[要旨]
経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、資金繰が悪化し、融資のリスケジュールを行った会社のうち、正常先に戻った会社はほとんどないそうですが、それは、リスケジュールによって銀行からの評価が下がり、金利引上や担保追加などの融資条件が厳しくなって、徐々に会社の身動きがとれなくなってくるからだそうです。したがって、確実性の高い経営改善計画を立てて実行していくなど、戦略的なリスケジュールでなければ、リスケジュールを行う意義が乏しいことを認識しなければならないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、現在の融資額が、減価償却費+税引後利益の7倍以内になることが望ましく、10倍以上になると要注意レベルということであり、前もって自社の状況を把握したうえで銀行に融資相談に行くことが望ましいということについて説明しました。
これに続いて、三條さんは、安易に融資のリスケジュールをしてはいけないということについて述べておられます。「返済がスムーズに進んでいれば、金融機関と信頼関係はどんどん高まり、融資の拡大も図れ、事業は順調に発展軌道を進んでいきます。しかし、どんな事業にもアップダウンはあるもの。もし、支払いが厳しくなってきたら、税金、社会保険料、銀行借入、買掛金、などの順に支払いを遅らせていき、その間になんとか打開の道を拓くように動く。これが破たんを先送りするための順番です。
私は、すぐれた経営者とは、どんなときもあきらめない人だと考えています。そこでまず、金融機関に返済期間の見直しを願い出て、苦しい時期をしのいでいこうとする。これがリスケです。リスケとはリ・スケジューリング、予定の見直しのこと。金融機関との交渉ごとでいえば、融資の返済計画を見直すことをいいます。たとえば5年で完済予定だったものを10年にリスケしてもらえば、単純計算では年間返済額は半分になる計算になります。そうしたことから、会社や経営者の将来を考えない銀行や経営コンサルタントなどは、安易にリスケをすすめることがあるようです。
しかし、金融機関と戦い抜いてきた私は、リスケは最も慎重を要することだと考えています。リスケをすると、元金の返済を減額するので返済額が減り、たしかに当面は楽になります。そこで、苦しくなるとついリスケに頼りたくなってしまうのですが、リスケには企業にとって大きなリスクも伴うことを知っておかなければなりません。まず、リスケをしている間は新たな融資は受けられません。さらに、当然の話ですが、金融機関が会社を見る目が大きく変わり、リスケを申し出たときから、そう遠くない将来、不良債権(破たん企業)候補として見られるようになってしまいます。
具体的にはリスケ後6か月、1年ぐらいで、自宅を担保にしてほしいとか、保証協会融資の保証料を引きあげるなど、金融機関はさまざまな条件を付加してきます。こうして少しずつ金融機関に攻め込まれていき、リスケをしたばかりに急ビッチで追い詰められていくケースはけっして少なくないのです。実際、リスケから抜け出し、正常債権に戻る企業は、リスケをしている中小企業約50万社のうちほとんどありません。
リスケ後のこうした事態も十分考えに入れて、明るくかつ確実性の高い経営改善計画を立てて実行していくなど、戦略的なリスケをしなければ、リスケをするメリットは乏しいことをしっかり胸に刻み、リスケの交渉にあたるようにしましょう。リスケをするなら将来の再生の準備も考えたリスケ方法を取らない限り、将来の明るい兆しが見えないなか、ただお金を回しているだけになります」(201ページ)
言及するまでもありませんが、経営者自らが望んでリスケジュールを行うということは、まず、ないでしょう。そうでありながら、三條さんのようなコンサルタントや専門家が、「リスケジュールは避けるべき」とご主張するということは、別の意味があるのだと思います。それは、単なる問題の先送りとしてのリスケジュールはしてはならないということだと思います。
少し上から目線で恐縮ですが、現在のようなVUCAの時代は、単に、改善に向けて努力するとか、コストカットを徹底するといったことだけでは、業績の改善はあまり望めません。もっと根本的な改善、すなわち、リエンジニアリングを行う必要があります。ただ、これは、相当の努力も必要ですし、経営者としてのスキルが必要です。そして、業績が傾いた時点でそれに踏み出す決断が必要です。
とはいえ、当事者としては、そういった改善活動に踏み出すことが難しことも現実でしょう。しかしながら、そのような状態を続け、業績の悪化により資金繰が苦しくなったために、リスケジュールを銀行に依頼したとしても、リスケジュールの期間内に業績を回復させる可能性は低いままでしょう。さらに、リスケジュールによって、三條さんがご指摘するようなデメリットも現れることになります。
たびたび上から目線で恐縮ですが、確かにリスケジュールを行なえば、しばらくは会社の資金繰が維持できます。だからといって、融資の返済猶予期間に、外部環境が追い風になることを待つだけでは、傷口をさらに広げてしまいます。したがって、リスケジュールを行うにあたっては、問題の先送りではなく、返済猶予を受けるあいだに抜本的な事業の改善を行うものでなければ、リスケジュールは何の意味もないどころか、ますます会社の財務状況を悪化させるだけに終わってしまうというところに注意が必要です。
2025/11/29 No.3272
