なく推移する」と考えている一方で、事業計画書は融資申請のときに銀行から提出を求められるので、わざわざ手間をかけて作成するものと考えているようです。
自社の事業が問題なく推移すると考えているのであれば、1年後、2年後、3年後の売上高はどれくらいか、それにともなう費用はどれくらいで、利益はどれくらいかということは見通しているはずなので、精度は高くなくても、それを示すことができるはずです。したがって、銀行から求められてわざわざ作成するものではないはずなのですが、どういうわけか、事業計画書は銀行から求められるのでわざわざ手間をかけて作成するものと考えている方は少なくないということが現実のようです。
そして、このような方に私はお会いしたことはないのですが、「当社が銀行から融資を受けることができなかったのは、税理士が融資を受けられるように決算書を作成しなかったからだ」と、融資を拒まれた原因は税理士にあると考えている経営者の方もいるときいたことがあります。もちろん、このような方は例外だと思いますが、自社の事業は大丈夫と考えつつ、なぜか、その根拠を事業計画書で示すことができる経営者の方は少ないことは現実のようです。
ただ、「どうあるべきか」はさておき、林さんが「思いを数字に置き換え、これをバランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書で表現して、自分の思いが合理的なものかどうかをチェックする」という活動は大切だと思います。すなわち、事業計画書を作成することは、自社の事業をシミュレートするということでもあると思います。こういった検証を行うだけでも、経営者としての舵取りを誤ったまま事業を続けることが少なくなると思います。
さらに、事業計画書を作成することで、これからどういった活動を、どのタイミングで、誰が行うのかということが明確になり、そして、それを社内で共有することで、足並みを揃えた活動ができるようにもなります。林さんは、「会計は経営を支援するための道具」と述べておられますが、精度の高い経営を行うために、事業計画書を作成していない経営者の方は、これを作成し、より計画的な経営を実践することをお薦めします。
2026/1/28 No.3332
