[要旨]
良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、チームのリーダーとなった人は、「優秀なメンバーをそろえたい」と考える傾向にありますが、もし全員を優秀なメンパーで固めると、スタンドプレーばかりが目立ち、チームの統率がとれなくなったり、優秀な社員ほど地味な仕事をおろそかにする可能性もあるので、つくった時点で完璧にしようとするのではなく、つくってから全員の力で強いチームにしていくものだと考えなければならないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、良品計画の元社長の松井忠三さんのご著書、「無印良品の教え『仕組み』を武器にする経営」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、松井さんによれば、同社では、定期的な人事異動を行うことで、仕事が属人化せず標準化されたり、派閥ができることも防いだりしているそうですが、その結果、従業員の方たちが全体最適の視点で仕事をするようになり、業績が向上に結び付いているということについて説明しまた。
これに続いて、松井さんは、チームに「四番バッター」ばかりを集めても成果が高くなるとは限らないということについて述べておられます。「プロ野球が好きな方ならご存じでしょうが、巨人が四番バッターばかりを集めていた時期があります。それで巨人は優勝できたかというと、そううまくはいきませんでした。最強のメンパーを集めれば、最強のチームができるわけではないようです。コツコツと出塁する確率の高い選手がいないと得点を重ねることはできませんし、走塁が得意なメンバーがいないと、攻撃に広がりが生まれません。
野球は攻撃だけではなく守備も大切です。投手陣も先発や中継ぎなど、さまざまなタイプの選手が必要ですし、しっかり守れる外野手も重要でしょう。みながホームランを狙って大振りばかりを繰り返していたら、得点には結びきませんし、失点を防ぐこともできません。野球はチームワークで決まるスポーツなのです。企業での仕事も、基本的にチーム単位で動きます。チームのリーダーとなった人は、『優秀なメンバーをそろえたい』と思うでしょう。
しかし、全員を優秀なメンパーで固めたらどうなるのか。スタンドプレーばかりが目立ち、統率がとれなくなるかもしれません。仕事には事務的な作業が付きものですが、優秀な社員ほど地味な仕事をおろそかにする可能性もあります。私はチームとは、つくった時点で完璧にしようとするのではなく、つくってから全員の力で強いチームにしていくものだと考えています。チームをつくるときはやはり、『部分最適』ではなく、『全体最適』をリーダーが考えなければなりません。
個別にレベルや効率を上げていく部分最適も大事ではあります。しかし、何度も言うように、部分最適はそれぞれをいくら足しても、その総和が全体最適にはならないのです。自分の部署だけではなく、全体との調和を考えながら、会社にとって最大限の結果を残せるチーム。その視点で、チームのメンバーを選ばなくてはなりません。たとえば一つの部署に営業部の優秀なメンバーを集めたら、その部署の営業成績は上がります。しかし、会社全体の均衡は崩れるでしょう。
自分の部署のメリットを考えるのは大切ですが、そればかりを考える人が集まれば、部分最適しか実現できなくなります。チームをつくるときは最初の人選でよくよく考えないと、全体最適になりません。無印良品では大きなプロジェクトの場合、基本的に異なった部門のメンパーを集めてチームが構成されます。人事部や販売部、商品部といった垣根を越えて協力ができなければ全体最適を目指せないからです。プロジェクトに関係しそうな部門の人、さらに各部門に影響力のある人を一堂に集めるようにしていました」(234ページ)
私は以前から、「組織活動とは、『1+1>2』にする活動」と述べてきました。すなわち、組織の構成員の能力の総和よりも、組織活動の成果の方が高くなることがなければ、組織活動の意味はありません。さらに、現在は、VUCAの時代と言われているわけですから、様々な個性を持つ人が集まり、それを活かすことができるような組織ほど、成果が高くなると言えます。そこで、強い個性を集めて、それらをまとめる能力がリーダーに求められています。
ところが、組織をつくるとき、「四番バッター」ばかりを集めようとするリーダーは、本来のリーダーの役割を理解していない、または、自分に本来のリーダーの役割を担おうとしていないといえるでしょう。また、いわゆるオーナー経営者の場合、自らが「四番バッター兼エースピッチャー」になりたいと考えている方もいるようです。そのような会社の場合、「社長の能力=会社の能力」ということになり、チームプレーで成果を高めようとしている会社と比較して効率が悪く、早晩、競争に敗れることになると思います。
話を戻すと、松井さんは、「チームとは、つくった時点で完璧にしようとするのではなく、つくってから全員の力で強いチームにしていくもの」と述べておられます。すなわち、チームをつくった時点では、「1+1=2」の状態です。しかし、それぞれの個性を活かせるチームにしていくことで「1+1>2」になるわけですから、そこにリーダーの重要な役割があるといえます。でも、リーダーの能力がなければ、チームワークが悪くなり、「1+1<2」になるかもしれません。したがって、リーダーは、「チームはつくるのではなく育てるもの」と考えて役割を担う必要があるでしょう。
2026/1/16 No.3320
