[要旨]
創業時に設備資金調達を調達する場合、業歴がない中で多額の資金調達をすることは難易度が高いので、まず、スケジュールに余裕を持って銀行に相談することが必要であり、次に、スキルの高い銀行職員に相談しないと「伝書鳩」の役割しか担ってもらえず、融資の承認が得られにくくなってしまうということに注意が必要です。
[本文]
税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組を聴きました。番組では、会社を設立したばかりの製造業経営者のリスナーの方が、地方銀行に、工場を建設するために、1,600万円の融資(信用保証協会保証付融資と、日本政策金融公庫との協調融資)の申し込みをしたものの、希望額は融資できないと回答されたので、他行にも融資を依頼することで希望額の融資を応諾してもらえるだろうかという質問が紹介されていました。これに対して、大久保さんは、銀行からの回答は、信用保証協会の考えによるものであろうから、他の銀行から申し込んでも、結論は変わらないだろうと回答しておられました。
私も、大久保さんと同じ考えです。ところで、私も、番組で紹介されているようなご相談を、たびたび受けており、創業時の設備資金調達に関して注意すべきことが2つあると考えています。1つ目は、創業時の設備資金の調達は、難易度が高いということです。これは、融資を受けることの難易度が高いという前に、設立したばかりで業歴がない会社が、1,600万円を投資して、それを回収できる利益を獲得できる見込みは、業歴の長い会社と比較して低いということです。
もちろん、創業時にそれなりの投資をすることが必ずしも間違っているわけではないので、競争力の高い製品を製造するとか、すでに製品の引き合いがあるなど、投資をするリスクが低いことを示すことができれば、銀行も融資に応じてくれるでしょう。そこで、設備投資をともなう創業をするときは、まず、事業を開始する1年前、少なくとも6か月前から、銀行などに打診をする必要があるでしょう。しかし、凡その事業開始の日程が決まってから銀行に打診をすると、大久保さんにご相談された方のように、会社を設立したにもかかわらず、銀行から融資を受けることができず、そこで計画が止まってしまうことになります。
2つ目は、資金調達に関するスキルが高い人に相談する必要があるということです。前述のご相談者の方は、銀行から「希望額通りの融資ができない」と回答していますが、そのような回答をする銀行職員はスキルが低く、失礼ですが、「伝書鳩」の役割しかしていません。融資を受けたいという経営者の方の目的は、融資を受けて工場を建設して事業を行うことですから、希望額の融資を受けることができなければ、工場を建てることはできなくなります。
それをわかっていて、「希望額の融資には応じられない」と回答するのは、融資の決裁権限者からの伝言を伝えたにすぎません。そして、それは、「こちらができる融資額はこれだけだから、不足する金額は、そちらで工面してください、それができなければ、工場建設は中止してください」と言っていることと同じです。そんな回答をするのであれば、融資を申し込んだ人から見れば、その職員は不要であり、最初から、決裁権限者に結論を聞けばよいだけです。
では、相談を受けた銀行職員はどうすればよかったのかというと、まず、自分なりに融資ができる材料を集めることです。少なくとも、工場建設によるキャッシュフローの見込みをキャッシュフロー計算書に落とし込み、融資が回収できる確実性を証明します。(もちろん、キャッシュフローの見込みの根拠も集めなければなりません)もし、キャッシュフローの見込みが低ければ、投資額を抑える、または、自己資金を増やすなどの条件の変更が可能か検討します。
当然、融資の可否は、銀行職員単独ではできず、組織決定が必要ですから、相談を受けた銀行職員がどれだけ納得できても、それが結論とはなりません。だからと言って、相談された内容を上司などに伝えるだけでは、前述のように、その銀行職員は伝書鳩以外の役割を果たしていないことになります。このように、創業時の設備資金調達は、銀行職員にもある程度のスキルが必要であり、そういったスキルを持っていない銀行職員に相談すると、伝書鳩の仕事しかしてもらえず、希望通りの融資を応諾してもらえなくなる確率が高まります。
そこで、問題なのは、スキルのある銀行職員に遭うにはどうすればよいのかというと、まったくいないわけではないのですが、難しいということも現実です。私も、資金調達のご相談を受け、ご相談者の方と銀行に帯同訪問することがあるのですが、スキルの高い銀行職員は、年々、減少していると感じています。
しかし、難易度の高い融資申請は、スキルの高い銀行職員を通さないと応諾してもらうことが難しいことも事実です。そこで、知人に業績のよい会社の経営者がいて、その経営者に腕のいい銀行職員を紹介してもらったり、または、税理士事務所に銀行職員を紹介してもらったりするという方法が考えられます。そのような知人がいない場合は、コンサルティングフィーが必要になりますが、銀行出身のコンサルタントなどに相談するとよいでしょう。それが、資金調達を確実にするための鍵と言えます。
2025/12/11 No.3284
