[要旨]
良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、チームのメンバーをそろえるときに必要なのは、「優秀な人材を集められるか」ではなく、「役割に合った人材を集められるか」という考え方であり、さまざまな能力、さまざまな性格、さまざまな視点を持つ人を集めないと強いチームにはならないということです。すなわち、リーダー格の人は一人いれば十分で、何人も入れると「船頭多くして船山にのぽる」ということになってしまうということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、良品計画の元社長の松井忠三さんのご著書、「無印良品の教え『仕組み』を武器にする経営」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、松井さんによれば、チームのリーダーとなった人は、「優秀なメンバーをそろえたい」と考える傾向にありますが、もし全員を優秀なメンパーで固めると、スタンドプレーばかりが目立ち、チームの統率がとれなくなったり、優秀な社員ほど地味な仕事をおろそかにする可能性もあるので、つくった時点で完璧にしようとするのではなく、つくってから全員の力で強いチームにしていくものだと考えなければならないということについて説明しました。
これに続いて、松井さんは、チームをつくるときは、優秀な人材を集めるのではなく、役割に合った人材を集めなければならないということについて述べておられます。「チームのメンバーをそろえるときに必要なのは『優秀な人材を集められるか』ではなく、『役割に合った人材を集められるか』という考え方です。さまざまな能力、さまざまな性格、さまざまな視点を持つ人を集めないと強いチームになりません。リーダー格の人は一人いれば十分で、何人も入れると『船頭多くして船山にのぽる』になってしまいます。
リーダーの右腕になる人や調整に長けた人、分析力や調査力に優れた人など、あらゆるタイプをバランスよくそろえられたらチームは力を発揮できます。くれぐれも、リーダー自身がお気に入りの人材だけで固めないことです。それをすると、なあなあの関係になってしまい、チームがまとまらなくなる可能性が高くなります。さらに、イエスマンではなく『ノー』を言える人を入れられたら、最強のチームになるのは間違いありません。そして一番大事なのは、やはりそれらのメンバーを引っ張るリーダーです。このリーダーの力量によって、そのチームは最強にも最弱にもなります。
リーダーに必要な基本的な要素は、(1)メンバーを束ねられる、(2)物事の本質が見えている、(3)障害を乗り越えられる、(4)仕事を納期までに着地、完成させられる、大まかにこの4つにしぽることができます。皆さんがリーダーを選ぶ立場であるなら、これらの要素を持った人を選ぶ。逆に、皆さん自身がリーダーになるなら、これらの要素を身につけなければチームは強くならないのだと思ってください。ただし、リーダーもチームと共に育っていくものです。メンバーを東ねる力も、障害を乗り越える力も、大抵は最初から備わっているものではありません。何があっても最後までチームを引つ張る覚悟が、実はもっとも重要なのかもしれません」(236ページ)
松井さんは、チームメンバーには、リーダータイプばかりを揃えるのではなく、調整能力のある人、分析能力のある人など、さまざまなタイプを揃えることが重要ということは、容易にご理解されると思います。これは、裏を返せば、リーダーシップをあまり発揮できないからというだけでメンバーを評価せず、その人の個性を活かせる役割を任せることで、チームの成果に大きく貢献してもらうことができるようになるということです。このことは、組織活動の大きな意義と言えるので、逆に言えば、どのような人をメンバーにするかということは、成果を高めるための重要な要因ということができます。
また、松井さんは、イエスマンではなく、ノーといってもらえる人をチームに入れることが重要と述べておられます。この、イエスマンばかりを揃えることはよくないということは、ほとんどの方が理解できるものの、自分に否定的な人をそばに置くということは、感情的に難しい面もあるようです。これについて、私は、ヤマト運輸(現在のヤマトホールディングス)の中興の祖である、小倉昌男さんのことを思い出します。経営コンサルタントの遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」には、小倉さんに関し、次のように書かれています。
「会社が発展、成長するための原動力は、アクセルだが、その一方で、ブレーキも必要である。ブレーキがあるからこそ、アクセルをふかすことができる。小倉昌男は、北海道の雪道で、ブレーキを踏むとスリップするので、どの車もブレーキを踏まずに、のろのろ走る様子を見て、こう気づいた。『自動車が速く走るためにはブレーキが必要だということを痛感したのである。自動車は、ブレーキを踏めば、いつでも止めることができるとわかっているから、スピードを出すことができるのであって、ブレーキのない車には、誰も怖くて乗れないだろう』
自動車は、あくまでも移動するための手段であり、前に進まなければ車としての価値はない。ブレーキは、いつでも止まれるために用意されているものであり、アクセルを踏むのを躊躇し、ブレーキを踏みっぱなしでは、永遠に目的地には到達しない。会社も同様で、経営において管理は必要だが、それが挑戦を妨げてはならない。会社にはブレーキが必要だが、それはあくまでアクセルがきちんと踏まれていることが大前提である。性能の高いブレーキを用意しながらも、アクセル全開で前に進まなければ、『生きている会社』にはなりえないのだ」(74ページ)
リーダーであっても、人間には限界があり、常に正しい判断ができるとは限りません。また、経営環境の変化も激しいので、昨日までは正しかったことも、今日は誤りになってしまうこともあります。ある意味、事業活動は、常に正しい判断ができるとは限らないというリスクをかかえながら行っているわけですが、だからこそ、「ブレーキ」の役割を担ってくれる人が必要です。
そして、そういう人(ブレーキを踏んでくれる人)がいるからこそ、リーダーは全力を出す(アクセルを踏む)ことができると言えます。このように考えれば、「ノー」と言ってくれる人は、事業活動を邪魔する人ではなく、事業活動に全力を注ぐために欠かすことができない人ということが理解できると思います。そして、そういう人がいる会社こそ、強い会社になることができると言えるでしょう。
2026/1/17 No.3321
