[要旨]
ニデックの不適切会計に関し、早稲田大学の入山章栄教授は、監査法人が適切な監査を行わなかったことの責任は重いとご指摘しておられます。しかし、被監査会社の経営者が誠実にルールを遵守しようとする意図がなければ、監査法人を変更されてしまうなど、監査法人の監査には限界があるので、最終的には経営者のルールを尊重しようとする意思にかかっていると、私は考えています。
[本文]
早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が配信しているポッドキャスト番組を聴きました。番組の中で、入山教授は、ニデックの不適切会計について、同社の監査を行っていたPwC京都監査法人は、ニデックと同じくらいに大きな責任があるということを述べておられました。(なお、PwC京都は、2023年12月にPwCあらたが吸収合併し、同時に、PwCあらたはPwCJapanに名称を変更しています)
というのは、ニデックの不適切会計はだいぶ前から行っていて、それをPwC京都は放置していたこと。また、PwC京都にとってニデックは有力な関与先であり、同社の意に沿わない指摘をすることで顧問契約を切られ、収入が減ることを懸念して、本来、監査法人が果たすべき役割を果たしてこなかったということが理由です。(ちなみに、ニデックの有価証券報告書によれば、2025年3月期のPwCの監査報酬は約9.8億円、海外子会社の監査報酬は約17億円のようです)
私は、入山教授の指摘についてはその通りだと思います。ただし、私は監査法人には限界があると考えています。というのは、仮に、ニデックが改善の要請を受け入れないことを理由に、PwC京都側から顧問を降りたとして、ニデックは不適切会計を改めたのかというと、その確率は低いと私は考えています。なぜなら、ニデックは、不適切会計を強い意図を持って行っていたからです。例えば、PwCからの指摘に対し、永守重信さんは、「誰のおかげで飯を食っているのか」と、監査法人にプレッシャーをかけていたと言われています。
すなわち、ニデックの役員は、監査法人は「飯を食わしている」相手であり、報酬を払っている側の意図に従うべきだという考えを持っていたわけですから、PwCが顧問を降りたとしても、別の監査法人と契約して同じことを続けたと思います。ちなみに、2023年に発覚した、オリンパスの損失隠し事件では、2009年に同社の監査法人が変更されており、会社側の意に沿わない監査法人は顧問契約を打ち切られてしまえば、何もすることができなくなってしまいます。
ここからは、私の専門外なので、詳しくは述べることはできませんが、こういった状況についてはすでに広く認識されており、監査法人の監査は、複数の監査法人でローテーションで行うようにする、監査報酬は被監査会社から受け取るのではなく、第三者機関から受け取るなどの対応策が検討されているようです。経営コンサルタントとして私が感じることは、経営者には清廉さや謙虚さが必要ということです。その一方で、「きれいごとを言っていたらライバルに出し抜かれる」という意見もあると思います。
しかし、現在は、かつてよりコンプライアンスに関する関心が社会に広まっています。極端なことを言えば、会社の製品がどれだけ優れていても、その会社の経営に問題があれば、その会社の製品は顧客が購入しないという時代です。そして、長い目で見れば、法令を重視する会社は強い会社になり、業績もよくなると私は考えています。話を戻すと、監査法人の監査業務は誠実に行う義務があるものの、それには限界があり、最終的には経営者が法令を尊重しなければ、監査法人の監査は無意味になってしまうと私は考えています。
2026/1/22 No.3326
