鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自分たちの常識は他社の非常識

[要旨]

良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、かつて、しまむらの方との勉強会で、同社では値札のタグが3種類しかないということを知り、無印良品でもそれにならって203種類を98種類に減少させたところ、コストの50%の2.5億円を減少させることができたそうです。このようなことから、松井さんは、自社の常識は他社からみれば非常識のことがあるので、経営者は部下たちを異文化に触れさせる責務があると考えるようになったということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、良品計画の元社長の松井忠三さんのご著書、「無印良品の教え『仕組み』を武器にする経営」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、松井さんによれば、同社で最初にマニュアルを作成しようとしたとき、ファッションセンターしまむらのマニュアルを参考にしたそうですが、マニュアルはその会社の社風を反映させたものになっているので、良品計画では活用することができなかったため、自社独自でマニュアルを作成することにしたそうですが、同社のマニュアルの活用が軌道に乗るまでに5年程度かかったということについて説明しました。

これに続いて、松井さんは、自社の事業の改善の手がかりは、自社以外のところにあるということについて述べておられます。「私は、『当社の常識は他社の非常識』と社員にも何度も伝え、普段自分たちが当然のように行っていることに疑問を持つよう、促していました。外ヘ目を向けないと自分たちのポジションを正しく把握できず、改革が必要なポイン卜に気付けません。以前、たまたま、しまむらとの勉強会の際に話題になったのが、商品に付けるタグの種類でした。

しまむらの専務に、『商品に付けるタグシールは、何種類ありますか?』と尋ねたのがきっかけです。タグとは値札のことですが、無印良品ではここに商品名と、商品の『わけ』(商品がつくられた理由、素材や機能、環境視点など)を入れています。当時、無印良品には衣料品から文房具まで、すベての商品で203種類のタグがありました。ところがしまむらは、衣料品がメインとはいえ、膨大な種類の商品をたった3種類のタグで管理していたのです。

これを伺ったとき、自分たちが当たり前だと思っていた203種類が、いかに多いかをはじめをはじめて認識しました。まさに、自分たちの常識が、他社の非常識だった例です。それぞれのタグは大きさもデザインも異なるので、相当コストがかかり、しかも国内外で27社もの会社に頼んでつくってもらっている状態でした。無印良品にとってタグとは、いわば『商品の顔』。ここで無印良品らしさを表現しているので、タグに手を付けることは誰も思いつきませんでした。

しかし、改革のためなら、たとえ聖域であっても手を付けなければなりません。当時の商品担当常務にタグの見直しを頼んだところ、最終的には98種類にまで絞られ、つくってもらう会社も2社に絞られました。大量発注する代わりに単価を下げてもらい、その結果、タグ関連だけで2億5000万円と50%のコストダウンを実現できました。小さなタグで、大きな効果を得られたのです。

新しいアイデアを生み出すには、常に自分の知っていることがすベてではない、という謙虚な気持ちを持ち続けなければなりません。自分や組織にある“当たり前”を意識しながら、内向きにならず、外側からの刺激で自分の限界を壊す体験が必要です。経営の神様と呼ぱれるピーター・ドラッカーも、『人間社会において唯一確実なことは変化である、自らを変革できない組織は、明日の変化に生き残ることはできない』と語っています。変化こそ成長の源泉です。組織やチームに内向き志向が定着すると、死に至る病になるといえるでしょう。

自分のチームや部署を成長させたいと、努力されているリーダーは多いと思います。そして同時に、思うように成長しない部下に頭を悩ませているかもしれません。私も、社長に就任して一年程経った頃、同じような悩みを抱えていました。そして最終的には、こういう結論に至りました。自分の器以上には、組織はよくならないのだ、と。いくら組織の仕組みや体制を変えても、結局リーダーの器以上には成長していかないものです。それならば、リーダーは、チームメンバーが異文化に触れられる環境を積極的につくりあげることが、責務なのではないでしょうか」(128ページ)

松井さんは、「自分たちの常識が、他社の非常識」とご指摘しておられますが、長く同じ仕事をしていると、自分たちの考えが正しいと思い込んでしまうということは、しばしば、起こるようです。しかし、私自身もそうですが、人は、自分の考えに誤りはないという認知の歪みがあるので、なかなか、自分の考え方や、自社の慣習や作業手順を変更できないということも現実だと思います。しかし、そういった歪みを取り払うことに努めた結果、良品計画ではしまむらの事例を参考にして、タグの数を半減し、コストも50%減少させることができました。

ところが、こういうったことも頭では理解できるものの、実際に、「リーダーは、チームメンバーが異文化に触れられる環境を積極的につくりあげる」ことは、なかなか踏み出すことが難しいようです。その理由として考えられることは、従業員の方が、事業の現場を離れる機会をつくることが、時間や費用の制約で難しいという面だけでなく、他社から学んだことを活用して、現在の慣習や作業手順を変えることに心理的な抵抗があるということが考えられます。

しかし、これも、松井さんが、「人間社会において唯一確実なことは変化である、自らを変革できない組織は、明日の変化に生き残ることはできない」というドラッカーの言葉を引用しておられますが、変化に適応できなければ、生き残ることはできません。この変化への適応の大切さについても、ほとんどの方がご理解しておられると思いますが、これも繰り返しになりますが、変化することに潜在意識では抵抗がある方が少なくないようです。そこで、業績を改善したいと考えている経営者の方には、今回、引用した部分の松井さんのご指摘を踏まえ、変化することに厭うことなく、自分や部下を積極的に異文化に触れる環境をつくることに注力をしていただきたいと考えています。

2026/1/1 No.3305