鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成長のためにPDCAのコマを速く回す

[要旨]

公認会計士の林總さんによれば、経営がうまくいっていない会社は、たいてい壮大なビジョンを語り、無理な計画を立て、むやみに事業を拡大して、決算を見てため息をつき、振り返りも反省もせずに終わっているか、明確なビジョンもないまま計画を立てているため、従業員がついてこない状態だということです。そこで、PDCAを実践して、従業員の足並みをそろえ、効率的な活動ができるようにすることが大切だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、公認会計士の林總さんのご著書、「騙されない会計」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、林さんによれば、在庫を抱えすぎるとリスクやコストが増加するので、それを減らすためには、リードタイムを短くし、ロットを小さくすることを目指すべきということですが、最近は、情報技術が発達しているので、それを実現することが容易になってきているということについて説
明しました。

これに続いて、林さんは、PDCAの重要性について述べておられます。「会社の北極星ともいうベき10年先、20年先の経営ビジョンを策定し、それをもとに3~5年の中期経営計画を立て、各年度の事業計画を練って、それを月々の計画に落とし込んでいく。これは、経営者の大事な仕事です。そして、この計画に沿って、コマのようにPDCAサイクルを回し続けることが、成長のエンジンとなる。PDCAは、経営ビジョンに向かって永遠に統くサイクル。PDCAのコマを正しく回し続けていれば、進むベき道を誤ることも、会社が倒れる心配もないはずです。

経営がうまくいっていない会社は、たいてい壮大なビジョンを語り、無理な計画を立て、むやみに事業を拡大して、決算を見てため息をつき、振り返りも反省もせずに終わっています。あるいは、明確なビジョンもないまま計画を立てているから社員がついてこない。自分たちが何のために汗をかいているのか、会社がどこに向かっているのか分からないから、『こんな仕事、やってられないよ』となってしまうわけです。日々の業務にモンダイがあれば、それは即カイゼンすベき--。そんなことは子どもでも分かります。

でも、どこに問題があるのか分からなければ、改善のしようもない。改善されないのは、問題が見えていないからです。(……もちろん、単なる怠慢で改善されないケースもありますが)問題の所在は、経営ビジョンをベースに決めた一里塚(月次予算=目標)と、会社の現在位置を表す月次決算(実績)を比較することで、初めて明らかになります。決算資料は、見直しと改善のベースとなるもの。これがスビーディに上がってこなければPDCAサイクルの回転が遅くなり、会社という名のコマはいずれ倒れてしまいます。あなたの会社、月末の締め日から月次決算が上がってくるまでに何日かかっていますか?これも会社の命脈を知るバロメーターのひとつです」

私も、これまで繰り返し、PDCAの重要性をお伝えしてきました。しかし、林さんも、「経営がうまくいっていない会社は、たいてい壮大なビジョンを語り、無理な計画を立て、むやみに事業を拡大して、決算を見てため息をつき、振り返りも反省もせずに終わっている」とご指摘しておられますが、「振り返り」や「反省」を実践していない会社は少なくありません。それでは、なぜ、業績があまりよくない会社では、PDCAを行っていないのかというと、それは、いくつかの要因が考えられます。

そのひとつは、林さんが、「明確なビジョンもないまま計画を立てているから社員がついてこない、自分たちが何のために汗をかいているのか、会社がどこに向かっているのか分からないから、『こんな仕事、やってられないよ』となってしまう」とご指摘しておられるように、これからどのように事業活動を進めていくのかについては、経営者の頭の中に漠然と描かれているものの、それが従業員の方にうまく伝わらず、会社組織として足並みがうまく揃えられていないことだと、私は考えています。

PDCAを実践するときは、「P」の段階で事業計画を立てるわけですが、この事業計画の重要な役割は、いつ(When)、誰が(Who)、何を(What)、どれだけ(How Many)の3W1Hを明確にし、組織活動の足並みをそろえることです。しかし、これもいくつかの要因があるのですが、中小企業経営者(だけではありませんが)の多くは、どういうわけか、自分が頭の中で考えていることは、部下たちにも伝わっているはずだと思い込んでしまう傾向があるようです。

そこで、そのような経営者の経営する会社では、事業計画が作成されないままになってしまうようですが、その結果、部下の方たちは、「自分たちが何のために汗をかいているのか、会社がどこに向かっているのか分からない」状態になり、効率的な活動ができなくなってしまうのでしょう。これについては、経営者のかたは、PDCAの「D」、すなわち、「実行」だけでなく、「P」(計画)、「C」(検証)、「A」(改善)も行わなければならないということを認識していただくしかないと思います。

この「D」以外の活動は管理活動であり、事業現場ではなく机上で行うことになりますが、業績を向上させるための活動は、事業現場で行うものだと考えている経営者の方も依然として多いようです。しかし、経営者は、事業活動よりも、管理活動に軸足を置かなければなりません。これは、当然ですが、経営者はマネジメントを行う人だからです。事業活動の現場で働いている方たちは、エンジンの役割を担っていますが、ハンドルを握る役割は経営者の方が担います。経営者の方が適確なハンドルさばきができなければ、従業員の方たちがエンジンを速くまわすための努力が無意味になってしまいます。

2026/1/27 No.3331