[要旨]
事業改善を遂行するには、新たな経営戦略の実施や、新たな情報システムの導入だけでなく、従業員も変化しなければならないということは、容易に理解できることであるにもかかわらず、後回しにされてしまったり、まったく着手されなかったりすることは珍しくなく、その理由は、従業員の方を変える(育成する)ことは、比較的難易度が高く、時間と労力がかかるからだということが考えられます。
[本文]
前回は、事業改善には、新たな経営戦略の策定と実行、新たな情報システムの導入などを行いますが、それにともない、改善活動を行う従業員も変化を受け入れる必要があるのですが、その変化のための働きかけは忘れられがちであったり、または、経営者が必要とわかっていても、それをコンサルタントに行わせようとすることがあり、それでは事業改善はうまくいかないので、組織への変化の働きかけは、経営者自身が先頭に立って行うことが欠かせないということについて説明しました。
そして、この、事業を改善するには、新たな経営戦略の実施や、新たな情報システムの導入だけではなく、従業員も変化しなければならないということは、容易に理解できることであるにもかかわらず、後回しにされてしまったり、まったく着手されなかったりすることは珍しくないのですが、その理由は、従業員の方を変える(育成する)ことは、比較的難易度が高く、時間と労力がかかるからだと、私は考えています。
また、中小企業経営者の多くは、事業活動に関する専門性やスキルが高い人は多いものの、マネジメント業務や、部下育成については経営者になってから経験するということが多く、苦心していることが多いようです。ところが、これらの役割は年を追って重要性が増してきており、業績の差は、このような能力に左右されるようになっていると私は考えています。なぜなら、経営環境が成熟化してきている時代にあっては、より高度な手法を実践する要があるからです。
そして、繰り返しになりますが、従業員の方たちをよい方向へ変化させる、すなわち育成することは、避けることはできない、というよりも、それを会社の中心的な課題として取り組まなければなりません。でも、前述したように、これは難易度が高い課題であることから、新しい戦略の実践や新しいシステムの導入だけで改善をしようと考える経営者の方も多いのではないかと思います。
これについて、私は、埼玉県入間郡にある産業廃棄物処理業者の石坂産業の取り組みを思い出します。同社社長の石坂典子さんは、ご著書、「五感経営-産廃会社の娘、逆転を語る」で、次のようにを述べておられます。「約40億円を投じ、約6年かかりで完成させた、この最新鋭プラントは、そうやすやすとは動いてくれませんでした。
いざ、稼働させれば、トラブルに次ぐトラブルの連続、社員とともに、緊急対応に追われながら、稼働状況を把握するための情報管理システムに、追加で、約1億円を投資しました。事故の原因を分析しながら、メンテナンスのノウハウを蓄積し、ようやく、ほとんどトラブルを起こすことなく動かせるようになったのは、それから約5年後でした。(中略)
そんな、ある意味、厄介なプラントを、フルに使いこなして達成したのが、石坂産業が産廃業界に誇る、『減量化・再資源化率95%』という数字です。だから、同業他社に設備を見せ、その仕組みを説明し、製造したメーカーの名前まで教えたところで、完全にコピーしていただくのは、そう簡単ではないのです。(中略)人材教育なくして、設備投資は意味をなしません」(143ページ)
同社では、約40億円の設備投資をしたのですが、それと同時に、5年間、トラブルへの対処の経験を重ね、ノウハウを蓄積した結果、減量化・再資源化率95%という、他社と大きく差別化できる仕組みを完成させています。このように、改善活動は、設備などのハード面だけで解決するのではなく、ノウハウなどのソフト面が重要です。
そして、そのノウハウを蓄積するには、従業員の方たちが、従来のままでは不十分であり、新たな設備を活用できるようにスキルを高めて行こうという意欲が欠かせません。だからこそ、経営者の方は、その従業員の方たちの意欲を高めるための働きかけを行うという重要な役割を担わなければなりません。
2026/1/9 No.3313
